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「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
螻蟻潰堤(ろうぎかいてい)の章

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プリプリ魔法少女 アイラちゃん⭐︎

はなぶさ


 本日、二人目の迷子ロストチルドレン救出作戦決行の日だが、作戦メンバーに組み込まれていない俺は異世界転生救済課の本部にいる。


 松代まつしろを取り調べるためだ。


 取り調べ室の扉の前で待っていた施覆花おぐるまさんに、「何があっても終わるまで喋らないで下さい」と念押しして二人で松代まつしろが待つ部屋に入った。


「おはようさん、松代まつしろさん」


 施覆花おぐるまさんが声を掛けるが、松代まつしろは返事もせずに、机の上に顎を乗せて不満そうな顔で座っていた。そして俺の顔を見てわざとらしく深いため息を吐いた。


「はぁぁぁぁ〜、新しい人がくるなら女の子が良かったなぁ」


「悪かったな、男で」


「あの時一緒にいた、お目々がおっきなショートカットの女の子は? あの子は俺の好みなんだぁ」


「やめとけ、アイツの前で少しでもエロい事を口にしたらドラゴンに噛まれるぜ」


 俺はそう言って椅子を引き、松代まつしろの正面に座る。施覆花おぐるまさんはドア横の壁にもたれて電子タバコを加えた。


 松代まつしろはもう一度深いため息を吐いた。


「もうこんな事やめて下さいよぉ〜、異世界に戻してくれないなら、せめて家に帰してくれよ〜」


売人ハスラーの事をちゃんと思い出せたら帰してやる。てゆーか、この前あんたの部屋を見てきたけど……汚すぎて驚いたぜ」


「はぁ!? な、何勝手に俺の部屋に入ってんだよ!」


 「あんなゴミ屋敷の中で生活して、よく病気にならなかったな」


「うるせー、ゴミ屋敷で悪かったな!」


 さっきまで机に伏せていた松代まつしろは体を起こした。


「勿論お前の親から許可は貰ったぞ、あの部屋はあんたの部屋だが、家はあんたの親のものだからな」


「ちっ! あのババア……」


 苛立った様子の松代まつしろは、拳を固めてドンと机に鉄槌を落とした。


「それはそうと……」


 俺は机に両肘をつけたまま身を乗り出した。


「なぁ松代まつしろさん。あんた……岡見ひろや監督の代表作アニメ、『プリプリ魔法少女 アイラちゃん⭐︎』が好きなのか?」


「ぶっ!」


 俺の後ろで施覆花おぐるまさんが吹き出した。


 松代まつしろは一瞬固まったが眼鏡を掛け直して答える。


「ま、まぁ、好きだが……なんだよ?」


「魔法少女アイラちゃんと、魔法少女仲間のひさめちゃんとカンナちゃんのフィギュアが、ケースの中に大事に飾ってあった。テレビシリーズ全二十四話を収録したオリジナルタペストリー付き限定版DVDボックス、プラス劇場版もあった。映画の入場特典でランダム配布されていたアクスタもコンプリート! これは最低でも七回は映画館に足を運ばなければならない……ちなみに俺はテレビシリーズの神回と呼ばれる第二十一話が好きなんだが、あんたはどうだ?」


 俺は松代まつしろに顔を近づけてまくし立てる。松代まつしろはそんな俺に気圧されたのか、はじめギョッとした顔をしたが、すぐに相好そうごうを崩した。


「そ、そうなんだよ! あの回はね! ひさめちゃんが闇堕ちして何回もタイムリープしてアイラちゃんを救う神回だ! この回で視聴者はみんな気づいたんだ! この物語の主人公はアイラちゃんではなく、ひさめちゃんだと言う事を! それでエンディングにオープニングを持ってくる演出で鳥肌立ちまくってやばかったよ? 流石は岡見監督だ!

な!? なんだよ! アンタ、同志だったのかよ! こんなところで魔法少女アイラちゃんを語れる人と出会えるなんて嬉しい!」


 松代まつしろは口の両端に白い泡を出しながらアニメについて熱弁した。


「俺もだ! 俺って陰キャだから中々同志に会えなかったんだよ! 松代まつしろさん! あんたとなら朝までアイラについて語れそうだ!」


 俺は立ち上がり、机ごしに松代まつしろに握手を求めると、松代まつしろも俺を手を握った。


「ならば語ろう! 朝まで、いや、魔法で世界を救うまでっ!」


「……だが、ひとつだけ確認させてくれないか?」


 俺は視線を机に落とす。


「どうした友よ? なんでも言ってくれ……」


「アンタがSNSチョビッターで魔法少女アイラちゃんの普及活動を熱心に行っているのは知っている……調べたんだ」


「ああ、俺はアイラちゃんを国民的アニメにしたいからな、毎日の呟きは欠かせない」


 松代まつしろは眼鏡を掛け直して、誇らしげにそう言った。


「だが、なぜだ? なぜ母親のスマホのアカウントを使ってまで、あんな中傷するような事を書き込んだんだ?」


 俺は若干目を細め、寂しそうな表情を作る。


 さぁ、どう出る? 松代まつしろ


 ……


「友よ、何のことだ?」


 乗らないか……


 だが、松代まつしろの口は動いた。


「いいや、すまない。厳密には『覚えてない』が正解かな……確かに俺は、チョッビッター以外にも他のSNSで何度も『プリプリ魔法少女アイラちゃん⭐︎』の悪口を書いた。ババアのスマホを使って書いたか、書いていないかおぼえていないが……

だがこれはアンチをわざと装って作品の知名度を底上げする常套じょうとう手段! これも愛ゆえにやった事! 許せ……友よ」


 松代まつしろも机に視線を落として悔やむようにそう告げた。


 記憶があいまいだというのはいい答え方だと思った。


 そして実際、松代まつしろはチョビッター以外のSNSでも魔法少女アイラちゃんの悪口を書き込んでいる。


 だか、お前は知らないはずだ。臆病な松代まつしろが、母親のアカウントを使って書いた内容のことを。


 演じきれていないな……吾亦紅われもこう


*次回、『詰み』

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