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「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
同始異終(どうしいしゅう)の章

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判明

はなぶさ



 俺と南天なんてんは、山賊の頭、源八げんぱちの案内で、砦から山を二つ越えた場所の里にいる片倉の元を、馬に乗って目指している。


 その道中で俺はこの世界があまりにも荒廃している事に気づいた。集落を三つほど超えたが目に映る人々はみな疲れ切っていて覇気がない。身なりも汚れていて痩せこけっている。


 戦国時代風の異世界なら何度か訪れたことがある。大体は華やかな場所で活気があり、極東の血筋の人間なら、誰もが高揚感を覚えるような設定が多かったが、ここは異質に感じる。

 

 この異世界の創造主、片倉は俺みたいに救いのない絶望的な世界を作りたかったのか? それとも……


「なぁ、源八。この辺りは……やたら(すた)れすぎているのは何故だ?」


 先頭を走る源八が振り向いて答える。


「ちょいと前までは、ここいらの村も都も栄えて平和だったんだがな。半年ほど前に、よその国から攻め込まれて国中がめちゃくちゃになっちまったんだよ」 


「よその国……か」


 源八達山賊や村の人間を観察すると、古来の極東の国が舞台の設定であると推測する。


「攻めてきたのはどんな奴らだ?」


 南天なんてんが聞いた。


所謂いわゆる伴天連ばてれんの連中だ。見たことのない銀色の鎧を身に纏い、これまた見たことない武器を持って押し寄せてきた。奴らがどこから湧いてきやがったのかさっぱりわからねぇ。お上も応戦しているが押し込まれる一方だ。噂では都はすでに陥落したらしいぜ」


 源八は悔しそうにそう語った。


 それはおそらく異貌人ストレンジャー合歓ねむのせいだろう。奴が異世界間を渡り歩くたびに、色んな世界が混ざり合って設定が狂ってしまうのだ。


 攻めてきたのが伴天連ばてれんとなると、この戦国時代風の異世界は、隣の西洋風異世界の騎士団に襲われたと予想する。


はなぶさ、ちょっといいか?』


 苧環おだまきからの通信だ。俺はイヤホンを押さえる。


えんじゅは過去に、医療機器メーカーに勤めていたのは知っているな?』


 俺は馬に揺られながら返答する。


「あぁ、吾亦紅われもこうの奴がそういっていたな」


『さっき芙蓉ふようが新たに仕入れた情報なんだが、実はえんじゅが出入りしていた病院には、えんじゅ()が入院していたらしい。そしてその娘は、心臓に重い疾患があったそうだ』


えんじゅは娘のために異世界で手術をしようしてるのか?」


『いや、その娘は五年前に亡くなっている。その時、えんじゅの娘と同じような臓器の疾患で、同じ病気に入院していた子どものひとりが『宮田カケル』。死んだ最初の迷子ロストチルドレン。そして今回の任務で探している二人目の迷子ロストチルドレン、福永サキもえんじゅの娘と同じ病院に入院していた子どもだ』


「なんだと? じゃあえんじゅは、病気の子どもを助ける為にこんな事をしているのか? それが千代草ちよぐささらった事と何の関係があるんだ?」


『今の段階ではそこまでは分からないが、その異世界で四十雀しじゅうから医師に手術をさせようとしているのだけは確かだ。これは非合法な臓器移植手術だ。なんとしても止めなければならない』


「わかった、ありがとう。苧環おだまき……」


 通信を切ると、源八が馬を止めた。集落からやや離れた茅葺き屋根の建物。ここが片倉の棲家だと言う。

ここにこの世界の創造主、片倉壮介がいる。



千代草ちよぐさ



 

 『手術中』の赤いランプが、冷たく薄暗い廊下をぼんやりと照らす。


 私は手術室前の前に置かれた長椅子に腰掛け、視線を足元に落としてじっとしている。


 ここは戦国時代風の異世界なのに、この広い屋敷の、この一角だげが現代的な空間になっていた。


 私が蘇生魔法ライズで蘇らせた異世界の子どもは、再び殺されて心臓を奪われた。そしてその心臓は今、二人目の迷子ロストチルドレン、福永サキに与えられている最中だ……


 もう……何が正しいのかわからない……私は、命を天秤にかけてしまったのだ。


 誰か教えて……私がこれからどうすればいいのだろう?



*次回、『片倉壮介という男』

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