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甕に帰る狸  作者: futan
第二部 共感
16/25

7

 この車椅子の老人が垂井なる人物か。白髪、短髪で背は百六十有るか無いかの小柄でずんぐりした体型の老人だった。教師と言うより気難しい職人といった風体だ。一緒にいた男は紀田村と名乗りここに住む老人が通所するデイサービスの介護職員をしていると語り、自分もカエルのチンドン屋から逃げて来たと告げられた。

「垂井さんは重度のアレ恐怖症なんですよ。言葉だけでも反応しちゃって。それに町が妙な事になって、いつの間にか町中がアレだらけで。垂井さんの事が心配になったこともあるんですが、垂井さんの家しか逃げ込む場所を思い付かず押し掛けちゃったんです」と言うと紀田村は暫く考え込み話しを続けた。

「でも、アレは本当にいたのかな?なにか嫌悪感に溢れた悪夢を見ていたような感覚で・・・。未だに見た物が信じられないですよ」

紀田村は垂井を宥めながらカエルと言う単語を使わないよう話をしていた。

 紀田村の話しには共感できた。自分達も同じ体験して来たばかりだ。彼が言うように未だに夢の中の出来事にしか感じられなかった。何故か現実感が持てないのだ。だが恐怖感と嫌悪感だけは強く認識できていた。

「垂井さんのお知り合いですか?」

紀田村は古林が消えた廊下の方へ視線を動かした。

 古林が取った行動の説明に戸惑った。どんな説明をすればいいのだろうか。取り敢えず名刺を差し出し、都市伝説がテーマの配信番組の取材に来たと簡単な番組説明をし、その取材の為にそこにいる垂井さんに会いに来た旨を伝えた。更に此処へ来るまでの出来事を手短に話した。

 カエルのチンドン屋に追いかけられるなど話すことさえ馬鹿らしい信じられない体験を紀田村もしていた。垂井さんの採取した民話「甕に帰る狸」の内容やカエル恐怖症の垂井さんの事などからこの現象の何らかの手掛かりは垂井さんが握っているに違いないと言うのがお互いの共通見解だった。

「この状態ではお話は伺えそうも無いかなぁ。オマケに例の恐怖症では」

取り乱している垂井さんを眺めながら独り言のように言うと「怖い出来事を思い出したんです。直ぐに収まると思いますよ。とは言ってもここ数ヶ月の間に認知症症状の進行が著しくて、見当識も怪しくなってきているので質問に上手くお答えできるかは・・・」

紀田村は暴れもがき車椅子から落ちそうな垂井さんを慣れた手付きで支えながら言った。

 それにしてもくぐもった音しか聞こえず、色褪せ霞んだような視界の中でこの男はハッキリと像を結んで見えている。それだけでなく声も明瞭に聞こえている。相変わらず目や耳の調子が異常なのだろうか。

 垂井さんの怯えや恐怖を宿した眼を見ていると話は聞けそうもない、どうした物かと思案していると紀田村の言葉通り騒ぎ疲れた垂井さんは静かになり目を閉じた。程なく穏やかな寝息が聞こえてきた。

「寝ちゃったみたいです。今日は何時も以上に騒いだから疲れたんでしょうね」と言うと紀田村は垂井さんへ柔らかな眼差しを送った。まるで寝息を立てる赤ん坊を見るような目付きだった。

 玄関で立ち話もなんですから此方へと紀田村は垂井さんの居室へ案内した。通された部屋は居室と言うより広い書斎だった。それもかなり広い。

 饐えた臭いと図書館や古本屋を思わせる臭いが鼻につく。居室は広く二十畳近くはあるだろうか。天井は高く蓮の花の凝った左官細工が品良く施され、鈴蘭の花を模った電傘が集まったシャンデリアが下がっている。室内は古ぼけかなり痛んではいるが造りの良さと豪華さが見て取れる。部屋の様子から元々は応接室に使われていたようだ。入って正面の壁一面に据え付けられた大きなラウンドトップのフランス窓には半開きになった色褪せた深緑のドレープカーテンとその間から所々擦り切れ穴の開いたオーガンジー製のレースカーテンが覗いていた。ヴィクトリアン調の立派な応接セットは部屋の隅に追いやられ書籍や書類が積まれ荷物置きとなっている。部屋の両脇には天井近くまである書架が聳え立ち一寸した図書室だった。書架に収まりきれない書物が無造作に床に積まれミニチュアのグランドキャニオンを作っていた。

 書架の蔵書は物理の教師らしく物理関係、特に量子学系の書籍が目に付く。対面にある書架には言語学や民俗学関係の書籍が並べられている。棚の片隅では土器のレプリカや土器の破片らしい物も見受けられた。

 蔵書と垂井さんを見比べる。短髪でズングリとした体付きで職人風の風貌を持つ垂井さんは黒板の前でチョークを持ったりするより金槌やノコギリを持っている方が似合っている。と感じるのは見てくれで判断する自分の偏見かと一頻り反省してみる。

 フランス窓の前には胡桃製の重厚な造りの大きな机の上も大部分が山積みになった本や書類で占拠され、積まれた書物の隙間でパソコンが場違いな雰囲気を主張している。それだって今じゃ骨董品のブラウン管モニターのパソコンだ。

 そのパソコンの前では古林が人様の家などお構いなしに勝手にパソコンを立ち上げていた。起動音に続き一呼吸置きスタートアップ画面が浮かび上がる。書物や書類の隙間からモニターの光に照らし出された古林の邪悪な笑みが浮かび上がる。

 パソコンが立ち上がった瞬間、書斎の空気が一変する。肌へ染み込むようなこれまで以上に強い違和感が書斎中に立ち込め、居心地の悪さが更に増していく。紀田村やミズホの表情からもこの場の変化を感じ取っている事が察せられた。

 今まで音一つ出さなかったミズホが叫び出した。

「『禍得る』だ。その機械は『禍得る』を呼ぶ。その機械から離れなさい」と古林に詰め寄り駄々っ子みたいにシャツの裾を引っ張り始めた。

 古林は異変も今の状況など気にも留めず何度も体を揺すられながらもパソコンに夢中で齧り付いている。こうなると古林は梃子でも動かない。返事もしない。時折唸ったり呟いたりを漏らしていた。ミズホは途方に暮れ古林の脇にしゃがみ込むと手のひら一杯のラムネ菓子を口へ放り込みバリバリと噛み砕き始めた。

 ミズホはどうしたって言うんだ。カエルだったらさっきまで散々見てきたばかりじゃないか。何を今更騒ぎ出しているのだ。悲痛な表情を浮かべ俯くミズホを古林は完全に無視を決め込んでいた。

「またタヌキが迷い込んできたようだね」

 何時目覚めたのか垂井さんが唐突に話し掛けてきた。怯え、憤り叫ぶ姿はそこには無く穏やかな目線と笑みを此方に送ってきている。

「垂井さん。今日はお客様が来られていますよ」と紀田村が穏やかに話し掛けた。

「初めまして仲村と申します。今日はお話を伺いに参りました」

話し掛けながらふと思いが過ぎる。この異常な事態の最中に俺達は予定通りに仕事を進めている。今、行うインタビューには意味があるのだろうか。この状況から抜け出す術も解らないのに。自分はいったい何をやっているのか・・・。

「何を聞きに来たのかな。試験範囲なら発表しただろう。それとも・・・」

戻って来た返答に言葉が詰まる。言葉を継ごうとすると紀田村が割って入る。

「先生、この方達は潟人について取材に来られたのですよ」

紀田村はカエルと言う単語は出さないよう言葉をすり替え説明した。

 しかし、カエル男の取材なのに聞いたこともない潟人とは。肝心のカエルがNGワードでは新潟くんだりまで無駄骨を折りに来たのか。

「そうか。君達はあの話に興味を持ったのかね」

垂井さんの顔に笑みが広がる。その笑みは苦笑いを感じさせる物だった。紀田村が話を合わせるよう目配せしてきた。

「あの話はこの町の歴史から抹殺された民族の末裔から採取した言い伝えだよ。残念ながら話の後半はまだ・・・」

垂井さんは考え込むような表情を浮かべ、再び「そうか興味があるのかね。君達は」と再び呟いた。咽が渇いているのかぺちゃぺちゃと口を鳴らし始めた。視線は宙を彷徨い次の言葉を探しているようだった。暫く唇を舐め続けると話し始めた。

「彼等は潟の畔にのみ定住し異質の神と異質の文化を持っていた。ここで興味深いのはこの町だけなのだ。この町の潟周辺にだけ定住していた。この民族の事を知っているのはこの土地に古くから住む人間だけだ。極めて限定的なのだよ。近隣の村や町にさえ彼ら、潟人の事は話さないようにしていた」

「歴史・・・、抹殺された民族・・・」

紀田村が噛み締めるように呟く。

「抹殺と言う言葉は正しくなかった」

垂井さんは天井を見つめまた言葉を探し始めた。相変わらず話さない時は舌を鳴らし、唇を舐めている。

「無視され続けたと表現した方が近いかな。いやそうではないな。潟人周辺に住まう人々は不思議なほど無関心だった。潟人に関する全てが禁忌には違いなかったが。無関心とは抹殺なんかより遥かに質が悪い」

垂井さんの言葉には怒りの欠片が含まれていた。

「私は・・・手掛かりを必死で探した。黙殺されたものを探し出すことは困難を極めた。隠蔽なら手掛かりなんぞ伝承や記録の綻びから見つけることが出来る可能性がある。だが無視された存在はそうは行かない。記録も噂話ですら作られなかった。しかし全く交流が無かったと云うことも考え難い」

垂井さんは言葉を切ると書架の一部を睨み付けた。視線の先は土器片があった。

「彼等の固有文化である渦状紋文字や渦状紋文化は無視され、あまつさえ我々の文化にさえ取り込もうともせず帰化も許されなかった民族。それが潟人だよ」

再び話し始めた垂井の声に熱がこもってくる。

「ニュースグループや地元の民俗学研究誌などで発表したが無視されるか嘲笑を浴びるだけだった・・・」

垂井さんは言葉を切り、話しに間が空く。目付きが変わり唇を舐める速度が速まる。

「私は戻りたかった・・・。彼等が唯一の手掛かり・・・。帰りたい・・・帰らなければ。ここは何処なんだ。帰してくれ」と垂井さんはもがき、怒り泣きじゃくり始めた。

 垂井さんの突然の変化に驚き戸惑っていると様子を覗っていた紀田村が感情失禁ですと言うと「そうですか。大変だったでしょう。帰りましょうね」

紀田村は垂井の目線まで腰を落とし宥め始めた。しかし表情はみるみる不安に染まり落ちつかずきょろきょろと視線を泳がせたり、車椅子を自走させ書架の前を行ったり戻ったりしていた。母さんののっぺが食べたいとか渟足書房に本を取りに行かなければとか脈絡の無いことを呟いている。

「落ち着くまでそっとしておきましょう」

「垂井さんはかなり混乱しているようだ。認知症の症状・・・ですか?」

書架の前で車椅子を揺すっている垂井さんを見ながら紀田村に質問を投げる。

「ついこの間までは会話は成立していたんですよ。人によっては急激に症状の進行を早める場合もあるもので」

「今の垂井さんは症状が急激に進行していると言うことですか」

垂井さんは書架を見つめ漫然としていた。

「そうですね。だが垂井さんが落ち着けばまだ話は聞けるのかなと思います」と自信なさげに紀田村が答える。

 紀田村の様子から垂井さんとはまともなコミュニケーションが出来る状態へ戻れる可能性は低く感じられる。そもそも此方の言うことを理解出来るのか。これは不味い。とても不味い。このままでは番組制作のスケジュール調整が出来ない。垂井さん抜きで話を進められないかと思案を巡らせていると古林が此方を睨んでいる。もちろん奴は垂井さん抜きでは承知しないだろうな。もっと情報を引き出せと目が訴えている。今回の番組ネタの発生元が目の前にいるなんて番組史上初めての事だ。

 不意に今の状況が降ってきた様に頭に割って入る。俺は何をしているのだ。この異常な状況下で何故番組のことを考えているのだ。それに先程から不定期に襲ってくる突然降って湧いたかのような胸を抉る様な恐怖や嫌悪感より番組の方が気になっている。当事者意識が薄く他人事に思えている。今の状況は不条理な悪夢のアトラクションを体験させられている気分だ。悪夢だって夢判断で理由や理屈を付けられそうだがまるで状況が理解でき無い。

「不味いな。スケジュールが・・・」とまだ番組の事が頭から離れない。溜息と共に思わず声が漏れる。

 それを聞き付けた紀田村が「あのぉ」と話を切り出し始めた。

「仲村さんは認知症の垂井さんと会話が成立するのかを心配してますか?」

「正直なところインタビューは無理そうな状態・・・」と車椅子で俯いている垂井さんの様子を見た。

「支離滅裂な話でもその人にとっては伝えたい意味のある事柄もあると思います。認知症の症状は人によって様々です。垂井さんは記憶障害によって時間も場所も周囲の状況も理解出来ない状態です。記憶に残っている断片的な言葉を羅列しているだけかも知れない。でも、もしかしたら此方の言葉が届かなくても何か伝えたい事があるから語り掛けて来るのだと思います。垂井さんのフェイスシート程度の情報なら頭に入っています。僅かな情報でしかないのですがお力になれるかも知れない。垂井さんがこの異常な事態の鍵を握っている事は確かなようだし」

「それで垂井さんの言う事がある程度は理解出来ると・・・?」

「まさか、無理ですよ。健常の人達とさえ理解し合う事は難しいのに。ましてや今の垂井さんの話す事が彼のどの時代の記憶なのかも解りません。キーワードなど見付け推論するだけです」

「ではどうやって聞き出したら」

「聞き出す事も無理でしょう。でも言葉だけが情報を得る手段だとは限らない。視線、表情、仕草なども情報収集の手段になります。併せて垂井さんのプロフィールや今までの交流で得た情報や彼が残した文章などから手掛かりを探せるかも知れないと言うことです」

 一瞬期待したが紀田村の言いだしたことは断片的な言葉からの推測は出来るかも知れないに過ぎない。落胆が胸に湧いて来る。そう、あくまでもかも知れないに過ぎない。真実でも虚構でも構わないのだが垂井さんが語る直接的な情報が欲しい。

 本人が語る情報と他人が取材対象の情報を推測で語る事では情報の種別が全く違う。それが妄想や幻覚でもかまわない。取材対象者から直接の言葉が欲しい。会話の様子や表情など観察しながら言葉以外の情緒的な情報を汲み取りたかった。

 インタビューや聞き取り調査の時など言葉以外の非言語から情報収集は自分も実践している。紀田村の方法論と同じだ。だが紀田村の立てる推論では垂井さんからのピュアな情報ではない。紀田村の経験や知識を通しての推論だ。

 いや、待てよ。健常の人だろうと認知を患っている人だろうと言葉の奥にある思いは想像し推論するしかない。自分が推論するか他人が推論するかの違いでしかない。推論はあくまでも推論にしか過ぎない。だがそれはそれで自分以外の視点を見つけられるのでは無いか、自分の視点にこだわり過ぎていた。自分が作る番組だからと言う思いが強く視野狭窄になっていたことに気付かされる。

 今までとアプローチの仕方を変えるのも有りだなと垂井さんの様子を横目で見ながら忍び声で紀田村に話し掛ける。

「紀田村さんは垂井さんとは個人的にもかなり親しいようだ。垂井さんへの直接的な取材は無理にしてもカエル男に関する情報を知りませんか?」

「カエル男の事は知りません。『甕に帰る狸』の中に登場するカエルしか心当たりが有りませんね。物語のカエルと何か関係が有るのかも知れませんが、垂井さんは過度のカエル恐怖症です。カエルと言う単語自体禁句なもので」と紀田村も声を落とし答えた。

「その『甕に帰る狸』と言う民話はどう言った話なのですか」

「この地域の潟産み神話みたいな話です。要約するとカエルが月から砂丘に降り立ち、甕から呼び寄せたタヌキ達を使役し自然豊かな潟を造った。かなり端折りましたがこの民話は後半部分が欠落しています。僕は垂井さんが採取した『甕に帰る狸』の結末がどうしても知りたくて」

紀田村は一旦言葉を切り、垂井さんの様子を窺うと再び口を開いた。

「垂井さんは渦状紋文化を持つが残した民話だと話していました。でも一年程前かな。失われていた結末の手掛かを見つけたみたいな話もしていました。この話の事を知ってから自分でも信じられない程、知らなければ言う衝動が湧いてきて・・・」

「カエルとタヌキしか登場しない話なのか。此処からカエル男の情報を探る事は厳しいな。何か取っ掛かりが見つかると思ったのだが」

 突然話の腰を折るようにカタン、カチカチと音が聞こえる。全員が一斉に音のする方を見つめた。レーザーライターの作動音だった。レーザーライターからプリントが何枚も吐出されてきた。

「垂井さんの手記だ。こいつはかなり刺激的な内容だぞ」

貴重な発見に得意げな声を上げる古林。紀田村と次から次へとプリントアウトされてくる垂井さんの手記をリレーのように読み漁った。

 古林はモニターから手記の内容を知ったらしくプリントアウトが続いているさなか部屋の書架を覗き見ながらシュレーディンガーの時計がなどとぶつぶつ呟いていた。

 一通りプリントに目を通した紀田村は落胆の表情を浮かべ一言呟いた。

「ここには『甕に帰る狸』結末が書かれていない」

紀田村の全身から溢れるほどの失望を発信していた。たかが民話の事でこれほど落胆するものなのか。

 民話なんかより遥かにとんでもない内容なのにそっちは気にならないのか。垂井さんの手記に書かれている内容はまるで伝奇小説のようだった。

「手記の内容を簡単にまとめると垂井さんはこの町へ甕に入れられた為に迷い込んできたと言うことらしいな」

「少なくとも垂井さん本人はそう思っている。今起きている異変もこの手記の内容と関係あることが明らかになった。例のカエル石の記述もある」と古林は他人事のように口を挟んできた。

 何時もの事だが。古林は当事者意識や現状への危機感がまったく感じられない。冷徹な観測者を決め込んでいる。その事に無性に苛立つ。何十年も付き合っていてもだ。

「垂井さんの話はにわかには信じがたい。僕は『甕に帰る狸』は垂井さんの創作に思えるんです。それでも何故かこの話に自分でも信じられないほど惹かれ結末が知りたくて仕方なかった」と紀田村が誰に話すでもなく話し出した。

「『甕に帰る狸』の内容に関係する月とカエルは後漢書の伝説からだと思うし、タヌキが腹鼓を打つ事だって狸囃子伝説からだろうし。その辺を考えると創作かなと思えてしまうんですよ。でも作り話にしても文章や言葉からにじみ出る何か力みたいな物がこの手記からは痛いほど感じられる」

紀田村は話し終えると考え込むように手記に目を落とした。

「紀田村君すまんな。もう少し待ってくれ。まだ結末の翻訳を文章化出来ていないんだ。ようやく見つけた・・・のだが」と垂井さんはまた話し始めた。まだ会話は成立しそうだ。

「翻訳?やはり結末を見つけたんですね?翻訳はどの程度進んでいるのですか?史料は何だったのですか?」

紀田村は目を光らせ矢継ぎ早に質問する。

「ああ。多分あれが最後の欠片・・・」

垂井さんの言葉が止まる。唇を舐めぺちゃぺちゃと口を鳴らす。

「どうしたんだろうな。何だったかな・・・左に回っちゃ駄目なんだよこの町は・・・。灯台もと暗しとは良く言ったものだ。有ったのだよ手元に。渦の秘密の手掛かりを見つけ・・・」と垂井さんの話が途切れ、視線が遠くなる。何かぶつぶつと呟くと垂井さんは俯きそれ以上は話さなかった。

 手記にある渦状紋文化とかは本当に存在していたのか、それとも作り話なのか。垂井さんの現在の状態では筋道だって話を聞くことは無理だろう。仮に事実だろうが作り話だろうが番組のネタとしての興味は惹かれるものがある。創作から生まれ都市伝説に育ったと言うのもアリだ。と言うか此処まで首を突っ込んだのならこのネタで番組を制作したい。紀田村の話からも創作の類と思える。が何だろうこの手記から感じられる不思議なまでの訴求力は。これは実際に有った話だと思い込ませる力は何だろう。

 項にチリリと妙な気配を感じ、振り向くと古林が眉間に皺を刻み此方を睨んでいる。

「古林、お前何か話したいように見えるが」

ニタリと不気味な笑みを浮かべ古林は待ってましたとばかり話し始めた。

「結論から言うと・・・」と古林は鼻の穴を広げ偉そうな表情で間を置いた。

「ここは、この場は、垂井さんが存在している現実の中だ」

いきなり宣言するかのように言い出した古林の言葉に沈黙が訪れる。

 奴は突然何を言い出し始めたのだ。毎度の事ながら理解出来ない。古林は何の根拠も無く思い付きで持論を展開する。説明も解りづらい。だが、それらは大抵において核心を突いている事が多くそれがとても癪に障る。その上、今回は何時にもまして突飛な物言いだ。

「何の話を始めるつもりだ。何が言いたい。言っている意味がわからん」と腹立ち紛れ声を尖らす。

「分かり易く話そう。人は誰も主観を持っている。仲村は他人の主観を感じたり理解したりする事は出来るか?」

「出来るわけ無いだろう。同じ物を同時に見ても他人が感じている事など同意は出来ても説明されたって同じように理解したり感じたりする事など出来ない」

「分かっているじゃあないか。仮に他人の主観を見たり感じたりする事が出来るとしよう。それが出来れば他人と同じものを見て寸分違わず同じように感じる事は出来ると思うか?」との古林の問いに考え込み言葉に詰まる。さっきから質問攻めで苛つく。何処へ誘導しようとしている。今の状況を説明する為か。それにしたって主観がどう関係するのだ。問いへの答えを待たず古林は話し始めた。

「絶対無理だな。自分の主観がある以上同じような感じ方は出来ない。他人の主観を自分の主観で見ている訳だからな。人は真に客観的に物事をみる事は出来ないと思う。主観とは個人が生きてきた固有の体験に基づき観察し認識する事だと俺は考える。自分の主観を持って他人の現実に入り込む事が出来たらさぞ生理的に気持ち悪いだろうな。今、正に我々が感じているこの生理的な気分の悪さは他人の主観を体験させられている為だよ。仲村も感じているんだろう。自分の主観に他人の主観と言う異物が入り込むんだからな」

古林は今の異常な状況を説明しているらしい。紀田村は垂井さんの様子を気に掛けながら説明に頷いていた。解るのか今の説明で。此方の理解など気にせず古林は話を続ける。

「我々が存在しているこの世界では人の数だけ現実が重なり合ってこの世界が展開している。この世界の理、法則の中で個人の主観による視点でその個人固有の現実が生まれる。それは他人か見れば異界と表現してもいい。他人の現実は正に異界だ」

「古林はここが垂井さんの現実でその現実に我々が入り込んだと言いたいのか」

不敵な笑みを浮かべ古林は頷いた。癪に障るが今は取り敢えず古林に説明させるしか無さそうだ。講釈の行き着く先も気になる。

「古林、百万歩譲ってお前の考え通りだとしようじゃないか。じゃあ我々が垂井さんの現実に取り込まれ原因は何だ?」

「ネット環境が大きく関係していると考えている。ネットを介して垂井さんの書いたニュース記事をミズホが読む事により垂井さんと言う人物が認識され、更に俺や仲村が知ることとなり極めて少数だが共通認識が生成された。共通認識が持つ力によって垂井さんが存在する現実と俺達の現実の境が融和状態になり垂井さんが存在する現実へ侵入出来る領域がこの場に現れたのだと考えられる」と古林は一気に長台詞を言い終えると僅かに間を置き言葉を付け足す。

「垂井さんの存在する現実へアクセス出来たのはこの土地に働いている何らかの力とミズホの異能による複合的な現象ではないのかな」

矢継ぎ早に憶測を捲し立てられ頭が着いていけない。一旦話を止めようとするが古林の語りは勢い付き口が挟めない。

「この企画を持ち込んだ時言ったよな。カエル男が都市伝説ネタじゃ無い。現象自体が都市伝説ネタだと。ネット環境が現実に影響をおよぼし易いせいかも知れない。ネット上で言語を介した共通認識が他の現実に干渉し影響を与えたり新たな現実を創り出したりしている」と力強く古林は言葉を切った。

「お前の話を信じるならネット上で垂井さんのニュース記事を読む事により認識された垂井さんの主観が創り上げた現実の中に取り込まれた。と言うのがお前の考えている現状なのか」

自分達は垂井さん個人の現実の中にいる。今の垂井さんの病状は・・・。

「とすれば今の垂井さんはまともな状態じゃない。認知症を患っている。俺達は垂井さんの妄想を体験させられている事になる。カエルもタイムスリップしたような町並みも垂井さんが創り出した妄想だと言う事か」

古林の荒唐無稽な屁理屈を信じていいものかと一瞬考え込むが妙な説得力も感じている。それもいいだろう。言わせておけばいい。そんな事よりも手記の方が番組的にも映像的にも適している。古林の屁理屈より番組制作の方へ関心が動く。番組作り進めるにしてもこの状況から脱出しなければならない。どうやって。

再び古林が口を開き説明を聞けとばかりに声のトーンを上げる。解説にはまだまだ終わりが見えない。

「それは違うぞ。甕潟が存在する現実が在るんだよ」

 突然、古林は言葉を切り書架を見つめ考え込んでしまった。眉間に二筋の線が浮かび上がり、半開きの口角に涎が光っている。

「どうした?折角話を聞いてやっているんだ。締まりのない表情で黙るなよ。今の状況が分かっているのならどうやったらカエルだらけのこの町から抜け出られる?方法はあるのか。早く制作準備の段取りをしたい」

「訂正する。此処は亀田に存在した垂井さん現実が甕潟と言う土地に投影された場なんだ。ややこし事に亀田から持ち込んだ垂井さんの現実と甕潟が重なり合った状態の領域に取り込まれていると言うのが現状だ。やはりこの土地には確実に特異な力が働いている」

古林は自分に言い聞かせる様に話しているが何時迄も訳の分からない話に付き合ってはいられず口を出した。

「ややこしいのはお前の説明だよ。俺が分かり易く話を纏めてやる。垂井さん妄想だか幻想の世界に閉じ込められているって事だろう」

「その言い方は全然違うぞ。人は皆自分のリアルを生きている。妄想だろうが幻想も空想も現実の一つの形だよ。多様な現実がこの世界を形作っているんだ」

言葉尻を捕まえ反論する古林が腹立たしい。そんなことを知ってか知らずか古林はまだ講釈を続ける。

「この世界のこの場で展開するこの場の構造を理解しなければここから抜け出す解決策も見つからないだろう。我々はこの世界に生まれ、この世界の理の中で生きている。我々人間や動植物の遺伝子が多様性を求めるようにこの世界も常に現実の多様性を求めている。この世界で生まれたネットも同じだ。多様性を求めネットでも新たな現実が生まれ続けている」

「世界に意思があると言うのか」

「世界に意思のようなものが有るとは思わない。そこにあるのはこの世界の法則だけだ。水が高いところから低いところへ流れるようなものさ。そりゃまだ観測されていない真理や法則もあるのかも知れん。この世界では皆がそれぞれの自分の主観による視点を持ち自分の現実を生きている」と古林は言いたいことを言い終えたらしく満足した表情を浮かべるとパソコンに目を戻した。

 長々と話したくせに結局此方の問いに答えていない。大きな溜息が我知らず漏れる。全く今日何度目の溜息だろう。古林の説明を聞いても釈然としない。いつものことだが。どのみち此処にいても状況は動かない。再び同じ質問をする。

「で、どうすればこの現実とやらから抜け出せるんだ」

「まだ分からん。しかしこのパソコンはネットに繋がっている。繋がっている先の何処か分からない現実に手掛かりがあるかも知れん。ミズホ止めろ」

 古林の脇で凝った彫り物が施してある重厚な木製のポールハンガーを振り上げているミズホが見えた。パソコンをポールハンガーで殴り付けるつもりだったらしい。古林の声にミズホは悲しそうな表情を浮かべるとそろそろとポールハンガーを降ろしその場にしゃがみ込んだ。古林はそのパソコンで何処か分からない現実とやらに手掛かりを探しているようだ。

 やれやれ。古林の与太話を聞き終えると酷く疲れた。目は霞むし、周囲がぼやけて見える。疲れ目が酷い。お前の釈然としない説明が心身に悪い影響を及ぼしているのかも知れんと小林に愚痴を漏らした。それはお前の理解力と想像力が足りないからだと言い返してきたが反論する気力も無かった。

 側で古林との会話を聞いていた紀田村は心当たりがあるとばかりに口を開いた。

「その症状は白内障だと思います。それに貴方は不快な耳鳴りを感じたり、左の手や脚が動かし辛かったりしていませんか?」との言葉に三人同時頷く。

「ならそれは垂井さんと同じ症状ですよ。此処にいる我々は垂井さんの病状と同期しているようです。幸い認知症症状の影響はまだ受けてないみたいですが」

「外界から来た我々はオブザーバーみたいなポジションだと思っていたが。観測点にいるわけでは無いのか・・・だとしたら・・・」

古林がまた訳の解らない事を言い出している。

「僕達はどうなるのですか?もし僕等が垂井さんの現実に影響を受けているのであればかなり深刻な事態に陥ります」とすかさず紀田村は古林に問い掛ける。

 古林のとんでも無い理論の解釈で頭が混乱している上に今度は紀田村が切羽詰まった表情で危機を伝え始めている。

「深刻な事態とはどう言った・・・」と言い掛けると紀田村が慌てた様子で言葉を被せてきた。

「消えて行くんですよ。垂井さんが記憶しているものが。僕達が垂井さんの現実に影響を受けているとすれば消えて行くんですよ」

紀田村は消えると繰り返し言った。

「垂井さんは認知症なんですよ。認知症の中核症状の一つに記憶障害があります。個人差はありますが今の垂井さんは認知症の初期状態から急激に中期症状へ移行しているようで長期記憶にも障害が出始めています」

「長期記憶?」呟くように復唱し古林と目を合わせる。古林は説明を聞けと目で合図を送ってきた。

「記憶は大雑把に短期記憶と長期記憶に分類されます。認知症状の初期症状では短期記憶、数分から数日位の記憶を保持できなくなって行きます。それに対して長期記憶、数ヶ月から数十年位の記憶は比較的保たれやすい。症状の進行に伴いやがては長期記憶も消失していきます。皆さんも町の様子を見てきたでしょう。建物が消えたり、数十年前の光景が現れたり、過去の町の様子が見えたり。過去へタイムスリップしている訳では無かった。垂井さんの新しい記憶から、若しくは虫食い状に時系列に関係なく所々の記憶が徐々に消えて行っている結果だと・・・思われます」

「町中にいるカエル人間達も垂井さんの影響なのかな」と紀田村に問い掛ける。

「カエル人間の出現も垂井さんの妄想から起因している事は手記の内容からも明らかです」

「垂井さんにとっての現実にはあのカエル人間達が存在しているからだろうね」

モニターを見詰めたまま古林が口を挟んだ。聞き耳だけは立てているらしい。

「今はカエルのことはどうでもいい。垂井さんの現実に影響されているのであれば、もしかして・・・我々も・・・。認知症になって・・・」と紀田村に視線を送る。

「そうです。垂井さんに認識されているもの全てが我々を含めいずれなにもかも消失するのではないかと・・・」

言い終わると紀田村はごくりと口に溜まった唾を飲み込む音を立てる。

「それは消失ではなく我々の現実が垂井さんの現実に上書きされてしまうが正しい」と古林が言い直した。何もかもいずれ消える可能性が出てきているのに、他人の言葉を言い直している場合かと古林を睨みつけていると垂井さんが急に騒ぎ出した。車椅子を揺すり、口をパクパクとさせている。視線は上を見つめ恐怖に見開かれていた。紀田村が駆け寄り前輪が浮き上がり転倒しそうになる車椅子を支えた。

 頸に冷たさを感じ、手を伸ばすとヌルリとした感触。手に着いた液体を指先で擦ると糸を引きヌルヌルベタベタとした感触と共に刺激的な生臭い香りが立ち昇る。むかつく様な確信が胸で破裂した。確信が外れてくれとばかり恐る恐る天井を見上げる。案の定、拳程のカエルが一匹へばり付き涎を垂らしていた。大慌てでカエルの下から逃れる為に視線を逸らした一瞬の間に天井中が無数のカエルにびっしりと埋め尽くされ涎を垂らしていた。天井からは銀に光り垂れ下がる粘液の雨が振り注ぐ。恐怖と嫌悪で頭の中が沸騰し粘液の雨から逃れようと逃げ道を探し部屋中に目を泳がした隙にカエル達は消え部屋は元の様子に戻っていた。

 古林と紀田村が悲鳴を上げながら手を振り回し何かを払いのける動作をしていた。二人にも天井のカエルが見えているのだ。しかし今の天井にはカエルなどいない。踊っているような動作は傍から見ると滑稽なものだな。自分もさっきまでそうだったのだ。一方ミズホは緋色のお守り巾着を握りしめ何事か呟いていた。

「しっかりしろ」と大声を張り上げる。二人の動きが止まり天井を見上げていた。

「カエルが・・・」

紀田村が恐怖に目を見開き叫んでいる。

「カエルは消えたよ。今の光景は垂井さんが見ていたものなのか」と垂井さんの方を見ると何事も無かったかのように天井を見つめている。

「禍得るが来る」とミズホが騒ぎ出し始めた。ミズホは再びポールスタンドを持ち上げパソコンへ襲いかかろうとしていた。大慌てで古林はミズホの振り上げた腕を押さえるが、なんと身長が百九十五もある古林が押し負けていた。小柄でかなり細身のミズホの何処にそんな力があるのだろう。紀田村と一緒に古林の援護に向かった。

 足を踏み出すと襲ってきた目眩に足が踊った。足下がふらつき、平衡感覚が無い。上下の区別がつかない。視野が暗くなりブラックアウト状態に陥る。支えを探し手が空を彷徨う。

 頬に絨毯の感触を憶えたかと思うと床に積み上げられていた本が倒れて来た。いつの間にか転んでいたようだ。起き上がると部屋の様子がおかしい。まだ目眩が収まっていないのかと目を擦るが部屋中が白く濁り揺らめいて見える。

 霞始めた視界の中で書架に目をやると書架に並ぶ文献や書籍の一部がさらに霞みぼやけて見えている。曖昧な輪郭の本は陽炎のように揺らめき始めていた。揺らめく本を取ろうと手を伸ばす。届きそうで届かない。手に取れそうで取れない。もどかしく苛立ちが募る。そんな事をしているうちにその本は消散してしまった。書架には所々消えてしまった本が空白を作り書架に不規則な市松模様を作っていた。部屋にある物が消え掛かっている。これは垂井さんの現実の影響なのか。何れ自分達も消えてしまうのか。

 古林は立ち上がろうと書架にしがみついていた。色彩が失われ白く霞む室内で動く人影があった。霞、ぼやけているがあのシルエットはミズホだ。ミズホは頭上に箱のようなもの持ち上げると大きく振りかぶりフランス窓目掛け投げつけた。

 ミズホが投げつけた物は例のパソコンだった。ゆっくりとフランス窓へ向かって飛んで行った。霞む視界の中、筐体に付いている虹色のリンゴマークや宙に弧を描く電源コードがはっきと見えている。動きがコマ飛びのように見え時間に遅延でも生じているかのような動きをしている。パソコンの筐体から振り落とされたモニターは床に落下する寸前で静止しているように見えていた。

 筐体は放物線を描き窓へ緩やかに向かっていった。衝突寸前に窓ガラスが歪み一瞬渦が現れ、筐体は窓に溶け込むように霧散し、かなり遅れてガラスの砕ける音が響き渡った。

 白く濁った空間に穴が開く。反射的に開いた穴を目指し全員が走り出す。どういった訳かそこが逃げ道だと全員が思い込んでいた。

 紀田村は垂井さんの車椅子を押し、穴の開いた窓へ向かうが床に落ちたモニターケーブルやら積み上げられた書籍が車椅子の障害になり脱出に手間取っていた。

 積み上げられた書籍に足を取られながら、机に引っ掛かりながらも穴の開いた窓へ必死で向かう。しかし左半身が上手く動かせない。視野も白く惚け、弱々しい室内の光りが刺すように眩しく感じられる。窓までの数メートルの移動がままならない。窓に開いた穴が直ぐにでも消えてしまうかも知れないと本能的な恐怖が胸の底から止めどなく沸いてきていた。それでも殆ど這うようになんとか窓へ辿り着いた。

 振り向くと「ただしい・・・うず・を・・見付けろ」と垂井さんの叫ぶ声が聞こえる。まだ室内にいる紀田村と垂井さんが色彩を失いモノクロの陽炎に変化していた。垂井さんが何か叫んでいるが言葉には聞こえず耳にした事もない雑音にしか聞こえてこない。紀田村達は背後に現れた渦に飲み込まれ消えていった。考える間も無く体は突き動かされるよう転げながら窓へと飛び込んだ。身体の中が凍えるような冷気で満たされた。

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