第27話
Another Story
綾野 祐介
第27話
「私のミスとして処理されるのですから、ど
うしてくれるんですか?」
相馬の怒りはもっともだった。いつのまに
か全員居なくなるわ、桂田という居るはずの
ない人間が入り込んでいるわ、案内していた
相馬の失態だと処断されても仕方ないことな
のだろう。
「それは所長に私から話しておくから心配し
なくても大丈夫だと思う。迷惑掛けたね。」
相馬は恩田の言葉を聞いても納得がいかな
い様子だった。
「私からもとりなしておくから、本当にすま
ない。それと私はこのままここを出ることに
なったから。荷物は後で大学の方へ送っても
らえるとありがたいな。ほとんど本ばかりだ
が。」
綾野にまでそう言われて渋々納得した相馬
だった。
「わかりました。綾野先生宛でよろしいです
ね。」
「お願いするよ、かなり重要な文献も含まれ
ているけど量が量だけに持ち帰れないんで
ね。」
恩田、綾野、岡本浩太、桂田の四人は連れ
だって琵琶湖大学付属病院心理学研究所を後
にした。
「恩田君は綾野君を見つけたようだね。それ
と桂田という生徒も一緒に連れ帰るようだ。」
「えっ、桂田って桂田利明のことですか?」
「そうだ、君も知ってる、あの桂田君だよ。
桂田利明は行方不明だと聞いていたので杉
江統一は驚いた。綾野先生を探しに行ったは
ずが本人どころか桂田まで一度に見つかると
は。
「新山教授、これで上手くいけばいよいよ完
成できるかも知れませんね。」
「まあ多少の希望が出てきた、とうところだ
な。特にその桂田という生徒が見つかったこ
とが大きいかもしれない。綾野先生では不確
定要素が多すぎてサンプルにならない可能性
もあるからな。」
綾野も桂田もただのサンプル、というのが
二人の共通認識のようだ。
「しかし、どうも私たちのやっていることに
気が付いている者がいるらしい。櫻宮所長が
何らかの情報を得ていて、こちらの結果をよ
こせと言ったようだ。リーク元は君ではない
だろうね。」
「もっ、もちろんですよ、教授。僕がそんな
ことする訳ないじゃないですか。バレたら自
分の身も危ないのは重々判ってますから。」
「それもそうだ、疑って悪かった。君の協力
には感謝しているよ。私や恩田君だけでは、
到底ここまで進まなかっただろう。君が専属
で見ていてくれたおかげだ、感謝している。」
不意に頭を下げられて杉江は恐縮してしま
った。
「いえいえ、僕なんて本当に留守番していた
だけですから。でも教授、成功するといいで
すね。心からそう想います。」
「ありがとう、あと少しだ、力を貸してくれ
たまえ。」
普段の新山教授からは想像もできないこと
に手を差し伸べられた杉江は恐る恐る手を差
出して握手したのだった。




