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春を忘れて大樹は眠る  作者: 夢山 暮葉
第二章:冬の終わりへ
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幕間01:エンウィードゥのねりきんじゅつし


 彼女は、現実が嫌いだ。

 現実の家族が嫌いだ。現実のクラスメイトが嫌いだ。現実の教師が嫌いだ。現実の隣人が嫌いだ。現実の男が、女が、子供が、大人が、老人が──そして現実の自分自身が、嫌いだ。

 だから彼女は、大嫌いな現実を切り売りにして、“ネリネ”になったのだ。




 ウィナンシェ最高峰の『エイリム山』を擁する山脈・『リンデネア山脈』の片隅に有る、雪に埋もれた一つの山小屋。『ネリネのアトリエ』という看板が掲げられたその小屋の中で、ネリネは気分良く鼻歌を歌いながら大鍋の中身を掻き回していた。

 今彼女が調合しているのは、需要が高く、大量に作っても安定して売り切れるHP回復薬である。『薬製造』スキルのレベルがカンストした彼女が作った回復薬は、普通に店で売っているものよりも効果が高く、その上飲みやすい味に仕上がっているとの事で、プレイヤーにもNPCにも大人気だ。


(……と、ここまで来たら、三時間くらい寝かせてっと)


 調合作業が一区切りした所で、ネリネは鍋の火を消し、背丈の低さを補う台座から飛び降りた。そして火の近くでの作業の為に脱いでいた外套に袖を通し、薪ストーブの前に設置されている大きな安楽椅子にちょこんと座る。

 小さなハーフリングの身体には時折不便さを感じる事も有るが、それでも彼女はこの“ネリネ”の姿が好きだった。力は無いが、普通の人間よりもずうっと足が速くて手先が器用だし、そして可愛い。ついつい現実の癖でいつもしかめっ面にしてしまうが、彼女は“ネリネ”の笑顔が何よりも好きだった。


(VRゲームって良いわよね、格安で理想の美形になれるんだもの)


 ゲームの中に居る限り、自身の醜さについて悩む必要は無くなる。こんな素晴らしい技術が、一般市民に過ぎない彼女の手にも届いているという現実にだけ感謝を捧げながら、ネリネはすうっと息を吸った。


「コノハズク!」


 その忠実な従者の名前を呼ばわると、黒い長身の男がすっと彼女の視界に入って来る。そちらに目を移せば、声も出さず、表情も動かさず、ただその存在と行動で以てのみネリネに応えるコノハズクの全身が捉えられた。


「ホットミルクを作って頂戴。砂糖を一匙入れてね」


 彼女の命令を受け、コノハズクは静かに動き出した。衣擦れの音も、足音すらも最低限に、小さな鍋を片手に地下に有る冷蔵室へと向かう。その姿を横目で見送りながら、ネリネは過去に想いを馳せる。

 思えば、コノハズクとの付き合いも長い。現実時間に換算すれば九ヶ月程度だが、ゲーム内時間で考えれば20年近く。恐ろしく長い縁だ。

 椅子の背もたれに体重を乗せ、肘掛けに引っ掛けてあった毛布で脚を覆う。そして自身の二の腕の半ばまで有る長い皮のグローブを外し、露になった小さく細い指に桃色の髪を巻き付けながら、ネリネは静かに目蓋を落とした。

 追想による暇つぶし。コノハズクという手下を得たあの日の記憶を、彼女は汲み出していく。




 あれは、まだヒョを始めて間もない頃であった。このゲームで出来る事を一通り触ってみて、そして生産スキルを上げていく遊び方をしようと決めた初日、だったような気がする。

 その日ネリネは事前に仕入れていた情報を元に、初歩的な回復薬の調合に必要な薬草の群生地に訪れていた。一頻り採集を終えた彼女は、適当な木に上り、太くて頑丈な枝に腰掛けて身体を休めていた。

 人の手の入っていない、雰囲気だけはのどかな森。地面に降り注ぐ木漏れ日は如何にも心地良さそうだが、人の手が入っていないという事は即ち手を入れられないという事なのだ。気を抜けばたちまち食人植物や毒虫なんかに殺されてしまう。

 けれども、この森に住まうモンスターに、樹上に対する攻撃手段を持つ物は居ない。その内進化してくるかもしれないが、少なくとも今は枝の上は安全地帯なのだ。


「はー……」


 葉っぱによって丁度良い明るさになった陽光に、思わず溜め息が漏れる。現実の彼女には決して味わう事の出来ない感覚に、ネリネは気の抜けた笑みを浮かべていた。

 と、その瞬間、ぐらりと身体のバランスが崩れた。ここが安全地帯だという安心感が災いしたか──慌てて体勢を戻そうとするが一歩遅く、彼女は枝の上から滑り落ちる。


「きゃっ……!」


 地面は土だし、余程下手な着地をしなければかすり傷程度で済むだろうが、高所から落ちるという恐怖に短い悲鳴を上げてしまう。彼女は咄嗟に頭を両手で庇い、目をぎゅっと瞑って衝撃に備えた。

 だがネリネを襲ったのは、草と土の地面に激突する衝撃ではなく、水中に飛び込んだ時のような感触であった。しかし水に叩き付けられた時に生じる痛みもなく、予想外の展開に彼女は慌てて目を開いて周囲を見回す。


「え……え?」


 そこには、先ほどまで彼女が居たのどかそうな森の景色は何処にもなく、まっさらな空間だけがどこまでも広がっていた。上も下も無い、明るいのか暗いのかすらも不確かな蕩々とした空間に、ネリネは揺蕩うように浮かんでいる。


(な、何ここ、バグ? 未実装マップ?)


 転移をしようとメニューを探すが、つい先ほどまでは確と自分の傍らに浮かんでいた光の塊は、今は何処にも見当たらない。これはまずいのではないか、と焦燥を強めながら、彼女は叫ぶ。


「メニュー、開け! 転移、目的地、エジャ! ……ログアウト!」


 音声入力を試してみても、応答は無い。ログアウトすらも出来ない事に、冷や汗が流れる。転移が出来ないだけならまだしも、現実に戻る事も出来なければ、運営に報告してネリネをここから出してもらう事も不可能になる。


(……出口を探してみましょう)


 このままここに留まっていても埒が明かない。もしかしたら異常に気付いた運営が助けてくれるかもしれないが、SOSを送る事が出来ない現状、望みは薄い。

 木の上から落ちた結果ここにやって来たのだから、入って来た場所は上の方に有る筈だ。上下左右も曖昧な中、恐らくこちらが上だろうと当たりを付けて、重力も無い空間の中を泳ぐようにして移動し始める。

 移動の最中、ネリネはこの空間を観察する。本当に、何も無い。重力も明かりも色も空気さえも無く、巨大な“無”が穏やかに横たわっているかのようだ。

 そんな感想を抱きながら、暫く進む。進めど進めど変化の無い風景に、本当に彼女は動けているのかどうか不安になってくる。実は今も最初に居た所でバタバタともがいているだけなのではないか、という疑念さえ湧き始めた所で、何処からともなく声がかけられた。


『きみ』

「ひっ!?」


 突然の声に、ネリネはビクッとなって当たりを見回す。しかし、何処にも声の主は見当たらない。姿無き闖入者に、ネリネは警戒を全開にする。


『きみ、“使者”だ』

「え……ああ、うん?」

『“使者”』『どうしてここに』『世界樹の“使者”』『異界の客人』『魂』『ここは深い』『そして早い』『帰れ』『在るべき場所に』


 どうやら、声の主は無数に居るらしい。様々な色の、しかし一様に抑揚の無い彼らの言葉に、ネリネはますます混乱を深くした。


「帰れ、っていわれたって、帰り方が分からないのよ。そこまでいうなら、あたしを元の場所に帰しなさいよ」

『帰す……』


 自ずと不機嫌さが滲み出た彼女の台詞に、声たちは一瞬沈黙する。そうして静かになったかと思った直後、不気味な程に感情の籠っていない声たちがわあわあと議論を交わし始めた。


『帰す』『大変』『やった事が無い』『案内を付ければ』『誰が行く?』『誰でも変わらない』『いや、そこには認識が有る』『姿と形と個が有る』『我々の中で、最も若い者を』『────、行け』


 何やら結論が出たらしい。抽象的かつ端的な言葉の応酬からは、彼らの思い浮かべている事の半分も汲み取れない。ただ分かったのは、ネリネは元の場所に戻れるらしいという事と、その為に案内を付けるらしいという事だけだ。


「えーっと、あたしはどうすれば──」


 そう問いかけようとした瞬間、全身の感覚が消滅した。同時に意識が遠のき、思考回路が閉鎖されてゆく。


(な、一体、何……)


 流石はバグ空間、わけの分からない事がてんこ盛りだ──そんな風に考えながら、彼女は意識を融けさせた。




 土の匂いがする。風にそよぐ枝葉の音と、うららかな木漏れ日の暖かさと──それから、何かの虫に刺された所の痛み。


「──うぃっ……!?」


 慌てて起き上がり、ネリネは身体に集る虫たちを払う。そしてメニューを呼び出して地震のステータス画面を検分し、自身のHPが三分の一程削れており、そして『毒』系の状態異常にかかってしまっている事を認めた。


「やっば……」


 倒れている間に様々な種類の虫に刺されてしまったらしく、スリップダメージを受ける毒の他にも、麻痺や高熱等の症状が出ている。早く解毒しなければ、毒が回ってそのまま死んでしまうだろう。

 店売りの回復薬はいくつか持って来ているが、その中に解毒剤の類いは有っただろうか。言う事を聞かない手でインベントリを操作しようとするが、指先が明後日の方向をタッチしてしまったりして上手くいかない。音声入力をしようにも、声を出すと頭ががんがんと痛む。


(あーくそくそ、今日はとんだ厄日だ……)


 苦痛に苛まれ、心の中でそう毒づいた、その瞬間であった。


「zi'e'ai broda」


 可聴域ギリギリなのではないか、と言いたくなる程低く聞き取り難い声が、短く何やら唱えた。するとネリネの身体が淡い光に包まれ、HPが回復し状態異常のアイコンが消滅する。


「……はぁ?」


 魔法だろうか。軽くなった身体で立ち上がり、ネリネは周囲を見回す。すると、すぐに先ほど魔法を使ったらしい人物の姿を捉える事が出来た。


「だ、誰、おまえ……」


 でかい。ネリネの背が小さい事を差し引いても、その人物はとにかく長身であった。その体格や顔つきから見るに、多分彼は男性だろう。

 そして黒い。おかっぱ頭の髪も黒ければ着ているローブの基本色も黒、更にその肌までもが彩度0の灰色。唯一色らしい色が有るのは、耳の代わりに付いている細長い結晶のような物だけだった。

 彼はその双眸を穏やかに閉じたまま、ネリネの前に長い影のように静かに佇み続けている。そうして彼女の問いに応える事もせず仁王立ちしている男に、ネリネはメニュー画面を向けた。

 そして彼のステータスを表示させる。レベル、1。種族、竜人。『レベル1』という文字列に瞠目し、ネリネは画面と男の姿を交互に見回す。


「おまえ、一体何者なの? 何とか言いなさいよ」


 先ほどより随分と強気な声調で言ったのだが、やはり返答は無い。苛立ちに眉間の皺を深くさせながらも、ネリネは質問の仕方を変えてみる事にした。


「おまえは、さっきの変な場所に居た奴の一人なの? あたしをここまで戻してくれたの?」


 すると、男は相変わらず無言のまま、しかしこくりと一つ頷いた。是か否かで答えられる問いかけならば、どういうわけか口を利かない彼にでも、身振りで以て答える事が出来るのだろう。

 コツは掴めた。ネリネは次の質問を声とする。


「次、あの変な場所に居たのは、皆NPC──じゃなくて、“使者”じゃない竜人なの?」


 こくり、と頷く。その返答に、ネリネは驚きの表情を浮かべた。何故ならば公式曰く、プレイヤーでない天然物の竜人は、この世界には全部で十数人程しか居ないからだ。この邂逅は奇跡に近い。

 となると、あの変な場所は何らかのイベントだったのだろうか。特別なイベントのまっただ中だったというならば、メニューが開けなくなっていたのも少しは頷ける。そんな種類のイベントが存在するだなんて初耳だが、他に納得出来る考えは思い浮かばなかった。


「さっきの回復魔法は、おまえの仕業?」


 次いだ問いに、彼はゆっくりと首を縦に降る。どうやったらレベル1の能力でそこそこ減っていた彼女のHPを全快させ、且つ状態異常を全て解除する魔法なんて物を使えるのだろう、という疑問が湧いたが、それを問うても彼は答えないだろう。後で考える事にして、今は呑み込む。


「そうなの。色々助かったわ。じゃあ、あたしは帰るから」


 先ほどは厄日だと言ったが、天然の竜人なんていうレアモノを目の当たりにする事が出来たのだから、案外良い日だったかもしれない。そんな風に考えながら転移画面を開こうとすると、彼はネリネを引き留める様に首を横に振った。


「……何? まだ何か用?」


 肯定が返ってくる。しかし一向に何も言い出さない男に、ネリネはこめかみに指を当てながら考え込み始めた。どんな質問をすれば、この男の真意を探り出せるのだろうか。


「んーと……他の人たちと喧嘩でもしたの?」


 否定。まぁ、あの無感情な声の主たちが喧嘩をしている所なぞ想像出来ないし、妥当だろう。


「じゃあ、アレ? あの場所に嫌気が差した?」


 否定。結構良い線を行っているのではないかと思ったが、どうやら違ったらしい。


「んーえー……なら、ストーカー? あたしの追っかけ?」


 そう問いかけると、男は少しの間を置き、そして首を斜めに振った。面妖な反応だが、恐らく先ほどの二つよりは正解に近いのだろう。それを踏まえ、ネリネは次の質問を飛ばす。


「もしかして、あたしの仲間になりたいの?」


 返って来たのは澱み無き肯定。ようやっと相手の意志を汲み取る事が出来たネリネは、謎の達成感に胸を浸しながら、くくっと口角を吊り上げた。


「なーるほど、分かった分かった。ふーん、ま、今あたしは仲間は募集してないんだけど、手下くらいにならしてやっても良いわよ」


 そんな彼女の言葉に男が頷くのと同時に、ネリネは再び彼のステータス画面を開いた。『友好的』状態になり、先ほどより多くの項目が表示される様になったその画面から彼をPTに加入させつつ、本来彼の名前が表示されているべき項目が空欄のままである事に気付く。


「……? おまえ、名前は?」


 男は首を横に振る。名前は無い、という事なのだろうか。まぁ、有ったとしても、この男はそれを口にしそうにないが。

 とはいえ、ネームレスのままでは不憫だし不便だ。適当な呼び名を考えてやる事にする。


「じゃあ、コノハズク。おまえは今からこのネリネの手下、コノハズクだ。良いね?」


 好きな動物である梟の一種の名を、そのまま彼の名前とする。すると彼は、一切表情を変えないまま、こくりと頷いた。同時に、ステータス画面に『コノハズク』という名前が浮かび上がる。とりあえず納得したらしい。

 色々と彼について調べたい事は有るが、一先ずは一段落だ。彼女は転移画面を開いて、移動先の座標を設定し、そして今度こそ起動した。




 椅子の横に有る小さな楕円状の机に、何かが置かれた音によって、ネリネの追憶は終了させられ現実へと引き戻された。瞑していた瞳を開き、音の方に視線を向ければ、ほかほかと湯気を立てるミルクの入った青いハート柄のマグカップが目に入った。

 そのまま視線を上方に移動させると、初めに出会った時と変わらぬ無表情のコノハズクの顔が捉えられる。そこには好意的な感情は一切現れないが、代わりに彼女に対する悪意が宿る事も無い。


「ん、ありがと」


 短い礼の言葉に、コノハズクは小さく頷いた後、そのままネリネの視界の外へ消えた。彼女の斜め後ろで仁王立ちする気配を感じながら、片手だけグローブを着けて、火傷に気を付けながらマグカップを取る。

 ネリネが必要としない時は、彼は影の様に気配を消して佇む。そしてネリネが彼を必要とした時には、すっと姿を現し静かに手を貸す。一切口を開かないのは面倒だな、と最初は思っていたが、本当に何も喋らないというのは却って心地が良かった。

 余計な手出しもせず、無駄な言葉を交わす必要も無い。けれども彼女が望めば、重い物を運んだり雑用をしたり、友人の様に振る舞う事すらしてくれる。理想的な従者だ。


(……やっぱ、現実とか要らないわー)


 現実の彼女に、コノハズクのような従者は居ない。それどころか、気に食わない存在ばかりだ。けれどもこちらではやりたい事だけをやっていられるし、それを咎められる事も無い。

 ヒョの世界は、こんなにも居心地が良い。だのに帰りたがる人たちの気持ちが、彼女には分からなかった。極度のマゾヒストか何かなのだろうか、とさえ思う程に。


「帰りたくないわ」


 一口甘いミルクを飲んで、呟く。現実なんかに帰りたくない。家にも学校にも行きたくない。不毛な受験勉強に追われるのも、血の繋がりしかない肉親たちに軽んじられるのも、もうたくさんだ。


「ずっと、ここに居たい……」


 24時間経っても強制ログアウトさせられなかった事に、彼女の友人たちはショックを受けていた様だったが、彼女自身は心から安堵していた。現実に戻らなくて良かった、と。

 今からおよそ48時間──一ヶ月半程経てば、現実の彼女の肉体も乾涸びて死ぬ。そうすれば、こちらに閉じ込められているプレイヤーの意識がどうなるにせよ、もう二度と現実に苦しめられずに済むようになる。

 同時に帰還を望む他のプレイヤーも道連れにする事になるだろうが、あの現実から逃れる為ならば、いくらでも良心を捨てよう。身も心も温めるようなホットミルクを味わいながら、ネリネは露草の瞳を閉じた。


(……現実の身体が死ぬ前にバグが解決したら、皆の勝ち。無事48時間経ったら、あたしの勝ち)


 風の噂によると、多くの大手ギルドが結束し、バグの解消に向けて動き出しているらしい。解決されてしまっては元も子もないが、ネリネ一人で彼らの妨害をしようとしても焼け石に水だ。他のプレイヤーと軋轢を生むのもだるいし、と背もたれへ思いっきり体重をかける。


(バグ解決への動きに関しては、静観しましょう。現状、すぐに解消されそうってわけでもないだろうし)


 ストーブの中で炎が踊るのを眺めながら、ネリネはくっくっくっと肩を震わせる。心の片隅で、生まれてこの方確かに願い続けていた事が叶うかもしれない。期待に胸がときめくのを抑える術を、彼女は持たなかった。

 まるで恋する乙女のように、あどけない頬を朱に染めながら、ネリネは笑みを浮かべた。その笑顔はただ一人、コノハズクだけが見ていた。

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