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「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
同始異終(どうしいしゅう)の章

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鉄線

鉄線てっせん


 

 俺は自分の動体視力には自信がある。九鬼くき班長と手合わせをした時も、「班の中でお前が一番私に食いついてくる」と褒められていた。まぁ、あの人が本気を出せば、その攻撃は絶対に避けれないと思うが、その言葉は励みになった。


 だから、大抵の敵の攻撃は捌ける自信があったのだ。だが、コイツは()()()違った……


 俺の左前に居る施覆花おぐるま合歓ねむの速度に反応できていない。


 俺は瞬く間に距離を詰められた。この詰め方、この速さ……コイツは空間を溶かしながら俺の前に出現している。ある種のワープに近い物だ。これと同じ事をされた覚えがあった。あの日、ダムで俺を襲撃したのは合歓ねむだと確信した。


 目の前にはすでに合歓ねむの顔があり、瞳の奥はドス黒くよどんでいる。俺との距離はほぼゼロに等しいが、合歓ねむはまだ抜刀していない。刀の柄を逆手に握っている。これは居合抜きの型『ことえり』に近い。


 鞘から刀身が姿を見せはじめる頃、俺がやるべきことは決まった。


 殺身成仁さっしんせいじん……死んで施覆花おぐるまを活かす!


 即断のもりだったが合歓ねむの刀は、俺の体を左逆袈裟斬りに通り抜けた後だった。臓器が、骨が、皮膚が、筋肉が冷たい刃の侵入を許したが、俺の命はまだ消えていない。トンファーを手離し、その両手で合歓ねむの左右の手首を掴むと、喉の奥から込み上げてくる熱い血の塊を合歓ねむの顔面に吹きかける。


 合歓ねむの体越しに、こちらを振り向きながら抜刀する施覆花おぐるまと目が合った。


 なんだよ……ひどい顔してるじゃないか……施覆花おぐるま


 約束しただろ? 戦闘中にどちらかが死んでも、終わるまで感情を出さないって……



 ザシュッ!


 施覆花おぐるまの見えない刀身が、合歓ねむの体を横一文字に駆けた音がした。


「ぎゃっ!」


 と声を上げ、合歓ねむ踏鞴たたらを踏むとうつ伏せに倒れ込んだ。


 もはや上半身しかない俺も、手を離してなすすべなく地面に落ちた。



施覆花おぐるま



 施覆花おぐるまが振り返りながら刀を抜いた時、すでに鉄線てっせんの体は二つになっていた。両手で合歓ねむの動きを封じている。


 施覆花おぐるまが居合術で振り抜いた刀の先は、合歓ねむの背骨を断ち切った。


 目の前に二人が倒れ込む。施覆花おぐるまはその場で刀を手放し、鉄線てっせんに駆け寄った。


鉄線てっせん!! 鉄線てっせん!! 返事しろ! オイ!」


 施覆花おぐるま鉄線てっせんの頭を抱えて、ネクタイを緩めてやる。

 

「え、映画の、ワンシーン…みたいだったぞ………じゃあな、相棒………先にいくわ……」


 ほとんど目を閉じている鉄線てっせんは、血を吐き出しながらうめくようにそう言った。


「そうか……またな、相棒………」


 施覆花おぐるまは涙を堪えて微笑み、鉄線てっせんの呼吸が止まっても、暫く血溜まりの中を動かなかった。


*次回、『介錯』

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