表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Truth Of Legend  作者: 座敷猫
第三章:アミナス教国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/77

62話:大戦の幕引き

〜前回のあらすじ〜

生命を生み出す魔法を繰り出す魔王────圧倒的な物量差を前にアルス達は追い詰められるが、ギリギリのところでレヴィン達やグラシアによって救われた味方達が応援に駆け付けた事で状況が一変する。

レーニスの助言により、レヴィンの膨大な魔力付与をもって発動された上級魔法"サンダーストーム"は魔王諸共生み出された魔族達を一網打尽にし、反撃の一手を作る。

味方の総攻撃と巫女の一撃により真っ二つとなった魔王……その中からは壊れた"結晶"が出てきたのだった。

 その瞬間、世界の鼓動(こどう)は止まった。

 まるでそれまでの騒乱(そうらん)が嘘だったかのように……神秘の森────エリュシオン全体が静寂(せいじゃく)に包まれる。

 それ程までにアルス達の、人類連合軍の()()()()()()()()()は信じ難いものだった。


 "魔王ハイル"

 永年に渡り大陸に侵攻を続け、多くの人々を無慈悲(むじひ)(ほうむ)ってきた魔王軍の(おさ)にして、魔界で最初に生まれた始祖(しそ)の魔物。

 人々は息を()んでいた。大陸に生きる自分達にとって絶対的な恐怖の象徴だった、(おびただ)しい数の"死"を撒き散らす厄災(やくさい)的存在……

 ──────そんな魔王の、(むくろ)と化した姿に。



「し、死んだ……?」

「やった……のか……?」



 しかし奴の死が事実である事は、真っ二つに分かれた巨大な木竜……その深淵(しんえん)から出てきた()()()()()()()()如実(にょじつ)に表していた。

 どれだけのダメージを与えても無限に再生する"大魔族"の命の(みなもと)であるソレは、今は役目を失ったかのように輝きを失っている。



「やった……んだよな……?」

「うん……多分……」



 更には今し方まで木竜から放たれていた強大かつ禍々(まがまが)しい魔力も、気付けば(あるじ)を失ったかのように森全体に放散しつつあった。

 魔力を持つ生き物の生命活動が停止した後に起こる現象……それらを受けて人々の間に(ようや)く実感が湧いてきたのか、少しずつ歓喜の声が上がり出し……



「勝った……勝った!!!」

「やったぁ!!」

「人類に栄光あれ!!」

「スーヤ様、万歳(バンザイ)!!!」



 ──────やがて場に上がったのは一際大きな喝采(かっさい)

 それも当然だ、人類はたった今この時を(もっ)て……長年の悲願(ひがん)を果たしたのだから。


 魔族が大陸に現れ、種族の存亡(そんぼう)を賭けた大戦争が始まってから(すで)に数百年……

 戦いの長期化により数多くの英雄達が散って()き、特にここ十数年に至っては魔王軍による一方的な侵略と虐殺(ぎゃくさつ)が続いていた。

 そんな人類にとって悪夢のような日々が、今日この日……魔族の頂点に君臨する魔王を討ち取った事によっていよいよ終結を迎えるのだ。



「ふぅ……」


 周囲にいる何人かの味方と同様、一気に身体の力が抜けた勇者アルスは地面に腰を下ろし……一息()いてこれからの動向に思いを()せていく。

 "生命を生み出す魔法(ジェネシス・ノヴァ)"を持つ魔王が討たれた事によって、今後間違いなく魔王軍の勢いは落ちるだろう。

 今回の総力戦で疲弊(ひへい)した分すぐには難しいだろうが、いずれは大陸北部を支配している他の魔族を倒し故郷(こきょう)に帰れる日が来るかもしれない。



「皆さん……お疲れ様でした……!」


 そんな風に希望を胸に抱いていた時、不意に上空から透き通るように綺麗(きれい)な声が森林に響き渡る──────巫女(みこ)"レイア"の(もの)だ。

 魔王に直接的なトドメを刺した彼女は天使さながらゆっくりと地上に舞い降り……慈愛(じあい)に満ちた表情で、場にいる者達全員にお礼を述べた。

 その華奢(きゃしゃ)な身体からは、先程まで放たれていた奇跡の力は一欠片(ひとかけら)さえもない。流石の巫女といえど、魔王との死闘で完全に力を使い果たしたようだ。

 今まで自分達味方を守ってくれたこの大戦最大の功労者(こうろうしゃ)……そんな彼女を(いた)わるように人々は駆け寄り、彼女もまた人々に笑顔を返して言葉を続ける。



「これでやっと、やっと……





 挿絵(By みてみん)





 ───────────────え……?」



『ズシャッ……』


 突然の事態(じたい)に頭が真っ白になった。(にぎ)わいから一転、世界の時間が再び止まる。

 人々は息を呑んだ。呆然(ぼうぜん)とした表情を浮かべる巫女……その腹部から鋭利(えいり)な何かが突き出て、血が(したた)り落ちる光景に。

 刹那(せつな)、巫女が大地に倒れ伏せると共に()()()()()が姿を見せる。



「どうやら本当に力を使い切ったようだな……再生が追いついてないぞ?」


 "魔王ハイル"──────見る見る内に樹木で構成した姿は膨れ上がり……開戦当初とも、先程の木竜とも異なる新たな形態へと姿を変えていく。

 右腕が今し方巫女を突き刺した鋭利な剣状、左腕を盾状に変質させ、下半身が節足(せっそく)動物を思わせるような無数の樹木で構成された"魔樹の騎兵"とでも言うような異形の様相(ようそう)……

 その頭部の奥底では、()()()()()()が輝きを放っていた。



「な……んで……?確かに……結晶(コア)、を……」

「確かにな、先程の貴様の攻撃で死んでしまった……我が忠実(ちゅうじつ)なる眷属(けんぞく)"()()()()()()"の結晶(コア)がな……おかげでもう、ろくに周囲の魔樹を操れん」

「何を……」

「クク……冥土(めいど)の土産に一つ良い情報(こと)を教えてやろう……今貴様が倒した竜も、過去の戦いで我らが使役(しえき)した貴様らが"大魔獣"と呼ぶ存在も、元を辿(たど)れば全て我が命を分け与えた分身のようなもの……当然、それぞれ我が自然の力を凝縮(ぎょうしゅく)した(コア)を持っている」

「なん、ですって……?」

「しかし大したものだ……これで私は強みの"魔樹魔法"をほぼ失った。復元(ふくげん)しようにもここまで完全に破壊されてしまっては長い年月を要するだろう……だがな」


 確実に仕留めたと思われていた宿敵の復活に動揺を隠せない様子の巫女……そんな彼女に魔王は嘲笑(あざわら)う様子を見せつつ語り掛けるが、その言葉の意味の大半が勇者には理解し切れない。

 ただ少し、アルスにも理解出来たのは……たった今倒した木竜は魔王ハイルの本体ではないということ。そして……


「その程度の代償(だいしょう)、貴様を殺せるのであれば安いものだ……!!」


 ──────この戦争は、人類の敗北であるという残酷な事実だけ。

 血を流し(うめ)く巫女に、魔王は右腕に生成した剣を突き付けて嘲笑(ちょうしょう)を続ける。



「なァ……今どんな気持ちなんだ?殺したい程に憎んでいる相手に、逆に致命傷(ちめいしょう)を負わされた気分は?」

「く……ッ!」

「その傷……()()()とは立場が真逆だな……痛いか?苦しいか?それとも所詮(しょせん)()()()()でしかないその身体では痛みを感じる事も出来ないか?」

「うる……さい……だま……れ……ッ!!」

「……クックック……クヒャーッハッハッハッハッ!!!!」


 やがて不気味な笑い声と共に剣が振り上げられる……が大陸中で敬愛されるスーヤ教の巫女の危機に、アルス含め動ける者は誰一人としていない。

 魔王に対する恐怖からだけではない。神秘の森での数多くの魔族との連戦、瘴気(しょうき)の濃い魔樹の森での魔王との戦い……これまで積み重なってきた疲労が、常に死と隣り合わせの環境が、人々を肉体的・精神的に限界まで追い詰め、立ち上がるための足を奪ったのだ。



「まぁいい……精々(せいぜい)あの世で自らの(おろ)かしさを悔いているがいい……じゃあな」








『ガキィッ!!』


 ──────だがそこに、たった一人だけ巫女と魔王の間に入り……彼女を救う者の姿が。



「よくも……()()()()を……!!」


 "騎士団長ペルデール"……彼はこれまでにない、強い怒りを(にじ)ませた声色で凶刃(きょうじん)を受け止め、魔王ハイルと対峙(たいじ)していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
      
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ