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「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
螻蟻潰堤(ろうぎかいてい)の章

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クソジジイと小童の激闘

はなぶさ


小童こわっぱッ! 貴様も大和男児(やまとだんじ)なら、隠れずに堂々と正面から死ねぇい!」


 ダァンッ! キンッ! ガキンッ!


 黒鉄くろがねの撃った銃弾が船内で数回跳ねる。隠れていても運が悪ければ当たってしまうかもしれない。


「……で、芙蓉ふよう。あのジジイは何者なんだ?」


 機関室の奥へ逃げ込んだ俺は小声で通信を再開した。


黒鉄新兵太くろがねしんぺいた八十六歳。旧世界大戦に憧れて、軍事シュミレーションゲーム風の異世界へ転移した人だよ! 自分好みの戦艦を操縦して、その異世界の海を制覇したらしい! 二年前に救出対象者ドリーマーとして捜索されたけど、既に異世界で死亡していた。て記録に残ってた! その時、黒鉄くろがねを探していたのはえんじゅ! 多分、死んだことにして味方につけてたんじゃないかな!?』


「マジかよ……そうなると、さっきジジイが言ってた盟友とはえんじゅの事か」


『ハナブー! 黒鉄じいさんの座標が残ってた! そっちへ何か物資を送ろうか!?』


 芙蓉ふようの提案で今の俺に必要な物は何かと考える。武器になりそうな物を頼めるのか? 芙蓉ふよう苧環おだまき兄妹の家の中にある物に限定されるのか?


 ダンッ!


 銃声が近くで鳴った。黒鉄くろがねとの距離が近くなってきている。このままではカチ合うのは必至。右腕を動かせそうにないので左手だけで短刀アンカーを握った。


 頭痛がおさまらない。むしろ酷くなっている。黒鉄くろがねは年寄りとはいえ銃剣を装備している。調子を取り戻せていない状態で、近接戦闘ができるのか不安だ。


 相手は死んだ事になっている元救出対象者(ドリーマー)だ。最悪殺してしまっても問題ないはずだが、現実世界にいた人間を手にかけるのは気が進まない。


 苧環おだまきがポイントRの準備を終えるまで待とうと判断した俺は、身を屈めて機関室で隠れられそうな場所を探しては徘徊を続ける。


 浸水を告げる警報音が、お互いの足音を掻き消してしまっている。機関室の出入り口は黒鉄くろがねが現れた場所だけだ。あそこから機関室を出て、船内で鬼ごっこしてるほうがまだ安全に時間を稼げる。


 そう判断した瞬間、俺の足元に握りこぶし大の鉄の塊がゴロンと転がってきた。()()を見て一気に血の気が引いた。こんな場所で手榴弾か! 俺と一緒に死ぬ気かよ!?


 俺は反射的に飛び出し、手榴弾を蹴り飛ばした。


「そこかぁ!」


 ダンッ!


 黒鉄くろがねが撃った銃弾は俺の右肩に直撃する。防弾性の高いスーツなので貫通は免れたが、肩と折れた腕に激痛が走った。よろめく俺に向かって走り込んできた黒鉄くろがねが、三八式歩兵銃の先端に取り付けてある剣を突き刺してくる。


「かかったな! 小童こわっぱっ!」


 追い詰められている俺は冷静さを欠いていた。普通に考えれば、こんな場所で手榴弾を使う馬鹿はいない。


「このっ! クソジジイッ!」


 自分の未熟さと、老獪ろうかい黒鉄くろがねに腹が立った。


 銃剣の先を短刀アンカーで受け止めて流し、左肘を黒鉄くろがねの顔面に叩き込む。やや距離を取り、黒鉄くろがねの右膝側面に関節蹴りを入れて挫いた。バキッと音が鳴ると共に黒鉄くろがねの足はあらぬ方向に曲がり、皺の多い顔が歪むのが見えた。


 その隙に背後へ周って両足で胴体をガッチリ挟み、左腕だけで黒鉄くろがねの首を締め上げる。昔、鉄線てっせんさんから教わった柔術が役に立っている。


「んぐぐ! き、さま〜…!」


「戦争ごっこは終わりだ……落ちろぉ! ジジイ〜!」


 歯を食いしばり、黒鉄くろがねの頸動脈をしっかり押さえて絞め落とす直前だった。


「く、……う、か……ん、て……ん、いぃ〜……」


 抱きついていた黒鉄くろがねの姿がフッと消え、俺は宙に浮いた。直後、落ちる感覚が訪れる。


 目の前は曇った空と雪だ……外に出された!?


 ざぶんっ!


 また海中に落ちたのだ。冷たい海水に心臓が驚く。痛む右腕があがらないまま、もがくようにして海面上に顔を出すと目の前には灰色の壁……黒鉄くろがねの駆逐艦があった。


 黒鉄くろがねが自由にテレポートが出来る能力チート持ちなのは勘づいていた。だから体を密着させて意識を奪おうとしたのだが、俺だけを残して移動するなんて細かな芸当ができるのは予想外だった。


 甲板上には首を抑えて這いつくばっている黒鉄くろがねがコチラを睨んでいる。


「終わりだ……小童こわっぱ! この艦の主砲で沈めてやる……五十口径十二センチ砲! 撃ち方用意ッ!」


 戦艦上の一番大きな砲台が向きを変える。砲身の先端の暗闇が、海の上で動けない俺を正面に捉えた。

 

 ドォォォーーーーーーンッ!!


 轟音と共に放たれた砲弾が海面に着弾し、激しく水柱を上げた。



 

*次回、『イーグル』

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