02. 蔓と隠れ蓑
採掘場で追跡者と対峙した英たちの、それぞれの戦闘が幕を上げる。
施覆花は、蔓のエルフと対峙した……
◇施覆花対エルフ・採掘場◇
女エルフは蔓になった長い両腕を鞭のように振り回す。シュパンッ! パシンッ! と空気を切り裂く音が連続で響く。当たれば皮膚が裂け、筋肉は断絶されるだろう。
施覆花はズボンのポケットに両手をいれたまま、複雑な鞭の軌道を読んで回避する。敵の攻撃範囲外まで距離を取ると、薄く笑いながらベースボールキャップの向きを前後反対にして被り直した。
攻撃が当たらない事に苛立つエルフは険しい表情をしている。
「そない怖い顔せんでや、べっぴんさんが台無しやで」
施覆花は軽口を叩くと、ベルトに差してある日本刀を鞘ごと取り外し、刀をバットの様に構えて野球のようにスイングした。
「そ〜らよっ!」
振られた刀からは鞘が発射され、真っ直ぐエルフへ向かって飛んでゆく。
鞘はエルフの蔓の腕で簡単に弾かれたが、その間に施覆花はエルフまで一気に距離を詰めて下段から刀を振り上げた。
エルフは後ろへ大きく跳んで避ける。難を逃れたかに見えたが片腕を無くしていた。
エルフは近接戦闘を避けるため、さらに施覆花から距離を取る。
斬り落とされた腕の切断面を不思議そうに見ると、施覆花に訊いた。
「ナンダ、ソノ刀ハ? ドウヤッテキッタ?」
「あぁ、コレ? これなぁ、天狗の隠れ蓑っちゅーヤツや。オモロイやろ?」
施覆花が手にしている刀には刀身が無かった。一見するとただ柄を握っているだけにしか見えない。
「ツマラン……」
エルフは斬られた腕を瞬時に再生させた。その新しい腕には無数の棘が付け加えられている。
「ツマラン、ツマラン、ツマラン! ツマランッ!!」
エルフは遠距離からさらに猛攻を仕掛ける。空気を切り裂く音が何度も周囲に轟く。施覆花は見えない刀身で蔓を切り落とすが、エルフはすぐに再生させて攻め続ける。
距離を取って安全に攻めているエルフが舌打ちをし、苛立ちの表情を浮かべた。
なぜか。それは施覆花が、その場から一歩も動くことなく自分の攻撃を難なく捌いているからである。
最初に腕を斬り落とされて以来、施覆花の足の裏は地面から一度も離れていないのだ。エルフにとってそれは屈辱的な事だった。
現状を変えられないと察したエルフは、一旦攻撃の手を止めた。
施覆花はふぅと息を吐き出す。
「休憩すっか? ほな、ここらで俺の舞を堪能してくれや」
そう言うと、まるで時代劇を観た後の子供のように、見えない刀を無邪気にブンブンと振り回しはじめた。
「見よやこの剣捌き! オレんちに先祖代々伝わる伝統の剣技や! 隙があったらかかってこんかいッ!」
殺陣っぽい動きを披露した後に決めポーズまで終えると、施覆花はエルフに向けて刀身を突きつける仕草をした。
……その瞬間。
勝負はついた。
ドスッ!
エルフが口と喉元から血を流して膝をつく。
「ガッ!? ……オマエ……ナニヲ!?」
「せやから、隠れ蓑や。俺のこの刀は目に見えへん特別な代物。しかも刀身のサイズは伸縮自在。長さも幅も、ある程度俺の自由に変えられるんや」
エルフの喉に突き刺さった施覆花の刀身が、返り血でそのシルエットを浮かび上がらせた。
箸ほどの細長い刀身がエルフの喉を貫通している。
「ねーちゃんは遠間から戦うのが好きそうやったからな、ちょいと騙して楽させてもろたわ」
「ク、ソガッ!」
エルフは施覆花に両手を向けて鋭い先端の蔓を伸ばす。
だが、それが届く前に、施覆花は刀を握った腕を振り上げると、エルフの顔面は縦に切り裂かれた。そして生命活動が維持できなくなった体はバラバラと崩壊し、炭と化して風に散っていった。
「ほな、さいなら」
施覆花は落ちていた鞘に刀をカチンと納めてニヤッと笑った。
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*次回、ムッツリ大男対巨乳メイド『銃と包丁』




