捜索
◆英
「……その後、通信障害が解消され、俺は救助を求めた」
南天から作戦当日の話を聞かされた俺は、自然と歯軋りをしていた。今すぐベッドから起きあがり、二人の捜索に向かいたかった。
「南天……すまん。俺がもっと早く動いていれば、こうはならなかったかもしれない」
俺は謝罪の言葉を口にする。
「バカやろう……謝るのは俺の方だ、二人を守れなかった」
南天は俺達に見せない様に顔を反対側に向ける。俺は南天の怪我の状態を確認するために全身を観察すると、右足の膝から下は無くなっていた。
「桔梗、あの足は治せるのか?」
桔梗は眉根を寄せて、首を小さく横に振った。
「無くなった足が見つかっていないのよ。それに、ひっつけて治せる時間はとうに過ぎているわ。傷口には異世界の異物が大量に付着していて、今はこれ以上の治療は無理ね……」
そう聞かされ、拳を握ったのを察した芙蓉が、心配そうな表情で俺の胸に手を添え、落ち着かせてくれた。
「ハナブー……」
俺は大きく息を吸い込み、全身を脱力させながらゆっくりと息を、怒りの感情と共に吐き出した。
「俺たちの後は、鉄線さんと施覆花さんが引き継いでくれた。英、俺たちの出番はここまでだ。今は静養こそ最大の任務だと思う様にしよう……」
南天にしては、らしくないものの言い方だと思ったが、俺は「そうだな……」とだけ返事をした。
三人を襲った戦国時代の兵達。その異世界を創造した救出対象者を調べるように俺は芙蓉に頼んだ。
やはり槐は黒鉄の他にも、救出対象者を味方に付けてたのだろう。敵は予想より多い。
はやる気持ちを抑え、俺は瞼を閉じて、もう一度眠りについた……
…
……
………様にみせかけた。
桔梗と芙蓉の二人が医務室から退出して体感で四十分くらい経過しただろうか。
俺はベッドから起き上がった。そして仕切られているカーテンを開けると、南天も起き上がり、支度をしていた。
「考えてることは一緒だな……」
俺はニッと笑い、拳を突き出すと、南天もやや口角を上げ、軽く拳を当ててきた。
◇施覆花鉄線組
夕暮れ時、九鬼達が襲撃された現場の山には、黒いスーツ姿の男たちがいた。
彼らは車から機材を取り出し、いつでも異世界へ向かえるよう、すでに準備を終えていた。
「班長と千代ちゃんが消えたんがこの辺りや……なんか分かった事はないか?鉄線?」
鉄線は、地面に散らばる大量の棘の球を拾いあげてじっと見つめる。
「これは、槐の武器で間違いない。過去にコイツを使って派手に追跡者を吹き飛ばしたのを見たことがある」
施覆花は電子タバコから煙を吸い込み、ため息ほどの大きさでそれを空に向けて吐き出す。
「まさか身内からこないな事する奴が出てくるとは……」
「それで、貴方達はまだ捜索に向かわないのですか?」
二人の後ろから声を掛けたのは、芙蓉の兄、苧環だ。諜報員である彼も学生の身であり、ブレザーの学生服を着ている。
常に明るい性格の妹とは正反対で、大人しいイメージの少年だが、分析能力と通信などの機材の扱いには長けている。
「そう、だな……俺たちだけで行ってもいいんだか……」
「ウチには、置いて行ったら後でピーピーとやかましい奴がおる……」
施覆花と鉄線は互いに顔を見合わせてニヤける。
「誰か他に応援を頼んだのですか?」
一体誰の事なのかと、まるで思い付かない苧環は小首をかしげた。
「頼んだわけやない……せやけどソイツは仲間のピンチに必ず駆けつけるんや」
「かなり生意気な奴だけどな……お、噂をすれば」
二人は苧環の肩越しに二つの人影を見た。
苧環は振り返り、驚嘆した。
「正気か……?」
「誰よりも九鬼班長を愛する男と、寡黙なタフガイの到着や」
三人の目線の先には、重症の英と、もっと重症の松葉杖を持った南天の姿があった。
「英、南天現着しました」
*次回、『桔梗さんは怒りたい』




