蔓と隠れ蓑
◇施覆花
エルフが蔓と化した長い両腕を鞭のように振り回す。シュパンッ!パシンッ!と空気を切り裂く音が連続で響く。
施覆花はその攻撃を何度も掻い潜って避け、距離を取るとベースボールキャップを前後反対にして被った。
「あっぶないなぁ〜、そない怖い顔せんでや、べっぴんさんが台無しやで!」
施覆花は軽口を叩きながら手に刀を顕在化させると、両手で柄を握って野球選手のバッターのようにスイングした。
「そ〜らよっ!」
振られた刀からは鞘が発射され、真っ直ぐエルフへ向かって飛んでゆく。
鞘はエルフの蔓の腕で弾かれたが、その間に施覆花が距離を詰めて刀を振った。
エルフは後ろへ大きく跳んで避ける。難を逃れたかに見えたが片腕を無くしていた。
それを見たエルフは近接戦闘を避けるため、さらに施覆花から距離を取り、斬り落とされた腕の切断面を見て施覆花に訊が《き》く。
「ナンダ、ソノ刀ハ?ドウヤッテキッタ?」
「ああコレ?これは、天狗の隠れ蓑っちゅーヤツや。オモロイやろ?」
施覆花が手にしている刀には刀身が無いように見える。ただ柄を握っているだけにしか見えない。
それを時代劇のチャンバラのようにブンブンと振り回す。
「見よやこの剣捌き!オレんちに先祖代々伝わる伝統の剣技や!隙があったらかかってこんかいッ!」
殺陣っぽい動きをした後、バッチリ決めポーズまで終えると、施覆花はエルフに向けて存在しない刀身を突きつける仕草をした。
しかし、その瞬間、勝負はついた。
ドスッ!
エルフが口と喉元から血を流して膝をつく。
「ガッ!?…オマエ…ナニヲ!?」
「せやから、隠れ蓑や。俺のこの刀は目に見えへん特別な代物。しかも刀身のサイズは伸縮自在。長さも幅も、ある程度俺の自由に変えられるんや」
エルフの喉に突き刺さった施覆花の刀身が、返り血でそのシルエットを浮かび上がらせた。
箸ほどの細長い刀身がエルフの喉を貫通している。
「ねーちゃんは遠間から戦うのが好きそうやったからな、ちょいと騙して楽させてもろたわ」
「ク、ソガッ!」
エルフは施覆花に両手を向けて鋭い先端の蔓を伸ばす。
だが、それが届く前に、施覆花は刀を握った腕を振り上げる。
エルフの顔面は縦に切り裂かれた。そして生命活動が維持できなくなたった体はバラバラと崩壊し、炭と化して風に散っていった。
「ほな、さいなら」
施覆花は落ちていた鞘に刀をカチンと納めてニヤッと笑った。
*次回、『銃と包丁』




