表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」 ー内閣府裏デジタル庁異世界転生救済課活動記録簿ー  作者: ねず ただひま
螻蟻潰堤(ろうぎかいてい)の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/73

来訪者

◇報告書


 ◯月◯日


 横浜の国立病院勤務の医師、向井春子を、禁足地である甲西こうせいダム公園への建造物・住居侵入罪での疑いで逮捕。


 便宜上、身柄は警視庁に送られたが、取り調べを行ったのは裏デジタル庁異世界転生救済課の人間であった。

 向井は四十雀しじゅうからの指示でダム付近で待機していた人物、Xへ胸部切開手術並びに臓器移植手術に必要な道具一式を手渡した。


 向井が四十雀しじゅうからの様子を尋ねると、ゆっくりとした口調で丁寧に健在である事を伝えられた。そして向井は道具運搬の報酬としてXから三〇〇万円を受け取る。


 以前より四十雀しじゅうからは所在が不明になることはあった。何処で何をしているのか明かさないかったが、病院で予定されている手術はすべて滞りなく行っている。


 手術道具はすべて非正規のルートで病院へ納品された物である。




はなぶさ



 甲西ダム公園事件の昼頃、本部に戻った俺と千代草ちよぐさ九鬼くき班長と会えはしたが、結局昔の事件の話は聞くことは出来なかった。

 いや……させてもらえない空気だった。班長は大袈裟に千代草ちよぐさの怪我を心配した後、足早に鉄線てっせんさんの元へ向かったからだ。いずれ真相を知ることになるだろうか……


 翌日の夕方、家に着替えを取りに帰ると玄関に見覚えのない靴があった。女性のパンプス? だ。それに気づくと同時に、コーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。


「おかえなさい」


 聞き慣れない女の声がした。廊下の壁に背を張り付けて、警戒しながらリビングをのぞくと、蒲公英たんぽぽ課長の秘書、黒百合くろゆりが椅子に腰掛けていた。足を組んで優雅にコーヒーを飲んでいる。


 ここは俺の家のはずだが、まるで俺がここに客として招かれたような雰囲気になってしまっている。

 俺は溜め息を吐きながら肩のりきみ解くと、腰に手を当てた。


「俺は今、二択で悩んでいる。警察を呼ぶか、『上司に時間外労働を強いられそうです』と労働局に駆け込むか……アンタはどっちがいいと思う?」


「どちらもやめてもらえると嬉しいな」


 黒百合くろゆりは首を傾げてニッコリと微笑んだ。


「で、何の用だよ?」


「フフッ、随分と冷たいじゃない。でも、そこが貴方の良いところよ。ところで女を家に入れたのは初めて? だとしたらドラゴン使いの千代草かのじょさんに悪い事したわね」


 黒百合くろゆりはコーヒーをカウンターテーブルの上に置いて、組んだ自分の足に肘を当てて頬杖をついた。


「はぁ……アイツとはそんなじゃねーよ。そもそもアンタが勝手入ってきたんだろ」


 俺はため息混じりに答える。


「私ね、貴方に会いたくてお使いを買ってでたのよ」


「お使い? 課長から何か頼まれたのか?」


 黒百合くろゆりは目を細めると、胸ポケットから二つ折りの紙を取り出してカウンターの上に置いた。


「なんだか嫌な予感しかしないのだが、それは?」


 黒百合くろゆりは立ち上がり、俺の横を通り抜ける際に、肩に手を掛けて耳元で囁いた。


「課長からの特命ラブレターよ」


 黒百合くろゆりの妖しい吐息はコーヒーの香りがした。


「ちなみに、その任務が終わるまで九鬼くき班長との合流は禁止だそうよ、頑張ってね」


「はぁ!? なんだそりゃ?」


 振り返ると黒百合くろゆりは既に部屋から出ていた。


 俺はカウンターに置かれた紙を拾い上げ開いる。


吾亦紅われもこうを探しあてろ』



()()()()()()


*次回、『パンツ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ