観測者
盆地のフィールドに入ると、見えない壁に突き当たり。それ以上進めなくなる。そこに、アリーシャがやってきた。
「ごめんなさい。守りのフィールドなのよ」
だよな、そうじゃなかったら、畑を荒らされる
「私の手を取っていると大丈夫よ。ラヴィは、そのままヒロの肩に乗ってていいわ」
アリーシャにひっぱられると、何もなかったように、この見えない壁をすり抜けることができた。
ここで、ラヴィが、急にモード変換をして人形に戻ろうとする。バトル召喚モードだ。
「おい、ちょっと待て」
「えっ?」
そこには、また、また、全裸のラヴィがいた。
「きゃー」と、言って、アリーシャの後ろに隠れる。
急にモード変換しやがって、忠告もできなかったよ
「一度帰って着替えてくるか?アイテムポケットが生成されているから、裸にならなくて済むぞ」
「いいから、あっち向いて」
ノーマが、ラヴィのフォローをする。
「また、リゾート用のサーフィンセット出して」
真っ赤な顔をしながら、最初と同じことを言う。
「わかった。ノーマ、取りに来てくれ」
あたふたと着替えをするラヴィ。それを中央の一本だけ生えている巨木の中腹で、アリーシャの母親が、頬を緩めて見ていた。
「戦士用の柔らかい靴もー」
「だしたぞ」
アリーシャが、ラヴィの服を整える。3人とも大慌てだ。
「アリーシャ、そこから浮遊していいわ」
「あっ、お母さんよ」
4人は、守護フィールドの一番端から浮遊して、中央にある巨木の中腹に建っている家の玄関まで飛んだ。
アリーシャの母親は、軽い半透明の布を幾重にも重ねたエルフのローブを着ていた。ハイエルフの中でも、特別な存在だと分かる。
「ヒロさん、こんにちわ。あなたの話は、アリーシャから聞いていたのよ。娘が、ゲームに、あんなに熱中するなんて珍しいわ。私は、スーザンよ」
おれとニコニコしながら握手した。
「お母さん!」
アリーシャが真っ赤な顔をする。
「ラヴィほどじゃあないけどね」
ノーマがフォローする。
「ラヴィ、その額にあるのは、緑の宝珠じゃない。癒着しているわ」
「たぶん、通常に戻るとアイテムポケットに収められると思います」
「今の私は、召喚された姿なんです。実は、砂漠の秘宝もあります」
と、胸の中央に食い込んでいる赤い宝石も見せる。
「あなたたちには、良い結果でしたね。ヒロさん、アリーシャをお願いします。この3人は、パグーの至宝を身に宿すでしょう」
「ここは、パグーなんですか」
「不思議ですね。あなたが遊んでいたゲームの設定は、ほぼ、現実に即しています。過去のバーチャルゲームなのに・・・人の想像は、計り知れないわ。みんな、いらっしゃい。アリーシャ、お茶を用意して。ノーマは、ちゃんとご両親に断って来ましたか?」
「ごめんなさい」
「特別に、大目に見てあげます。後で、ヒロさんも連れて、事情を説明するのですよ」
「はい」
「ラヴィは、大変ね」
「やっぱり、お父さん、怒る?」
「やはり、ヒロさんを連れて、事情を説明するしかないでしょうね」
「はぁい」
おれは、スーザンの「パグー」という言葉に難しい顔をした。もし、ゲームの設定と同じなら、ここは、滅亡の危機に直面すると言うことだ。
「ヒロさんの言いたいことは、分かるわ。その前に、状況把握でしょ」
「お願いします」
「アリーシャ、星読みの間で、お茶しましょう」
「わかったわ」
「私も手伝う」
「私もー」
3人は、台所に向かった。