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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第四章:泡沫の夢編

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69話:諦めるな

〜前回のあらすじ〜

突如として襲来し、アルス達の故郷"ファーレン王国"への侵攻を開始した悪名高き上級魔族───蠱毒のヴィリス。

アルス達含む国中の魔王討伐隊は王国の正規軍と共に国境付近で待ち伏せし迎え討つも、敵の圧倒的な力を前に部隊が半壊……あわやアルスも殺されそうになるも、ギリギリのところでカリヴァによる助けが間に合う。

そして遂に、勇者カリヴァと蠱毒のヴィリス────強者同士による一騎討ちが始まるのだった。

『キィンッ!』『ガキィッ!』『カァンッ!』


 白銀(しろがね)に光る一本の剣と、毒々しい外殻(がいかく)の両腕から突き出し(ヤイバ)交錯(こうさく)し────吹雪舞い散る白銀(はくぎん)の世界の中で火花散らし合う。

 勇者カリヴァと蠱毒(こどく)のヴィリス……互いに肉薄(にくはく)し、目にも()まらぬ速さで行われる強者達の激しい斬り合いは拮抗(きっこう)し合っていた。


 手数・身体能力共に敵に(おと)っているはずのカリヴァが今、上級魔族と互角(ごかく)に渡り合えている理由……それは恐らく彼が"理想を反映する魔法(イザニコス)"を()()()()()()()()()に切り替えたからだろう。


 ──────だが、彼の強みはそれだけではない。


 元より訓練施設(フェルシング孤児院)でトップの成績を誇っていた才覚(センス)に加え、彼独自の変幻自在(へんげんじざい)な剣技が合わさり……その実力は今や上級魔族に迫る(いき)にまで達していた。



「フン、探せばウジ虫の中にもマシなのはいるものだ……なッ!!」


 一騎討ちの最中、不意に繰り出されるヴィリスの()()()()たる尻尾による刺突(しとつ)()ぎ払い攻撃……

 それらを勇者(カリヴァ)は紙一重で(かわ)し、一気に敵の死角へ入り剣を構える。(わず)かな隙が生まれた今、先と同様に剣に強化魔法(イザニコス)を付与すれば硬い外殻ごと敵を()り倒せるはず────そんなアルスの期待通り、カリヴァは剣に魔力を込め思い切り振り抜いていく。



「そこだろォ!?」

「ぐッ!?」


 しかし刹那(せつな)血飛沫(ちしぶき)と共に上がった(うめ)きは親友の(もの)。なんと(ヴィリス)は視覚外からの斬撃を難なく回避し、逆に斬り付けたのだ。


 その時、アルスは心の底から恐怖した……蠱毒のヴィリスという存在(カイブツ)に。

 大勢の人々を一瞬で消滅させてしまう威力を持つ長距離魔法(ステュクス)、攻防共に自在かつ中距離全てを制圧する猛毒の水魔法(スティギア)、そしてたった今見せ付けられた天性の近接戦闘能力(センス)……

 遠・中・近、全ての間合いにおいて一切の隙がない圧倒的な強さは以前遭遇(そうぐう)した上級魔族とは比べものにならない程に強大で、全くと言って良い程に倒せるイメージが湧かなかったのだ。



「多少マシだろうが、所詮(しょせん)ウジ虫はウジ虫……これで終わりだ……!!」


 反撃を受け、鮮血(せんけつ)を流しながら膝を突く勇者(カリヴァ)……そんな彼に(ヴィリス)は嘲笑の言葉を浮かべながらトドメを刺そうと片腕に魔力を集中させる。

 期せずして生じた親友の窮地(ピンチ)にアルスは剣を構え、雪に足を取られつつも走り出す……正に()()()だった。


「カリヴァ!!」

「兄さんッ!!」


 静かさから一転、突如アルスの視界を(おお)い尽くしたのは(おびただ)しい攻撃魔法の嵐。

 敵だけでなく親友まで、全て()まれてしまった……思わず足が止まり絶句してしまう、その暴挙を行ったのは──────────



「やったか!?」

「作戦通り……これで手柄は俺達のもんだ」

討伐隊(ゲリラ)のクズ共もたまには役に立つもんだな」


 王国の正規部隊……今の今まで後方から高みの見物を決め込んでいた連中だった。奴らの口から出てくる下劣(げれつ)な言葉、味方の命を全く(かえり)みない非道さ……余りの醜悪(しゅうあく)さにアルスは拳を固く握り震わせる。



「落ち着けアルス……!俺なら大丈夫だ」


 しかしそんな彼を怒りの波から引き戻したのは聞き覚えのある優しい声……振り向けば、そこにはどういう理由(わけ)か大きな負傷もなく後退してきた親友(カリヴァ)の姿が見えた。


「それよりシオン、回復と解毒薬をありったけ頼む……どうやら奴の刃にも毒が付与されていたみたいだ」


 一瞬混乱するアルスだったが、苦しそうに肩を上下させる彼と……その手に持たれている、()()()()()()()()()()を見て全てを察する。

 恐らく彼は味方から闇討ちされる直前に、それまで身体強化に使用していた固有魔法(イザニコス)を盾か防具への魔法耐性強化に切り替えて難を逃れたのだろう。

 しかしそれ故に魔法の()()使()()()()に引っかかった……本来は攻撃を受けすぐにでも発動するはずだった自身への毒耐性付与が遅れ、結果現在(いま)の衰弱した状態に至ってしまったのだ。そんな彼にシオンは(ふところ)から取り出した解毒薬を手に走り出すが……



「チッ、雑魚共が……!少しは楽しんでたところに水差しやがって……!!【冥府の川流れ(ステュクス)】!!」


 直後に前方から感じたのは高出力の魔力反応……視線を向ければ、そこには手傷を負いながらも再び尻尾に魔力を集中させる(ヴィリス)の姿が。

 刹那(せつな)、アルスの脳内に(よみが)えりしは……先程の味方が一気に消滅した地獄絵図。同じく気付いたらしい周囲は(あわ)てて防御魔法を展開し出すが……


()せろ!!」


 次の瞬間、圧縮された水魔法が()ぎ払われたことで二度目の惨状(さんじょう)が再現されてしまう。

 血飛沫と共に舞い上がる悲鳴、飛び散る四肢、生きながら溶かされていく人々────展開された多くの防御魔法を()ち抜いた悪夢を前にかろうじて生き残ったのは、カリヴァの指示通りにその場に伏せたアルス達と一部の魔王討伐隊……そして後方で強固な防御魔法を展開していた正規軍だけだった。


「防いだのは褒めてやる……だがオレの前では無駄だ!【地獄の業火(インフェルノ)】!!」


 だがその命も所詮(しょせん)は水の泡……容赦(ようしゃ)なく襲い掛かる追撃の炎が正規兵達の防御魔法(分厚い水の壁)に触れた途端、弾けるような()()()と共に火炎が一気に燃え広がり、瞬く間に数多くの命が呑み込まれ消えていってしまう。

 後には……かろうじて生き延びながらも蜘蛛(クモ)の子を散らしたように逃亡を図る正規兵達と、その光景を前にして言葉を失う人々だけが残るのだった。



「逃げた……!?」「正規部隊がこんな、あっさり……」「俺達だけでどうしろってんだよ……」「もう無理だ……終わりだ」「嫌だ……死ぬのは嫌だ……ッ」「逃げなきゃ、早く……!」



 誰もが絶望していた。あれだけの戦力差があったにも関わらず全てがひっくり返された……上級魔族と自分達の間にある絶対的な、隔絶(かくぜつ)された力の差に。

 そして主戦力だった正規軍が戦場から離脱(りだつ)した以上、最早逆転の目はない……後はただ、強者によって一方的に蹂躙(じゅうりん)されるのを待つだけ。当然残された者達もまた、自分達も生き残ろうと雪の中を必死に(もが)き逃げようとする。





挿絵(By みてみん)



(あきら)めるな!!」


 しかし、その運命にただ一人……(あらが)う者がいた。


「皆、立つんだ!!理不尽(りふじん)に押し潰されて絶望するんじゃない!!現実に立ち向かえ!!」


 勇者カリヴァ────シオンからの回復魔法(フロル・ヒール)と解毒薬により(ようや)く動けるようになった彼は再び剣を構え、果敢(かかん)に目の前の凶悪な魔物へと(いど)んでいく。


「どんなにみっともなくても、(どろ)(まみ)れようと、俺は最後まで諦めない!!目の前の理不尽に、この世界に一矢報(いっしむく)いてやる!!それが……俺の生き方だ!!」


 その姿は、アルスが幼い頃に読んだ英雄譚(えいゆうたん)の主人公……"本当の意味での勇者"そのものだった。

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