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第28話

Another Story

  綾野 祐介

第28話


「いくらデータが揃っても決定的な何かが足

りない気がするんです。」


「確かにそうかも知れないな。もっと詳しく

話をしておくべきだった。恩田君、なんとか

もう一度あの場所に行くことはできないもの

だろうか。あの者の知識は他に代え難い。も

う一度話をしたい。」


 新山教授は苦悩の表情を浮かべた。恩田幸

二郎も同様の表情を浮かべている。杉江統一

と三人で進めていることが行き詰っているか

らだ。


「綾野先生にそれとなく話をしてみたのです

が、どうもあの時の孔は完全に塞がっている

ようです。地中をスキャンしたら空洞がなく

なっていたとの報告があったそうです。何か

別の方法を考える必要がありそうですね。」


 基本的なデータは揃っている。動物実験で

の結果は良好だった。しかし持続しない。個

体は持って1週間だった。決定的に何かが足

りない。それが何なのか判らない。そういっ

た状況が続いていた。


 失敗は許されない。


「桂田君と綾野先生に全て打ち明けて協力を

仰ごう。」


 新山教授は決断した。


「綾野先生、桂田君。君たちに協力してもら

いたいことがあるんだ。」


 新山教授はいきなり切り出した。二人はな

ぜ呼ばれたのか理由は聞かされていない。


「どうされたのですか、急に。」


 新山教授の部屋には他に恩田助教授と杉江

がいるだけだ。桂田は琵琶湖大学付属病院心

理学病棟で発見されて以来、自宅には戻らず

綾野のアパートに一緒に居る。どこかに行方

不明にならないよう監視の意味も込めてだ。


「私と恩田君、杉江君がここのところずっと

関わってきたある実験について協力を請いた

いのだよ。」


「ある実験?」


「そうだ。」


 新山教授は話しにくそうだったので恩田が

あとを引き継いだ。


「私が話ましょう。私の妻が教授の娘さんな

のはご存じですよね。」


 それは綾野も桂田も知っていた。


「その妻、沙織というのですが、沙織がある

病に倒れたのがちょうど二年くらい前のこと

です。」

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