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「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
同始異終(どうしいしゅう)の章

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砦にて

はなぶさ



 千代草ちよぐさの発信機から出る信号は、木の上に作られた砦の最上部だ。ある程度この砦に近づき、捌の穢悪エオ双子の戯れ(クリプトファジア)を発動させる。


 俺の両手の甲から二匹の蝙蝠こうもりが出現し、砦に向かって飛び立った。

 蝙蝠こうもりの視覚と聴覚から得た情報は、直接俺の脳に送られる。この能力の後遺症は比較的軽い。


 砦の正面を避け、換気口らしき穴に蝙蝠こうもりを侵入させる。中は薄暗く、ただ木を組み合わただけの簡素な作りだ。


 二十人ほどの兵が密集して雑魚寝している。ソイツらを起こさないよう慎重に上階を目指した。

 途中の部屋で話し声が聞こえた。天井にぶら下がり、聞き耳を立てる。

 

「なぁ、お頭。片倉が連れてきたあの、妙な黒服の女。俺らに回してくれよ。俺ら攫ってきた町娘はもう飽きちまったんだよぉ」


 ……あぁ?


 いきなりブチ切れそうになる発言を耳にしたが、奥歯を噛み締めてグッと堪えた。


「駄目だ。あの女には指一本触れるな。片倉の客人であるえんじゅの旦那から預かった女だ。テメェ死にてぇのかよ?」

 

 この会話の内容から、千代草(ちよぐさ)は多分無事なんだろう。少しだけほっとした。


 それにしても『片倉』とは何者だ? えんじゅの名前も出てきたが……救出対象者ドリーマーか?


「片倉はともかく、えんじゅの旦那が気に食わねぇのは分かる。我慢しろ。他の馬鹿どもにも伝えとけ、絶対に上の階に行くなよって」


「あ、あぁ、わかったよ、お頭……でもよ、えんじゅは信用できんのかよ? 女を預かるだけで十貫文も貰えるなんて怪しいぜ」


「確かに旨みがありすぎるが、受けちまったからには今更文句言っても仕方ねぇだろ……えんじゅとは今回限りだぜ」 



 千代草ちよぐさとシロに取り付けた発信機からの信号を確認する。二つの発信源はここの上階だ。


「……南天なんてん、聞こえるか?そこから見て砦の最上階の広さはどの程度か測れるか?」


 俺は南天なんてんに通信して確認したい事を聞いた。


『ん? そうだな……畳四枚分…ざっと七平方メートルってとこだな。それがどうした?』


 ……確信した。ここに千代草ちよぐさは居ない。


 シロに取り付けてある発信機は、シロがポシェットの中にいる時、かなり小さな信号しか出さない。だが、信号はハッキリと二つ捉えている。これはシロがポシェットの外に出ている事を意味する。


 しかし、この部屋より上は畳四枚分しかない。シロの身体のサイズを正確に測ったことはないが、小型のダンプカー程ある。その空間にシロと千代草ちよぐさが収まるスペースは無い。それに、この木造の砦はドラゴンの重さに耐えれる構造には見えない。


 動かない信号……二人の発信機は取り外されて、上階に置いてあるのだろう。


 俺達を誘い込んだのか……


南天なんてん、やはりこれは罠だ。一旦戻る」


 穢悪エオの蝙蝠を呼び戻し、来た道を引き返そうとしたが、遅かった。俺は武装した山賊共に囲まれてしまったのだ。


「よう、あんちゃん……誰かを助けに来たのかい?」


 山賊のひとりが下衆な笑みを浮かべる。


「あぁ、そうだ……。こんな山奥に篭って、惨めに賊なんてやってる可哀想な奴らの人生を終わらせて、救ってやろうと思って来たのさ」


 俺はそう言うと、懐から短刀アンカーを取り出す。


「んだとコラ? おい、全員出てこい!」


 山賊達は、時代劇でよく観た悪党のテンプレ的な台詞を吐いくと、砦のあちらこちらから仲間が姿を現した。

※十貫文‥‥およそ百万円


*次回、『嘘つき』

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