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Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第三章:アミナス教国編

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64話:鏡の剣に映るのは

〜前回のあらすじ〜

必死の思いで、その場にいた全員の力でなんとか倒した魔王……だが死に絶えたと思っていた奴は、実は本体ではなかった。

復活し第三の形態へと移行した魔王の手によって、先ず巫女が倒れ……その後は均衡が一気に崩れ味方が一人、また一人と倒れていき────遂にはアルスも片腕を失ってしまう。

絶望的な状況の中、不意に散り散りになっていたフィルビーが現れるが……次の瞬間には彼女も魔王の凶刃の餌食になってしまい、勇者アルスの中で何がふつりと切れるのだった。


※作者からお願い

出来ればこの話は、一話から順に追って頂いた上で読んでほしいです。

 挿絵(By みてみん)


 『ドゴォッッッッ!!!』


 自身が引き起こした惨劇(さんげき)を前に観察でもしてるかの様にじっと立ち尽くしていた樹木の騎兵────魔王ハイル……

 気が付けば、アルスは奴の頭部を思い切りに殴り付けていた。



「グッ……!ナンダ、今の力は……!?」

「……やる」

「ん?」


 吹っ飛ばされながらも複数生やした脚部の樹木で大地に根を張るようにして踏ん張る魔王……ダメージは少ない様だが、ここまで一方的な殺戮(さつりく)を展開してきた奴の余裕を少しは(うば)えたようだ。


「殺してやる……ッ!!」


 ──────それでも一度アルスの中に生じた激情が収まることはない。


 大木(たいぼく)に打ち付けられたことにより苦悶(くもん)の表情を浮かべて(うずくま)る自身の幼馴染(おさななじみ)、自身に初めて真剣に告白してくれた女の子が衝撃(ショック)で気を失っている姿、そして頭から血を流し反応がない……柔らかな雰囲気と笑顔で何度も自分達(パーティ)(いや)してくれた仲間の少女。


「許さない……お前だけはッ!!」


 かつてカリヴァやシオンと散り散りになって安否が分からなくなった時とは違う。明確に目の前で、大切な人達が傷付けられた。

 その事実は、光景は、勇者の心に強烈な傷(トラウマ)を植え付け……それはそのまま怒りの感情へと変貌(へんぼう)していく。

 怒りは憎しみに、憎しみは殺意に、内に生じた初めての激情に駆られるがままに勇者アルスは魔王目掛け襲い掛かるのだった。



「よせアルス!!奴に直接触れたら……」


 生命力(いのち)()われる────不意に聞こえた騎士団長(ペルデール)の警告に構わず勇者はもう一度(こぶし)を固く握り締める。

 触れた相手の生命力を奪う奴固有の能力も結局は魔法を媒介(ばいかい)にして引き起こされる現象……ならば()()()()()()()()


「【地獄の鋼禍(デヴォル・ジリエーザ)】……!!」


 呪文と共に勇者の腕に張り(めぐ)らされたのは、かつて()()()()()()()()と戦った際にも使用した"魔力耐性の高い金属を生み出す"魔法……まだ黒い上級魔族(ザヴォート)のように自在な形に加工して武器や防具を生み出せはしないものの、身体の表面に(まと)わせるくらいなら出来る。

 黒鉄(くろがね)と化したこの拳は、どんな魔法であっても(はば)むことは出来ない──────────


「ッッ!!待て、なんダそれは……!!」


 更にもう一発、殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。

 鋼鉄(こうてつ)(ごと)く硬い樹木の皮膚(ひふ)……それでも今殴っているのは確かに生き物なのだと肌で感じた。

 剣で切断するのとは異なる、決して慣れることは無さそうな気持ち悪い感覚だ。


「何故、()が戻っている……!?」


 それでもアルスは殴るのを()めない。

 ()()渾身(こんしん)の力を込めて、怒りのままに猛攻(ラッシュ)を仕掛けていく……が、そんな殺意を込めた攻撃も魔王が前方に構えた樹木の盾によって阻まれてしまう。


「チッ、まるで(ケモノ)だな……!何を怒り狂ってるんだ……!?」

「ふざけるな……」

「ッ!!」

「お前がッッ!俺の仲間をッッ!!」

「まさか貴様──────そうか、そういうことか……!!ククッこれは面白い……!!」


 変形し、少しずつ欠けていく盾の隙間から奴が見せた感情は困惑の色……何に怒っているのかまるで理解出来ないといった反応は青年の感情をより刺激し、それに対し魔王は感情を喜びの色に変えて語り掛けてくる。


「"仲間"とか言ったな?私が壊した人形(にんぎょう)の中にお前の大切な者でもいたか?だがお前も我が同胞を殺したろうに、随分(ずいぶん)と都合の良い脳味噌(のうみそ)をしてるなァ?自分達が()るのは良くて、殺られるのは許せないと?」

「黙れ……!黙れェッ!!」

「それともまさか自分達を()()の側に置いた英雄ゴッコに()いしれているのか?目を覚ませ、貴様は今私に殺意を向けているが……(たが)いにやってる事は同じではないのか?」

「同じだと……!?」


 やがて持ち前の再生能力で復活させた巨大な盾を今度は質量武器の様に振り下ろす魔王────奴から発された嘲笑(あざわら)うような言葉と攻撃を真っ向から受け止め、勇者は内に抱いていた感情を爆発させる。



「仲間を()()みたいに使うお前と、俺の想いが……同じなわけないだろうッ!!」



 開戦当初、魔王は周囲にいた自分の仲間(魔族達)人類連合軍(こちら)の攻撃を防ぐ肉壁のように(あつか)いながら神秘の森に迫って来ていた。

 先程も同じ……自身への集中攻撃を分散するように数多くの魔物を生み出し続けた。

 その様に冷酷(れいこく)な選択が出来る奴に所詮(しょせん)は同じ群れの鳥だと嘲笑(あざわら)われた事実は、アルスにとって耐え難い……反吐(へど)が出るような想いだった。


「魔王ハイル!!仲間を、自分の周りさえ平然(へいぜん)と傷付けるお前を……俺は絶対許さない!!」

「ハァ……これだから視野の狭い、頭を()()(いじ)られた人間モドキは嫌いなんだ。お前のように感情でしか判断出来ない(おろ)か者がいるから戦いはいつまでも終わらないのだろうな……やはり絶滅(ぜつめつ)させるべきか?」

「戦いを仕掛けてるのはお前達(魔族)の方だろう!!お前は、こんな虐殺(ぎゃくさつ)を重ねて……ッ仲間にも犠牲(ぎせい)を出して……何も思わないのか!?」

「思わない。もう何度もあった事だからな……それにお前、何か()()()()をしているな?」


 何を言おうが数百年……魔王の指示の下に人類が殺されてきた事実は変わらない。これ以上は平行線、時間の無駄としてアルスは自身を押し潰さんとする盾を払い除け、怒りを加速させた一撃を撃ち放つ。

 刹那(せつな)、呆れるような反応を見せた魔王はその姿を消し……



「──────先に仕掛けてきたのは人間(おまえたち)の方だ」



 次の瞬間、背後からの奴の言葉と共に衝撃(しょうげき)が勇者の背中を(つらぬ)いた。

 口から血反吐(ちへど)を吐いて倒れると同時に身体が()()(から)み付かれ拘束されていく。


「ほゥ……まだ生きてるか……やはりお前、()だな?」


 魔王の樹木だ。このままでは生命力を吸われる────上から投げ掛けられる言葉の意味を深く咀嚼(そしゃく)している暇はなかった。

 アルスは全身に"地獄の鋼禍(デヴォル・ジリエーザ)"を張り巡らせた上で拘束を強引に引き千切り突破する……その先に待っていたのは魔樹の剣を振り下ろす魔王の姿。


「ぐ……ッ!!」


 直後、(にぶ)い音が鳴ると同時にまた身体に激痛が走る。咄嗟(とっさ)に防御に出した腕が折られたのだ。

 黒鉄化した身体の上からでも(すさ)まじい威力……だが攻撃を防ぐこと自体は出来た。


「うおおおオオオオオオオオッッッ!!!」


 折られた腕を痛みも構わず振り払い、奴を()()らせる────その隙にアルスは咆哮(ほうこう)を上げ、まだ動く()()()()()()を握る。

 狙うは魔王の頭部、硬い樹木の(かぶと)で覆われた"結晶(けっしょう)"という名の心臓部位……アレさえ破壊すれば戦いは終わる。

 そんな強い想いを乗せて、勇者アルスは鋭利(えいり)な形状へと変質させた漆黒の拳を奴に向け撃ち放つのだった。



「────────そこまでだ」



 ……が、直前に視界の(はし)に映ったのは鏡のように光る銀色の剣。刹那、衝撃を受けてアルスは後方へと弾かれてしまう。


「……?」


 何とか体勢を立て直し、視線を上げた先にいたのは……全身に亀裂(きれつ)が入った鎧とボロボロな黒血(こっけつ)色の外套(がいとう)を纏った異様な騎士の姿。

 城塞都市(じょうさいとし)クヴィスリングを襲った正体不明の敵の情報と一致(いっち)する風貌(ふうぼう)だが……それを前にしてアルスが最初に覚えたのは()()()だった。

 初めて出会う敵、知っている(はず)など無いというのにどこか感じる懐かしさ……不思議な感覚に対し、思わず強烈な違和感に襲われる。


 ────そんな彼に呼応(こおう)するかのように、突如現れた黒血の騎士もまた……勇者をじっと見つめていた。



「お前か……何の用だ?」


 不意に二人の間に生まれた沈黙を破ったのは魔王ハイル……(いぶか)しむような奴の言葉に、僅かな時間動きを止めていた騎士は鎧の中からくぐもった声を出す。


「残念ながら時間切れです……直ちに撤退(てったい)を、魔王様」

「何を馬鹿な事を……!!巫女(みこ)を倒した今、勝利は最早目前なのだぞ」

「お(たわむ)れが過ぎたようですね……間も無く空の部隊は全滅し、敵の神獣部隊(しんじゅうぶたい)此処(ここ)に向かってきます……いくら貴方様(あなたさま)とはいえ、状況は少々厳しいかと」

「我が騎士()()()()よ、戦力差など私にとってあってないようなものだ……理解(わか)っているだろう?」

「お言葉ですが、この場にはスーヤ騎士団の団長(ペルデール)の姿もあります……巫女との戦いで消耗(しょうもう)した今の状態で"生命創造の魔法(ジェネシス・ノヴァ)"を使い魔力を更に減らせば、万が一が考えられます」

「……」

「ここはお引きを……後の事は私めにお任せください」

「……お前がそこまで言うのであれば、信じるとしよう」


 やがて口論の末、()に落ちない様子を見せながらも最終的には黒血騎士からの進言を聞い入れ言葉の(ほこ)を収める魔王……会話から察するに、両者はどうやら主従関係のようだ。

 どういう訳か魔王から大きな信頼を得ている様子の正体不明の騎士……先程感じた違和感といい素性が気になるが、今はそれについて考えてる場合じゃない。この戦いで多くの犠牲が出たというのに、このままでは魔王に逃げられてしまう。



「──────だがせめて、巫女は頂いていくぞ」



 そう思った直後の事だった。不意に身体から樹木を伸ばし倒れている巫女(レイア)の身体を引き寄せる魔王……奴の腕に抱かれた彼女は気を失ってしまったのか、抵抗する様子もなく静かに目を(つむ)っていた。


「させん!!」

「【天の糸(ウラノスレッド)】!!」


 そこで前へ出たのは、それまで沈黙を保っていた騎士団長ペルデール────彼に続き魔王の逃亡を阻止(そし)せんとアルスは"上級魔族シルクの糸魔法"を撃ち放つ。

 刹那、巫女を守護する立場の騎士団長と同様に、魔王を守らんと黒血騎士が立ち塞がり……一瞬で糸を切り払った末にペルデールと剣を交えていく。


「これがスーヤ騎士団、団長の実力……!!(うわさ)には聞いていたがこれ程とはな……流石(さすが)だ」


 しかし勝負は一瞬、神技(しんぎ)の如き剣術を見せた騎士団長が敵の制圧に成功。そしてトドメとばかりに(あか)く色を変えた(ヤイバ)を振り下ろすが……


「だが残念だったな……生憎(あいにく)、俺の使命(ジョブ)は剣士じゃない──────【この世界に希望を(クリエ・ルピス)】」


 (すんで)の所で水の魔力を展開した奴の防御が間に合ってしまう。

 そして次の瞬間、呪文と同時に騎士に触れていた剣が粉々(こなごな)に砕け散り……即座に破片(はへん)が武器状に変質して騎士団長に襲い掛かった。それらに対し彼は咄嗟に後方へ飛び紙一重で回避していく。


「ぐううぅゥ……ッ!!」


 ──────が、その間に黒血騎士は此方に接近し剣を一振り……魔王に次ぐ速さの攻撃に回避間に合わず、アルスは漆黒の身体を(もっ)て刃を受ける。

 瞬間、全身を(するど)い激痛に貫かれ膝を突いてしまう。まるで身体中を剣で滅多刺(めったざ)しにされたような感覚は到底耐えられるものではなく……勇者の全身を(おお)っていた黒鉄はボロボロと()がれ落ちていくのだった。



「赤髪のお前……巫女(この女)を救いたければ追ってくるがいい……我が城で待っているぞ」


 何も出来ず全身から流血してその場に(くず)れる勇者……そんな彼に魔王は嘲笑うかのような言葉を残し、森の深淵(しんえん)へと去って行った。後に残ったのは(むな)しさと強い敗北感……ただそれだけ。

 黒鉄の魔法も解除されて元の姿に戻り、完全な無防備となった自身にはもう出来る事はない。間も無く、()()()()()にトドメを刺されて生を終えるだろう。



「……アル、ス……?」



 しかし、そんな勇者の諦観(ていかん)とは裏腹に攻撃は来なかった。

 不意に聞こえた自身の名を呼ぶ声……それが発されたのは間違いなく前方の敵から。

 見上げれば、奴は……黒血の騎士はまるで時間が止まったかのように動きを止めていた。


「グッ……!!何ダ、コレは……キエロ……ッ!!」


 直後、奴は(うずくま)るように頭を抱えて全身から魔力を膨張(ぼうちょう)させる──────まずい。

 騎士団長が剣を失い、周囲にもまともに動ける者がいない今……大技を放たれれば間違いなく甚大(じんだい)な被害が出る。後ろには、まだ動けない自分の仲間もいる。


「全員ここから離れろ!!」


 もう、誰にも傷付いてほしくない。

 騎士団長が声を上げた時……アルスが思ったのはただ、それだけだった。



『ドゴォッッッ!!!』


 味方に放たれようとしていた脅威(きょうい)を止めるため、無我夢中(むがむちゅう)で出した渾身の一撃……それは今まさに、全方位への攻撃を放たんとした敵を勢いよく後方へとぶっ飛ばした。

 なんとか味方を守ることが出来たようだ。





「おい……なんだよアレ……」

「どういうこと……?」


 ……だがその時、周りから聞こえたのは助かった事による安堵(あんど)でも、ましてや感謝や声援(せいえん)でもない()()()()


「強すぎると思ったけど……まさか、こんな……」

「何が起こってんだ……!?」

「ヒィ……ッッ」


 視線を感じる。それは今し方味方の命を奪おうとした敵ではない……自身に向けられたものだった。

 その時、アルスは気付いてしまった。激情に駆られるあまり、我を忘れて全力を出したあまり、力の制御(せいぎょ)を忘れ……()()()()()()()()()()をしてしまったと。


「アレは……もしかして……」

「見間違えじゃねぇよな……!?前に()に行った時に俺達が見た……」

「間違いないよ……あの見た目……ッ」


 同時に、薄々さっきから感じていた()()()()()の正体に気が付く。

 たった一人で魔王と戦っていたにも関わらず、騎士団長含めて誰も加勢に来なかった理由……動かなかったのではない。動けなかったのだ。

 その時点で自分は普通なら()()()()()()()()()をしてしまっていたから。



「それが……お前の()()()姿()か」


 困惑・動揺・緊張……静寂(せいじゃく)な森に混乱がじわじわと広がっていく中、大木(たいぼく)に背にした黒血騎士はゆっくりと身を起こし剣を構え直す。

 奴が持っている鏡のように輝く銀色の剣……不意にそこに映し出されたのは仮初(かりそめ)である表の世界を反転させた()()()姿()

 そこに映っていたのは……



 映されて いた の  は ・・・










 挿絵(By みてみん)



「アイツは……()()()()()だ……ッ」


 ──────(みにく)い、異形(いぎょう)怪物(カイブツ)と化した自身の本当の姿だった。

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本当に期待を裏切らない作品だと痛感しました。手に汗握るような熱も感じれば心が震えるような絶望だって感じれる。無料でこれが読める今の時代があまりにも贅沢だと思っちゃいましたよ。 作り込まれた話の中で毎話…
緊張感ある戦いの末に待っていた、根底からひっくり返すようなどんでん返し。久々に声を出して驚かされました。毎話しっかり見せ場を作った上で高くなるハードルを超えてくる手腕に、同じ創作者として見事と言わせて…
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