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「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
同始異終(どうしいしゅう)の章

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源八大爆発!

はなぶさ



 この対局を乱す乱入者は、源八率いる山賊の集団だった。


 彼らは俺と千代草ちよぐさを取り囲む伴天連ばてれんの騎士達へ向かって猛スピードで駆けてくる。


えんじゅーー!! 伴天連ばてれんの親玉はやっぱりお前かぁーー!」


 源八は馬上で槍を振り回してながら、えんじゅの名を叫び、速度を上げた。


 源八は爆弾花火兵の存在を知らない。このまま源八達が、騎士の誰かに接触すると俺達は爆発に巻き込まれてしまう。だが、願ってもない展開だ。俺はこの乱入者達を歓迎する。


 俺は冷静にえんじゅだけを注視する。


「源八! おどれなんしとんなぁーー! ねやぁーー!」


 えんじゅは明らかに動揺していた。きっと、爆弾兵を下げるかどうするかの判断に迷っているのだろう。


 爆発すると、えんじゅにとって臓器移植の要である千代草ちよぐさは巻き込まれることになる。それだけは絶対に避けるはずだ。


 さあ、爆弾兵はどいつだ!? 何人いる!?


 えんじゅの動向にじっと目を据える俺は、たじろぐ千代草ちよぐさの肩を無意識に掴んで抱き寄せていた。その手に力が入る。

 

「うぉぉぉぉーーーー!! テメーらぁ! 気合い入れろぉ! 片倉の無念を晴らすんじゃーー!」


 手下に発破を掛け、迫り来る山賊達の集団についにえんじゅが動いた。


 左手を横に払うと、伴天連ばてれん達の中で一人だけ、命令に従うようにその場から逃げ出したのだ。


 ()()()だ! しかも一人!


 逃げ出した騎士が、俺達からある程度離れた所で、その背中に向けて短剣アンカーを投げつけた。届かなかったが穢悪エオを撃つには充分の距離。


「参の穢悪! 身を焦が衝撃(チャード)


 パリッ!


 落ちた短剣アンカーから放たれる電撃が逃げる騎士を襲った。


 ドォォォォーーーーッン!


 爆弾花火兵は色とりどりの光を放って爆発した。


 その衝撃で山賊達は何人かが馬から落ち、千代草ちよぐさは悲鳴を上げる。俺は爆発の飛来物から千代草ちよぐさ庇う。


 「うぉーー! なんじゃこりゃぁぁー!!」


 源八は馬から落ちて驚愕している。土埃が舞い、その場にいる全員の視界を遮った。


 「クソがっ!山猿めッ!いらんことしおってからにッ!」


 バキッ!


 俺の左拳がえんじゅの顔面を捉えた。血中に魔力を込めた渾身の一撃。


 えんじゅは壁まで吹っ飛び、背中を打ちつける。だが、倒れはしなかった。流石は班長クラスといったところか……


「やってくれたのぅ……はなぶさッ!」


 歯が折れたのか、えんじゅは口の中の赤い塊をぺっと吐き出した。


「それはこっちの台詞だよ、オッサン!」


 風により土埃が晴れると、再び山賊達が雄叫びを上げて動き始めた。それを伴天連ばてれんの騎士達は迎え討つ。


 二つの勢力がぶつかり合う戦場で、俺とえんじゅは、周りの事を気にも止めずに睨み合っている。


はなぶさよぉ、ワシぁもう止まれんのよ……ここでお前もブチ殺して、千代草ちよぐさを貰っていくでぇ」


「アイツは渡さねぇ……そもそもアイツを傷つけたお前は絶対に許さねぇ」


 ()()は使った。後は俺が、今出せる全力をえんじゅにぶつけるだけだ。


 血中に魔力を大量に流し込む。まだ一度も使っていない穢悪エオ……終極の次に強い力。


「壱の穢悪エオ! 僭上の悪鬼羅刹(アンストッパブル)ッ!」


 ドクンッ! 激しい脈絡の動きで体が跳ねた。


 体が、内側から燃えるように熱い! 

 

 筋肉が隆起し、骨がメリメリと悲鳴を上げる!

 

 高揚感に溺れそうだ……今ならなんでも出来る気がする。


「な、な、なんならぁ? ……ワレのその姿は? 鬼か?」


 えんじゅは驚いた顔で立ち尽くしている。俺には今の自分の姿を見る術はないが、気にはならない……ただ、目の前のてきを叩くのみ!


 えんじゅは金と黒の市松模様のジャケットを脱ぎ、前後を逆にして袖を通した。


「化け物がッ! 喰らえ! 穿天猴(ロケット花火)!」


 市松模様の黒い部分から無数の花火が飛び出し、真っ直ぐ俺に向かってくるが、構わず突っ込む。


 ドドドドドンッ!!


 花火は俺にぶつかると激しく爆発を起こすが、今の俺の体はほとんどダメージを受け付けない。時間制限はあるが、無敵ゴートの状態だ。


「くっ! おどれは人間辞めたんか!?」


「人間辞めたのはお前だろうがッ!」


 えんじゅの懐に入り込み、俺は拳を振り回す。


 一発、二発……骨が砕ける音がした。


 三発、四発……臓物が潰れる音がした。


 えんじゅの細い体に左右のフックを四発叩き込んで吹き飛ばした。


 初めて使う壱の穢悪エオの力に興奮が抑えられない。なんてパワーだ……


 右腕に違和感を覚えた。黒鉄くろがね戦で折れた右腕は、さっきの自分の攻撃で千切れかけており、僅かな筋肉と筋だけで頼りなくプラプラと揺れている。


 だが、それには全く痛みは感じない。そしてなぜか笑いが込み上げてきた。


「あっはっ……はっはぁぁーーーー!!」


 四つん這いで地面にうずくまり、吐血して苦しむえんじゅの腹を笑なら蹴り上げる。


 なんだコレは? 俺が強すぎるのか? コイツが弱いのか? 力がみなぎる……興奮で意識が飛びそうだ。 愉快だ! ……なんて愉快なんだ!


『魔王様……』


 頭の中で俺を呼ぶ声が聞こえた。かつて俺が従えた十二の悪魔だ。


『我らと共に、再び全てを破壊するのです』


「ああ、そうだな……そうだった……じゃあ、そうするか?」


 俺は魔王だ。誰よりも強く、恐れられる存在だ。えんじゅのチンケな花火で寝転んでいる九鬼あいつより、よっぽど強い……


 この場にいる奴は、全員殺す……一匹残らず全員だ。


 千代草ちよぐさ? 安心しろよ、英臣ひでおみ。ちゃんと殺してやるさ……



 俺を突き動かす黒い衝動は、俺の意識を飲み込んだ。


*次回、『願い』

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