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「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
螻蟻潰堤(ろうぎかいてい)の章

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海と鉄艦

蒲公英たんぽぽ



 都内高層マンション最上階の一室、海まで見渡せる眺望の良いベッドルームには、白いシーツにくるまり、キングサイズよりも大きなベッドに横たわった黒百合くろゆりの姿があった。そこへ裸の蒲公英たんぽぽが近づき、ベッドのふちに腰掛ける。


「さっき連絡が入ったぜぇ、九鬼くきえんじゅがぶつかったそうだ……結局、お前の大好きなはなぶさは間に合わなかったなぁ」


 蒲公英たんぽぽ黒百合くろゆりの、長く艶やかな黒髪を撫でる。


「でも、まだ始まったばかりなんでしょ? それよりも……なんでえんじゅを止めなかったの?」


 蒲公英たんぽぽは肩を揺らして笑った。


「止めたりはしねぇさ、えんじゅのやろうとしていることは面白い。最後までやらせてやろうぜ。それに、賢者達サーガの一人も()()には興味を示してくれている。どうせ九鬼くきが勝つ。後は俺たちが、えんじゅが開墾した畑を丸々いただくのさぁ」


「悪いヒトだわ……ちなみにだけど、私の可愛いはなぶさクンはこれからどうなるのかしら?」


 黒百合くろゆりは上体を起こして尋ねる。蒲公英たんぽぽ黒百合くろゆりの肩を抱き寄せた。


「アイツは希少種レアケースだ……もっと面白い行動に出てくれると期待している。だが、今はオレとの事を愉しめ、黒百合くろゆり……」


「あら、ヤキモチだなんて……らしくないわね」


 二人は唇を重ねると、ベッドに沈んでいった。



はなぶさ



 九鬼くき班長の作戦開始時刻はとっくに過ぎている。通信も使えない、あの日の甲西ダム公園の時と同じだ。通信妨害ジャミングを受けている。状況が分からないのがもどかしい。


 俺は焦る気持ちを抑えながら早朝のハイウェイをバイクで駆ける。


『ピッ』


 通信が入った。俺は運転しながら応答する。


『おーい、ハナブー! 聞こえる〜!?』


 この陽気な女の子の声……芙蓉ふようだ。


「久しぶりだな! 生憎だが今お前にかまってやる時間はない、切るぞ!」


『いやいや、切らないでよハナブー! 今、九鬼くきさんトコに向かってるんでしょ?! その道はダメだよ! 罠だよ罠ッ! その先で歪み(ストレイン)が開いてる! 止まって!』


「なんだって!? なんでお前がそんなことを!?」


『ウチら九鬼くきさんから応援を頼まれて色々調べてたの! いいからマジで止まって〜!』


 その瞬間だった、目の前の道路上に突然巨大な歪み(ストレイン)が、時空の奥底を剥き出しにして出現したのだ。それは巨獣が大口を開いて獲物を丸呑みにしようとする姿にも見える。そしてその口の両端にはドローンが浮かんでいるのが確認できた。


 間に合わない!


 キィィィーーーー!!


 ブレーキをかけ、車体を倒して真横に滑らせたが、俺は火花を散らすバイクごと歪み(ストレイン)に飲み込まれてしまった。



 …………どぶんッ!!



 !?


 冷たい液体が俺の全身を覆った。


 マズイッ! ここは水中かッ! 上下が分からん! 水圧は!? 大丈夫! 潰れない! 浮力はある! 乗っていたバイクが沈んでゆく。


 すぐにバイクから視線を外して反対方向を見た。


 水面は俺の足側だ。遠いが行けるか!?


 体勢を整える。息苦しさに堪えながら全力で水面上を目指して浮上を試みた。


「ぶはっ!」


 何とか水中から頭を出した俺は辺りを見渡した。潮の香りがする。ここは海上だ。周りに陸地らしきものは見えない。此処は誰の異世界だ!?



 空は曇天……寒い……雪がチラホラ舞っている。


「くそっ! こんな所で遊んでる場合じゃねぇ! おい、芙蓉ふよう聞こえるか!?」


『……聞こえるよ! 大丈夫!? ……ハナブー!?』


「大丈夫じゃない! 寒い! ここは何処だか分かるか!? お前は今どこから連絡している?」


『ウチはさっき任務が終わって、一度本部に戻る途中だったの! さっき苧環おだまきから連絡があったんだ! ハナブーが危ないって! 苧環おだまきは家にいるからハナブーの座標を調べさせるよ! 待ってて!』


 芙蓉ふようは慌てた様子で通信を切った。


 この状況はヤバいぞ、何も無い冬の海のど真ん中だ。体が冷えて低体温症になってしまう。水中で穢悪エオを使って体を温めたいが、目眩で溺れるかもしれない。



「空・間・天・意ぃぃぃーー!!」


 ドバーーーーーーッッンンンン!!


 突然、謎の声か響き渡ると、空から巨大な()()が降ってきて、俺から数十メートル離れた地点に着水する。


 俺はその衝撃の波に飲まれ、もう一度水中を二転三転と彷徨う。


 意識が飛びそうになりながらも、ふたたび水面へ顔を出して、空から降ってきたモノを確認した?


「こ、これは!? 軍艦かッ!? なぜ空から!?」


 それは、極東の国が最後の大戦で太平洋を巡航した灰色の駆逐艦……かなりの年代物に見える。


 こんな物を誰がこの異世界で創造したのか!?


 甲板に人影が見えた。軍服を着た……老人か?


 ソイツは馬鹿でかい声で堂々と名乗りをあげた。


「聞けぇぇい! 吾輩は黒鉄くろがね新兵太しんぺいたァ! 階級は少佐であぁぁぁるッ! 逆賊よっ! この海域の塵芥ちりあくたにしてくれるわぁぁ!!」


 戦艦の各砲門が一斉に、ゆっくりと俺の方に狙いを定めて動きはじめた。




*次回、『老獪』

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