イーグル
◆英
ドォォォーーーーーーンッ
俺の体は海上からどんどん離れてゆく。何者かに両肩を掴まれ、空を飛んでいるのだ。戦艦からの砲撃により高く上がった水柱の向こう側で、唖然とした顔の黒鉄が見えた。
自分の身に何が起きているのか理解できない俺にそいつは声を掛けてきた。
「美少女鷲JK、ただいま参上! !ごめんハナブー! コッチ来ちゃった!」
この声は芙蓉だ!
俺は頭上を見上げた。白と水色の縞模様が視界に飛び込んだ……え?
「いやーッ! こっち見ないでッ! パンツみえちゃう!」
芙蓉は異世界転生救済課の諜報部員だ。異世界にいる時のみ使用できる特殊な能力で、鷲に変身することができる。戦闘能力は低いが異世界で情報を集める能力は高い。今は全身を鷲の姿に変えているが、普段は学校生活を送っている学生。制服を着ているから下はスカートだった。
視界にゴミが入らぬ様、額のゴーグルを目に装着した彼女は、俺を掴んだまま雪が舞う海上を滑空して戦艦から距離を取りはじめた。
「ウチの大事なところ見たんだから、責任取って婚約してね!」
「馬鹿な事言ってんなよ! それより、どこかに陸地は見えないか!?」
空高く飛ぶ俺達は水平線を見渡す。
「全然見えない! 見えたとしても、ハナブーを掴んだままでは辿り着けないよ!」
とりあえずあのまま砲弾の餌食になるのは避けられたが、俺を掴んだままいつまでも飛び続けられない。
「あれは鷲かっ!? 吾輩が嫌悪する国の象徴であるッ! 撃ち落としてひん剥いてやるわぁーーー!!」
空を飛ぶ俺達を駆逐艦が追いかけてくる。そして全ての砲台が一斉に火を吹いた。
ドガガガガガガガガガガガガカ!
ズドンッ! ズドンッ!
「キャアーーーーーッ! 無理無理無理ッ!」
芙蓉は右へ左へ体を傾けて銃弾の嵐を躱す。なすがままに揺さぶられる俺は最悪の気分だ。
「芙蓉ッ! 一旦俺を降ろせ!お前だけ逃げろ! 苧環!ポイントRはまだかッ!?」
このままだと撃ち落とされるのも時間の問題だ。
『こちら苧環……ポイントRは現在万年青先生がセッティング中だ』
「先生も動いているのか!?」
『英、後少しの辛抱だ……』
駆逐艦から放たれた銃弾が芙蓉の脇腹を掠めた。
「あっ!」 高度がガクンと落ちる。
「ふははははーーっ! ほれ、頑張って飛ばんか! この程度で落ちそうになるとは、貴様なんぞ鷲ではないわ! ただの羽虫じゃあ!! 次は直撃ぞ!」
黒鉄は部分的に抜けた前歯を見せながら笑う。
「芙蓉! 大丈夫か!? 俺を降ろせ!」
「だいじょばない! けど、大丈夫! ここでハナブーは落とさない! 恋する乙女の矜持なめんなよー!」
芙蓉は力強く羽ばたいて高度を戻す。戦艦からの弾幕は激しさを増した。
また仲間が傷ついた……あのクソジジイは絶対許さない。だがもっと許せないのは俺自身だ。
俺は俺に腹が立っている。もっと強力な力があれば千代草も鉄線さんも芙蓉だって傷つかずに済んだ筈だ……
「芙蓉! 俺に考えがある! このまま戦艦の真上まで飛べッ!」
*次回、『この老害に怒りの鉄槌を!』




