敢行
◇九鬼班
九鬼班、槐班合同作戦二日前……
「この作戦を、同時展開する」
九鬼がタブレットの画面に示したのは、先ほどの九鬼班、槐班合同迷子救出作戦とは矛盾する『槐捕縛作戦』であった。
「班長、これはどういう事ですか? 槐班は俺たちと共同で任務に就くのでは?」
その内容に驚嘆した南天が怪訝な顔で九鬼に説明を求める。
「槐班に造反の動きあり……課長からその報せと、ある作戦の提案を受けた」
「造反……」
千代草が呟く。
「前回、甲西ダム公園にて私達は二度襲撃を受けている。あれは槐が行った可能性が高い。課長の考えはこうだ……『千代草をわざと槐に攫わせる。そして私達が追跡し、潜伏先の異世界で迷子を救助しつつ奴らを捕まえる』……」
九鬼はまっすぐに千代草を見据えて言った。
自分を直視する九鬼の瞳から目を逸らせない千代草は閉口し、固唾を飲む。
「だが私はこの考えに反対だ。槐と合流した時点ですぐに捕える」
「待ってください班長、槐と迷子は繋がった事件なのですか?」
動揺する南天をよそに、九鬼は頷く。
「課長はそう見ている。槐が迷子と千代草を使って何かを企んでいるとな……だが、囮作戦には従わない。槐を捕まえて全て吐かせる。迷子の救助には、私から万年青さんに頼んで苧環と芙蓉に向かわせるようにしてある。少し遅れるかもしれないがな。
もし、交戦することになれば、槐のそばに居るであろう合歓は私が抑える。その間に南天とシロで槐を捕えろ。千代草は南天のサポートだ。異存があれば挙手を……」
千代草はそっと手を挙げた。
「……千代草。さっきの囮の事が気になるか? やらなくていい……お前が進んで危ない橋を渡る必要はないんだぞ」
九鬼は少し顔の緊張を解かして、柔らかな口調で千代草に話かける
千代草はかぶりを振った。
「私は、ずっと後悔していたんです。一人目の迷子、宮田カケルくんを助けられなかった事を……もっと早く異世界から助け出せていたなら……と。二人目の迷子も、重い病気を患ったまま何日も異世界に閉じ込められています。もしあっちの世界で健康状態が悪化していれば……そうなる前に私が囮になり、いち早く迷子に接触して保護魔法と回復魔法をかけてあげたいんです!」
千代草の目からは揺るぎない決意が見て取れる。九鬼は尋ねる。
「どんな目に遭うのか、何をやらされるかわからんぞ……」
「槐さんを捕まえるより、私は子どもを助ける事を優先したいです……もし、私の主張を飲んでもらえないなら私はチームから外れて単独で動きます」
それは千代草が九鬼に初めて反発した瞬間だった。二人の視線が交錯する。
ゆっくりと瞳を閉じて、諦めのため息をついたのは九鬼のほうだった。
「わかった……ただ、万一に備える。苧環と芙蓉にはなるべく早くこちらに合流してお前の座標を調べるよう呼びかける。それでいいな?」
「はい!」
千代草は力強く返事をした。
*次回、『海と鉄艦』




