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「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
同始異終(どうしいしゅう)の章

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集う

はなぶさ



千代草ちよぐさッ! えんじゅッ!」


 開かれた扉の先に二人は立っている。その奥は病院の廊下のような造りになっているのがうかがえた。


 「はなぶささん、鳶尾いちはつさんを離してあげて……」


 そう言う千代草ちよぐさの顔はひどく憔悴しているように見えた。いつも持ち歩いているポシェットは、鎖でぐるぐる巻きにされシロは封印されている。


えんじゅ! まずはお前が千代草ちよぐさから離れろ!」


 俺は鳶尾いちはつを押さえつけたままそう要求すると、えんじゅは何も言わずに軽く両手を上げて千代草ちよぐさから距離を置いた。


千代草ちよぐさ、こっちへ!」


 千代草ちよぐさえんじゅを警戒しながら俺の方へ駆け寄ると、もう一度鳶尾(いちはつ)を離して欲しいと言ってきた。俺は力を緩めて、鳶尾いちはつから離れる。


「元気そうじゃのう、はなぶさ。ワレは海で溺れて死んだ思ぅとったわ」


 えんじゅは懐から扇子を取り出し、パタパタと顔を仰いだ。


「あいにく泳ぎは得意な方でね……そんな事より、アンタ、千代草ちよぐさに何をした?」


「なんもしとらんわ。ただ、仕事を手伝ってもらっただけじゃ」


 仕事? 俺は千代草ちょぐさの顔を見る。後ろめたい事があるのか、千代草ちよぐさは胸に手を当てて、視線を俺から外して下へ向けた。その仕草から、心に負担が掛かった事をさせられたのだと思うと、怒りが込み上げてきた。


「無理矢理連れ去って強要したんだろ? 手伝ってもらったとか……ふざけんじゃねーよ!」


「まぁ、落ち着けや。ホレ、ワレのとこのボスも来たけぇ、ちゃんと説明したる」


 えんじゅは顎で俺の後方を指し示す。振り返ると俺の後ろには、スーツと金髪を伴天連ばてれん達の血で赤く染めた九鬼くき班長が立っていた。まるで狩りを終えた獣が、静かにたたずんでいるようで、味方の俺でも戦慄を覚えた。


「あの、伴天連ばてれん集団を一人で? ……ば、化け物ネ…」


 怯える鳶尾いちはつの元へえんじゅが歩み寄った。


九鬼くき班長……」


 千代草ちよぐさも、ただならぬ雰囲気を出す九鬼くき班長を見て、怯えた様子だった。


えんじゅ班長。私から特に、貴方に聞くことはありません。問答無用です」


 九鬼くき班長は無表情で、単調にそう言うと、戦斧を構えてえんじゅに向かってゆっくり歩みを進めた。


 ぶはっ! 突然(えんじゅ)が吹き出して笑った。


「なんじゃそれ! はっはっはっ! やっぱり九鬼くきちゃんはクッソおもんない奴じゃのう! 蒲公英たんぽぽに言われたんか? 弁明の余地なくワシを殺せって? ほーなんじゃろ?」


「何?」


 班長は眉間に皺を寄せてえんじゅを睨む。


「お前はそれだけの力を持っとんのに、上の言いなりばっかりで自分の意思がないロボットみたいじゃわ。ワシや紫雲英げんげのように、野心持ったほうがええ! 人生に()()が出るど!」


 班長を馬鹿にしたような台詞に、俺は腹が立った。


「黙れよ悪党が! その野心ってーは、こどもを連れ去って下手くそな手術を受けさせることなのかよッ!?」


 そう言いってやると、えんじゅはサングラスの奥で俺を睨みつけ、殺気を放つ。


はなぶさぁ、ワレは()()()()のぅ……」


 ドボッ!


「ぐはっ!?」


 俺の腹部に突然衝撃が走り、体が後方に飛ばされ、酒の入った樽に叩きつけられた。えんじゅの攻撃か!? 何をされたのか理解できないうえ、鳩尾みぞおちへのダメージで呼吸がうまく出来ない。


はなぶささん!」


 千代草ちよぐさが俺に駆け寄る。


 膝をついてうずくまる俺の前には、ボールのようなモノが落ちている。これは、花火玉か!?


「ここが手術室の前じゃなけりゃあ、爆発させて殺しとったんじゃがのぅ……おどれはもう黙っとれや」



 えんじゅは俺から九鬼くき班長へ顔を向き直すとこう言った。


「なぁ九鬼くきちゃん、ちょっとだけでええけぇ語らせてくれや」


*次回、『最終決戦開幕』

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