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「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
同始異終(どうしいしゅう)の章

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嘘つき

はなぶさ



南天なんてん、援護を頼む! だが殺すなよ!」


 俺は血中に魔力を流し込み、短刀アンカーを両手に待ち構える。敵の数は約五十〜六十人。個々の能力は高そうに見えない。


 俺は静かに十の穢悪エオを発動させる……


「かかれぇーーー!」


 ひとりの山賊が大声で合図した瞬間、砦の上から弓を構えていた山賊の一人が、ぎゃっ! と声上げ、手を押さえてうずくまった。南天なんてんの指弾、隼の一撃(サプレストガン)だ。


 突然の出来事に山賊達は二の足を踏む。俺はそれを横目に、目の前の山賊に距離を詰め、水月みぞおち短剣アンカーの柄で突き、首を叩いて気絶させた。飛びかかってくる奴には鎖を掴んで短刀アンカーを振り回して頭を叩く。弓矢で俺を狙っている奴は、南天なんてんの狙撃で次々と倒れていった。


「待てぇーーーい!」


 山にこだまする大声に、その場にいる全員の動きが止まる。砦の奥からひときわ身体の大きな男が現れた。


 スーツ姿の女性を後ろ向きにして脇に抱えている。救出課っぽいスーツを着ているが、俺からはその顔は見えない。ここに千代草ちよぐさはいないと踏んでいたのだが、決断は揺らいだ。


 あの大男は、さっきの会話をしていた山賊のお頭だろう。ゴツい体にゆわえていない長髪。無精髭ぶしょうひげ


 コイツ……多分強いな。


「おいコソ泥。お前、この女を探しに来たのか?」


 不敵な笑みを浮かべたお頭が俺に問いかける。そして女の尻を撫でて揉みしだいた。口を塞がれているのか、女は、んー! んー! と騒ぎ始める。


 俺は一瞬にして、体が沸き立つほどの感情に支配されそうになる。


『落ち着けはなぶさ!』


 南天なんてんが通信を通して、怒りが沸点に達する前の俺をなだめてくれた。


千代草ちよぐさの尻はあんなにデカくない……あれは別人だ……』


 ぐ……


 お前は普段アイツを、どんな目で見てるんだと言いたかったが今は堪える。


 ……駄目だな、焦りと不安から冷静さを失っている。コイツらと会話のやり取り無しで力任せにこの場を制圧してやりたいが、俺達の体調は万全ではない。なるべく体力は温存しておこう。


 さて……この場を切り抜けるには、やはり嘘か……


「なぁアンタ、えんじゅから頼まれてその女をここに置いてるんだろ? あの男の事を本当に信用しているのかい?」


 俺は短刀アンカーを下ろして、お頭の質問を質問で返した。


「はぁ? そんな事はお前の知ったこっちゃ無えよ。それより、お前のその格好なり……()()()と似ているな? 仲間なんだろ? 助けに来たのか?」


「違うね。俺はその女を殺しに来たんだ。はアンタらの敵じゃねーよ」


「ふかしてんじゃねーよ、えんじゅの旦那は俺に言ったぞ。妙な黒い服を来た奴が現れたら殺せってな……お前がこの女を殺す理由はなんだ?」 


 こいつも黒鉄くろがねと同じ生かされた救出対象者ドリーマーなのか?


 「その女は俺の仲間()()()。だが俺を裏切り、敵対するえんじゅに助けを求めたのだろう。あぁ、そうだ……いいことを教えてやる。」


 女の方を指差す。


「ソイツは今、体から毒を出す術を使っているぞ。えんじゅは情けからその女をかくまったのかも知れないが、邪魔な上に俺が殺しにくるのを分かっていたから、女が出す毒で死んでもいいアンタに預けたんだろうな」


 もう少し問答を続けたかったが、そろそろ効いてくる頃だと予測し、俺はハンカチを取り出して口元を押さえる。


 すると、何人かの山賊が膝をつき、その場に倒れる。お頭はそれを見て、女を手放して床に落とした。


「クソっ! えんじゅの野郎! お、おい! この女はなんなんだ!? お前は一体何者だ!?」


 お頭も自分の体の変調に気付いたのだろう。震える手を見て顔が強張こわばっている。


 少しだけ穢悪エオの後遺症で俺はふらついた。


 山賊達の体に異常が起きている原因は、俺の穢悪エオの能力だ。


 十の穢悪エオ……妄信的な信徒(スタック・トキシック)。これは俺の周辺に様々なステータス異常を引き起こす透明無臭のガスを出す技。眠気、毒、麻痺、幻覚…。


 使用するたび、どれかをランダムに発動する。今回はおそらく麻痺を引き当てたのだろう。上々だ。


「アンタ、その女を預かるだけで金が貰える話を(えんじゅ)から聞かされてるんじゃないか?」


 いよいよ全身が痺れはじめたお頭は膝をついた。その顔には焦りの色が見える。


「アンタはえんじゅに騙されたんだよ……それより、なんで俺が平気なのか不思議そうな顔してるな?」


 自分の能力だから当然平気だ。


 俺は苧環おだまきから渡されたパウチを掲げてお頭にこう言った。


「コレがあるから俺は平気なんだよ。なぁ、取り引きしないか? 俺がいま手に持っているのはその女から出る毒を浄化する物だ。これを使わせてやるから、アンタらは俺に協力して欲しい」


 お頭は青ざめた顔で、小さく首を縦に振った。


*次回、『行方』

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