表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
螻蟻潰堤(ろうぎかいてい)の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/73

桔梗《ききょう》さんは怒りたい

桔梗ききょう



「あの、アホどもめぇ〜……」


 はなぶさの意識が戻った二時間後、再び医務室の様子を見にきた桔梗ききょうは、無人のベッド二つを見下ろして目を釣り上げた。


 すぐさま医務室に備え付けられている専用通信機を使い、急いではなぶさを呼び出す。


 ……応答してくれない。


 次に南天なんてんを呼び出す。


 ……応答してくれない。


 最後に施覆花おぐるまを呼び出す。


『はいは〜い♪』

 

 ワンコールで軽い返事が返ってきたことが、なぜか桔梗ききょうの逆鱗触れた。


「ちょっとオグ! ハナとナンが消えた! そっちに向かっているかも!」


『なんや急に! 落ち着けや桔梗ききょう


「落ち着いてられないわよ! アイツら重症なのよ!任務ができる体じゃないわ!」


「そっか……アイツら動き出したんやな……ほなコッチに来るまで待ってやるか」


「馬鹿言わないでッ! あんな体で何ができるのよ!? そっちに着いたらすぐ戻るか、そこで待ってろって伝えて!」


『そりゃ無理や……はなぶさは上司の九鬼くきさんの命令すら聞かん時がある。俺が言うたってアカンわ。まぁ、この件が終わったらすぐにソッチに連れて帰るわ。ほな』


「あ、コラ! オグ、待ちなさいって!? もしもーし!?……あぁ〜もう!」


 通信を切られた桔梗ききょうは、力強く電源を切り、コートを持って医務室から飛び出した。



はなぶさ施覆花おぐるま鉄線てっせん南天なんてん苧環おだまき



 はなぶさ達五人はポイントRの山中にて、千代草ちよぐさ九鬼くき迷子ロストチルドレン奪還&えんじゅ捕縛作戦敢行チームと称して準備を行なっていた。


「そう言えばお前らがここに来る前に桔梗ききょうから連絡あって、あいつブチ切れしとったで」


 施覆花おぐるま南天なんてんの右足に、松葉杖を折って作った簡易的な義足を取り付けながらそう言った。


「……でしょうね。ポイントR(ここ)に到着するまでしつこく着信がありましたから」


 南天なんてんは答えながらリュックを背負い、サイドバックを腰に取り付ける。どちらも中身は大量の小さな鉄球だ。


「後はこのベルトを体に巻きつけてと……完成したぜ。南天なんてん


 鉄線てっせんが、銃弾を模した鉄の塊が、整然と配列してあるベルト二本を、南天なんてんの肩に斜めに巻きつける。


「お〜、ええ感じやんか」


 施覆花おぐるまは顎に手を当てて頷く。


「一九八〇年代あたりの映画で観た気がするぜ……密林の中を、単独でゲリラ戦をやる主人公の映画だ。それにちなんで名付けよう……『ナンボー』と」


 鉄線てっせんが口にした言葉で施覆花おぐるまが手を叩いて笑う。


「二人とも、俺で遊んでいませんか……?」



「やれやれ、遊びに行くんじゃないんだそ……」


 三人を遠巻きに見てそう呟く苧環おだまきは、はなぶさに新しい通信機と、手の平ほどのパウチを手渡した。


九鬼くきさんと千代草ちよぐさが居る異世界は、全体的に通信障害ジャミングが発生している。直接連絡は取れないが、微弱ながら発信機の電波だけ追える状況だ。だがこの新型の通信機は通信障害ジャミングに強く改良してある。これなら、あの異世界でも俺達五人の間でやり取りができる」


「分かった。ありがたく使わせてもらうよ。……それと、これはなんだ?」


「まだ試作の段階だが、中身は桔梗ききょう回復魔法ヒール一回分を凝縮して封じてある。袋を開いたら発動する仕組みだ。まぁ、お守りだと思って持って行ってくれ」


「そんな物まで作っていたのか? お前、諜報部より開発部のほうが合ってるんじゃないか?」


「いいや、開発部あそこで便利な物を作ったら、誰の手に渡るかわからないだろ? 俺の作った物は俺が信用する人に使ってもらいたい」


「なるほど、ありがとう苧環おだまき……それにしても南天なんてんの奴、あれで歩けるのか?」


 はなぶさは談笑している三人を見る。


南天なんてんにも、九鬼くきさんみたいに大型の戦斧を出し入れできる『多次元リング』を使わせてやりたいのだが、アレは使う者に相当な技量を要求する代物だ。暴走させて周囲の物を何でも吸い込んでしまうと危ない」


「ああ……班長が両手首に通してあるブレスレットか? 仕組みがイマイチわからんが……さて、」


 はなぶさ苧環おだまきに向き直る。


「お前達兄妹には助けられてばっかりだな……ありがとう」


「いいさ、将来義兄(あに)になる人だ」


「お前までソレ言うのかよ?」


はなぶさは苦笑いをする。



 ……



「よっしゃ! そろそろ行くでぇ!」


 ポイントRに設置した装置から、空間転送がはじまる。目的地は『戦国時代風の異世界』だ。そこから九鬼くきが持っている発信機の信号をキャッチしている。


 千代草ちよぐさとシロにも発信機を持たせてあった。これも九鬼くきと同様、やや座標はずれているが、九鬼くきがいる異世界から信号を出している。


 信号から分かる事は、九鬼くきは単独で異世界を行動中、千代草ちよぐさとシロは動かず、同じ場所で留まっている。こちらは監禁されている可能性が高かった。


「俺と鉄線てっせん九鬼くき班長を! はなぶさ南天なんてんは千代ちゃんを探せ! いくで!」


 日が完全に落ちた頃、四人が光球に包まれて異世界へと旅立った。


 ポイントRに残された苧環おだまき呟く。


「みんな、死ぬなよ……」


*次回、『幼き欲情』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ