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春を忘れて大樹は眠る  作者: 夢山 暮葉
第四章:喪われた友に流す泪
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26:永遠の夏休み


 何処何処宿舎の二階、アージェンの部屋。風雲を除く何処何処中枢メンバーの四人はそこに集い、ログアウト不可バグ発生から72日経過した事を祝したり呪ったりしていた。

 まず部屋の主たるアージェンは、夢中でリコーダーを吹いている。リズムも音程も滅茶苦茶な音色は、これ以上無く耳障りな騒音となって、四人の鼓膜を叩き回していた。

 その狂的な笛の音に合わせてドコドコと和太鼓を打ち鳴らすのは、白ふんどし一丁となったルシフェル。翼を広げて太鼓を叩くその姿はかなり様になっているが、靡くふんどしの所為で台無しである。

 そして、太鼓とリコーダーの音色が合体し最高にやかましいハーモニーを生み出す最中、手に持った穴空き包丁でザクザクと白いホールケーキを滅多刺しにしているのは、ラインハルト。彼は「ゲッヒャッヒャッヒャッ」等と不気味な笑い声を上げながら、無心にケーキをぐちゃぐちゃにしていた。

 そんな三人の様子を、少し悲しそうに眉尻を下げながら見守るのは、唯一正気を保った立ち振る舞いをしているネリネ。彼女は時折ラインハルトのケーキのクリームが飛んで来るのを拭ったり、静かに溜め息を吐いたりしている。


「ヒィーッヒッヒッヒッヒッ、ヒャーッハッハッハッハッハッ」

「もう一生遊べるドゥン! ソイヤッソイヤッ!」


 ひたすらに狂ったように笑い続けるラインハルトの横で、ルシフェルは二本のバチをカッと打ち合わせながらどっかで聞いたような台詞を叫ぶ。そしてドンドコドコドコとノリノリで太鼓を叩き、「フルボッコだドォン!」と大声で言った所で、隣の部屋の住人が壁ドンした。同時に、ピタリと三人の騒ぎが停止する。

 この宿舎の遮音力はかなり高い筈なのだが、それでも流石に和太鼓とリコーダーとおっさんの笑い声はうるさ過ぎたらしい。大騒ぎしていた三人は、ばつ悪く黙り込む。


「……止めよっか」


 リコーダーを口から離したアージェンがそう呟くと、汗だくのルシフェルが呼吸を整えながら頷き、バチと太鼓をインベントリに仕舞って座った。だがラインハルトは、包丁の代わりに自分の顔をボロボロのケーキに突っ込み、そしてくぐもった笑い声を再び上げ始めた。


「ラインハルトさん」

「フヒッ、ヒヒヒッ、ヒッホッホッホッホッ……」

「ねぇ、ラインハルトさんったら」


 ネリネの声かけにも応えず、ラインハルトは壊れたように笑う。アージェンとルシフェルはすぐに正気に戻ったのだが、彼はいつまでも笑い続けている。数度名を呼んでも応答しない事を認めると、彼女は呆れ顔で肩を竦め首を振った。


「はぁ、本当、しょーもないわね。大の大人がご覧の有様だなんて」


 一切本音を隠さず、ネリネは毒舌を吐く。だがアージェンは、彼のようになるのもまた致し方無いだろう、と思った。

 何せラインハルトはあんなにも現実への帰還を望んでいたのに、その望みはほぼ完全に失われてしまったのだ。──現実世界の肉体の餓死によって。

 勿論、希望の全てが潰えてしまったわけではない。もしかしたら今頃現実でこのログアウト不可バグは大事件になっていて、被害者たちは病院等で保護されていて、今も点滴やら何やらで命を繋いでいるかもしれない。

 ……けれども、そうである可能性は高くない。現代社会におけるゲーマーの地位は高くないし、余程社会的地位が高かったりする者以外は見捨てられているのがオチだろう。病院のベッド数だって有限なのだ。


「もう、諦めよう。諦めちゃおう。あはは」


 そんな悲惨な推測が渦巻く最中、しかしアージェンは深い安堵の滲む声で呟き口角を上げた。もう『帰る』という選択肢は無くなったのだから、『帰りたい』と思う必要も無い──現状から導き出されるその事実が、彼女をこれ以上無く安心させていた。

 もう迷わなくても良い。中途半端に選択肢が有る状態より、一本道しか前途が無い状態の方が、彼女は心地良かった。そんな真意を読み取ってか、ふんどし姿のまま汗を拭うルシフェルも頷く。


「だな……それで良いだろ。何にせよ、ここに居るオレたちの人生が終わらないのは確定したし。

 現実のオレが死んだら、今ここに居るオレも消えるかもしれない──それだけが懸念だったが、杞憂に終わった。

 オレたちは自由だ。現実から解放されたんだ。永遠の夏休みがやって来たんだよ」


 バグ発生当初のローテンションぶりは何処へやら、ルシフェルは笑みさえ浮かべてそう語った。アージェンと同様、彼も吹っ切れたのだろう。

 そんな彼の様子を見て、ネリネはうんうんと頷いてこう言う。


「そうそう、その通り。あたしたち、もう学校にも仕事にも行かなくて良いのよ。まぁ、こっちはこっちで自治組織とか有るけど、でも現実のそれよりずうっとマシな筈よ」

「違いないな」

「……同意してくれるのは嬉しいけど、ルシさん、いい加減服着よう? 目のやり場にものっそい困るんだよね」

「ん、ああ、分かった」


 ネリネの言葉に頷いたルシフェルは、大人しく装備を常並の物に戻す。翼人の特徴である軽量化された細い身体が、何とも14歳をこじらせている衣装に包まれてゆくのを一瞥しつつ、アージェンは未だにケーキに顔を突っ込んだままのラインハルトを見下ろした。


「でなー、それで、相談が有るのだが……」

「なぁに? 何かのアイテムの融通?」

「いや、そうじゃないんだけど……たはは……」


 しかしネリネとルシフェルは、ラインハルトが小刻みに身体を震えさせて漏らす笑い声をスルーして、何やら別の話を展開させ始める。少しの間、ルシフェルは言い辛そうに口籠らせた後、青と緑の双眸をそっぽに向けながら言葉を紡ぎ始めた。


「なぁ、女性に告白するのってどうやれば良いんだ?」

「えっ」

「はいィ?」


 唐突過ぎる彼の問いかけに、ネリネとアージェンは素っ頓狂な声を上げてしまった。真顔でルシフェルを見つめ返す二人に、彼は片手で目元を覆い隠しながらこう続ける。


「こ、この前言っただろ、ディーネイっていう、エルフの美少女に色々融通利いて貰ってるって。その子、本当に良い子でさ……今までは、ゲームだったからアレだったけど、もうこうなったら良いんじゃねーかなって」

「えっえっえっ、ちょっと待って、待ちたまえ! えー、NPCの女の子と付き合いたいって事? そういう認識で合ってる?」

「合ってる」


 混乱に軽く目を回すアージェンの確認に、ルシフェルは頷く。あまりにも予想外過ぎる彼の言葉に暫し思考回路が混線したが、やがてどうにか冷静さを取り戻すと、真面目に返答を考え始めた。


「んー、ヒョのNPCってめちゃクソリアルだから、わたしたち基準で考えても良いよな。エルフならそこまで思考回路ぶっ飛んでないだろうし……けど──」


 ヒョのNPCが一体どんなアルゴリズムで動いているかは謎だが、その結果限りなく人間らしい振る舞いをする事は分かっている。だからその辺りは問題無いが、それ以上に深刻な障害が有った。


「あたし、まともな恋愛なんてした事ないわよ……」

「奇遇だな、わたしもだ。……ルシフェルさん、訊く相手を間違えたな」

「ぐっ……そ、それでも、オレよりは分かるだろ。女性なら、どんな告白をされたら嬉しいんだ?」

「あーうー、そうだなぁ……」


 アージェンは頬杖を突き、考え始める。ディーネイという人物の人格は分からないが、ルシフェルがハマりそうなキャラ、といった具合で考える。彼は素直で優しい女の子が好みだった筈だから、恐らくディーネイもそんな感じのNPCなのだろう。

 ならばストレートに好意を示せば、相応に応えてくれるだろう。プレイヤーの例に漏れずルシフェルのアバターも美形であるし、ディーネイが余程ひねくれた好みの持ち主で無い限り悪い気は抱かせない筈だ。

 そうしてアージェンが考えた結果を纏めてルシフェルに伝えようとすると、ラインハルトが徐に顔を上げた。もじゃもじゃの髭にまんべんなくクリームがこびり付いているのも気にせず、彼は口を開き始める。


「馬鹿馬鹿しいな。ゲームのキャラなんぞに、そんなに入れ込んで……奴らはあくまで人工物、良く出来たプログラムに過ぎんのだ。

 そんなのと対等に向き合おうなんて、反吐が出る。どんなにリアルでもNPCはNPC、クオリアを持たない哲学的ゾンビだ。その辺を弁えねばならんだろう」


 先ほどまで心神喪失状態に在った者とは思えない程、ハッキリとした声での正論。彼の言う事は間違っていなかったが、しかしこの場に敵を作る言葉であった。


「……ラインハルトさん、アンタもロールプレイヤーなら、NPCとは散々触れ合った筈だろ。なのに、そんな事を言うのか」


 ルシフェルは憤りを込めた声で、ラインハルトにそう投げかける。相手がクリームまみれの顔をピクリと動かすのに対し、彼はさらに言葉を続けた。


「彼らの人格は、作り物だというだけで蔑まれなければならないのか? 例え人工物だとしても、ヒョのNPCには魂が宿っている……オレはそう思う。

 軽んじられれば怒るし、友好を示せば喜ぶ……オレたちと同じように。プログラムだという事は十分承知、けれどアンタのように彼らを見下す事は出来ない」


 彼の持論もまた真実だ。寧ろ、アージェン的にはルシフェルの方が共感出来る。ヒョのNPCは『魂実装済み』なんて謂われる程に良く出来ているし、実際本当に魂が実装されていると言われても驚かないレベルだ。そんな者を普通のゲームのNPCと同レベルに扱う事は、彼女には出来ない。


「フン、ちょっとばかし希望が薄れたからといって、すぐにNPCなんかに縋り始めるとは……情けない事この上無いな」

「有りもしない希望を有るかのように騙り、それに縋って発狂してる方が情けない。オレはそう思うのだが」


 売り言葉に買い言葉。二人の間に火花が散る。緊迫する空気の中、傍観者たるアージェンとネリネはちらりと視線を交わし合い、そして頷き合った。


「貴様は異常だ、狂っている。さもなくば、作り物の人形なんぞに本当に惚れたりはしない。帰ったら精神病院に行くのをおすすめするぞ」

「精神病院に行くべきなのはアンタじゃないのか? さっきまでのアンタは、まさに気狂いとしか例え様のない有様だったぞ」

「アレは……ちぃとばかし動揺していただけだ。そ、それよりもだ、貴様は先ほどは良い事っぽく論じていたが、どうせディーネイとやらに対しても『あわよくば合体したい』とか思ってるんだろ?」

「ぐぅ……そっ、そりゃそうだとも! 二次元のキャラと合体出来たら最高だろ、このゲームで出来るかどうかは別として! 何だ、アンタは一度たりともそう思った事が無いってのかァ? ああ?」


 どんどん話がシモい方に向かうのと並行して、二人の表情はどんどんと鬼気迫る怒りの顔に変化してゆく。ヒョってR18だったっけ、等とアージェンは記憶を掘り返しつつ、徐にメイスを装備した。


「思いはしても実行しようとは思わんわ、普通!」

「ハッ、だがオレは実行する。全世界のオタクの願いが叶うやもしれんチャンスをみすみす逃すとか、そんなんだから現実でも出世出来ないんだよ!」

「出世してるわワシャ! 貴様こそ、そんな夢ばっか見てるからブラック企業に引っ掛かるんじゃ!」

「ぎ、ギリギリグレーだし! 日曜は休めるしサビ残もそんな沢山やらなくて良いし! 大体ブラック企業ってのは上の奴が作り出すもんなんだ、引っ掛かった方は悪くない、被害者だッ!!」


 声を荒げながら二人は立ち上がり、インベントリからそれぞれ獲物を取り出し、そして構える。ルシフェルは右手に美しい装飾のレイピアを、ラインハルトは両手で禍々しい装飾のハンマーを。

 彼らはここが何処なのかも忘れ、この場で決闘を開始せんと互いが武器を振り上げる。その瞬間、二つの声が飛んだ。


「zi'e'ai .i'anai fe lo bitmu dicra cu zbasu!」

「コノハズク!」


 アージェンによる詠唱と、ネリネによる従者を呼ぶ声。同時に防御魔法による分厚い壁と、名前を呼ばれたコノハズクが何処からともなく出現する。

 そしてアージェンの壁がラインハルトのハンマーを受け止め、コノハズクがその掌でルシフェルのレイピアを受け止めた。見事に貫かれたコノハズクの手から、だらりだらりと真っ青な血が流れ出すのを見て、漸く二人も我に返る。


「青ッ!?」

「ヒィッ……」

「喧嘩はやめて~、争わないで~、ここは~わたしのお部屋~だから~……分かったらゆっくりと武器を仕舞え。良いね?」

「お、おう」

「アッハイ」


 ドスの利いたアージェンの指示に、ラインハルトとルシフェルは大人しく従って武器をインベントリに戻した。コノハズクはレイピアの刺し傷を魔法で治した後、ネリネの背後に下がる。耳の辺りに付いている結晶が、今は赤く染まっていた。


「ま、色々な考え方が有る、って事で良いでしょ。どっちも間違っちゃいないよ。

 ……しっかし、どうやって来たのさ、コノハズク君。魔法でも、瞬間移動だけは出来ない筈なのに」


 仲裁するように両手を挙げながら、アージェンはそんな事を問う。様々な使い方が出来るヒョの魔法システムだが、それでも時間や空間に直接関わる魔法だけは使えない。魔法で時を巻き戻したり、瞬間移動をしたりする事は出来ないのだ。瞬間移動の方は、プレイヤーなら『転移』という形で実現出来るが。


「さぁ……分からないけど、呼ぶと来るんだよね。戻れって言えばアトリエに戻るし」

「分からないのか……」

「NPC竜人故致し方無し。プレイヤー的にはポピュラーな種族だけど、謎の多い種族だよねぇ」


 肩を竦めながら言うネリネに、アージェンは手に持っているメイスを仕舞いながら首を傾げた。ネリネは数少ないNPC竜人と密な接点を持つプレイヤーだが、それでも分からない事は多いらしい。


「……でー、あー、そのー……相談の続きを……」


 その辺りで、気まずそうに黙りこくっていたルシフェルが再び口を開いた。そういえば、まだ彼の悩みに答を出していなかったな、と思いつつアージェンはラインハルトの顔色を窺う。


「……ルシフェルさんが悩みを抱えていて、その解決方法を模索しているという事実は変わらん。その内容は気に食わないが、今乱闘を起こす事はもうしない」


 難しそうな表情のままだが、彼はそう言ってインベントリから手ぬぐいを取り出し、顔に付いたクリームを拭ったり、ぐちゃぐちゃケーキの後始末をし始めた。勿体ないなぁ、とアージェンはその様子を眺める。


「なら、心置き無くあたしの考察を語るとしましょうか。一般的に──」


 そうしていると、ネリネが先に自身の恋愛観からの考えをルシフェルに聞かせ始めた。時折ルシフェルに対し、ディーネイの好みや感覚に関する質問をぶつけながら、彼女は理路整然と彼の為の告白の手順を組み立ててゆく。そして彼女の話が一区切りした所で、アージェンも先ほど考え出した考察を述べ始めた。




 そうして、最終的にルシフェルを激励する会になった集まりは、彼の決意表明と共に終わりを告げた。それぞれのやるべき事の為に、各々転移で立ち去った三人の姿を思い浮かべながら、アージェンは軽く部屋の掃除をする。

 ラインハルトのケーキの残骸やコノハズクの青い血痕だとかは、彼らが立ち去る前に綺麗にしていってくれたけれど、それでも四人で大騒ぎした後だからそれなりに汚れが残っている。これからも長く使う事になりそうな部屋なのだし、大事にしてやりたい。まぁ、現実ではものぐさを極めており、自宅を軽くゴミ屋敷状態にしていた彼女であるから、どうせ三日坊主になるだろうが。


「……はぁー」


 一通り掃除が終わった所で、アージェンは溜め息を吐きながらベッドに腰掛けた。今は深夜の3時、窓の外はまだ真っ暗だ。NPCとの待ち合わせが今日に控えているが、せめて朝日が昇るまでは時間を潰した方が良いだろう。

 何の予定も無い、空白の時間が訪れる。すると、様々な思索や感情が脳内を席巻し始めるのだ。


「ヘイゼルさん……」


 努めて考えないようにして来た事実が、思考回路の中心に躍り出る。新ダンジョンに赴き、そのまま音信不通となってしまった、大親友の安否。胸元を飾る首飾りを握りしめながら、アージェンは涙を堪えるように目を閉じる。

 帰れる可能性が無くなった事に関しては、それ程ショックは受けていない。だが彼女はヘイゼルが居ない事に、軽減しようの無い衝撃を受けていた。


「……ヘイゼルさん……」


 メニューからフレンドリストを開けば、その一番上にヘイゼルの名前が表示される。そこには『ログイン中』を示すランプが付いているけれど、チャットもメールも届く事は無い。

 寂しさと苦しさと悔しさと悲しさに、アージェンは両手で自身の肩を抱いた。寒くもないのに身体が震える。ガチガチと歯が鳴るのが止まらない。


「うっ……う、うぐっ……ううっ……ぐうっ……」


 やがて堪えきれなかった涙が溢れ、ぱたぱたと膝を叩いた。もう二度と彼女に会えないかもしれない、話す事も出来ないかもしれない──そう考えると、怖くて寂しくてどうにかなりそうだった。


「帰って来る……ヘイゼルさんは、ちゃんと帰って来る……!」


 自己暗示を掛けるように呟き、溢れる恐怖を抑え込もうとする。けれども涙は止まらず、胸を締め付けるような不快感も消えてはくれなかった。


「ぎっ、あっ、あああっ……うあああっ、ヘイゼルさぁんっ……!!

 寂しい、怖い、よぉっ……ああっ、ヘイゼル、さん……!」


 いよいよ堪えきれなくなり、アージェンは声を上げて泣き始めた。大粒の涙がいくつもいくつも零れ、彼女の頬を濡らしていく。

 縋るものも無いまま、彼女は布団を丸めて抱き締め、そしてそれに顔を埋めた。そうしてくぐもる彼女の泣き声を聞く者は、彼女自身以外に誰一人として存在しなかった。

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