↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境のウンディーネさん  作者: みずのひかり
68/166

『ウンディーネさんと迷宮都市 ②』

 迷宮都市と呼ばれるだけあって、アルファルムンの道はとても複雑です。

 大きな通りは少なく、逆に曲がり角ばかりあるので、ベリアさんは小回りの利く小さな馬車に乗せられました。


 わたしはシュヴァルツさんに跨り、馬車の後ろをついていくことに。


 目的地は、ベリアさんのお仲間さんが捕らえられている牢獄。

 この牢獄は正門とは真逆に位置する場所にあるそうなので、かなり距離があると思われます。


 まあ、アルファルムンの町は王都に匹敵する広さですからね。


 さらに、この迷路のような道。

 到着までには、時間が掛かることでしょう。


 ちなみにアルファルムンの町の門は2つしか存在しません。

 南にある正門と、北にある裏門。


 裏門の先は深淵の谷(アビスバレー)に続いているので、わたしは何度が通ったことがあります。

 もちろん、ゲーム内でお話ですが。


 それはさておき。

 アルファルムンの町の周囲は高い壁で覆われているので、そこを登って外に出るのは、まず不可能とのこと。


 なら、どうやってベリアさんは脱獄し、町の外に出たのでしょうか?


 気になって訊ねてみたところ……。


「裏門は閉ざされているだけで、門番はいないのよね~。あと裏門の脇に通用口があって、そこの鍵を壊せばカンタンに外に出られるってワケ。警備がザルで助かったわ~」


 いつもの口調でお話するベリアさん。

 嘲笑うような感じがしますが、裏を返せば警備の問題を指摘している気がしなくもありません。


 でも、手綱を握っていた衛兵さんの両肩はプルプルと震えてましたけどね。


 そのことに思わず苦笑い。

 そんなわたしに向かって、ベリアさんが突然、真面目な顔をしたのです。


「ところで、お嬢ちゃん。さっき『仲間になる予定』とか言ってなかったかい? あれは、どう言う意味なのさ??」


「あー、そのことですか。実はわたし……ベリアさんたちの主さんになろうと思ってるんですよ」


「アタイらの主? お嬢ちゃんがかい?!」


「はい。もしかして嫌ですか?」


「イヤなんてコトはないさね。ただ……そんなコトが、できるのかい?」


「できるみたいですよ。一応わたしには、その資格があるみたいなので。それにポルトヴィーンの神官さんに書いてもらった推薦状もありますから、恐らく大丈夫だと思います」


 ニッコリ笑って答えたものの、ベリアさんの表情は優れない様子。


「あの~、どうかしましたか?」


「お嬢ちゃんの気持ちは嬉しく思うよ。でも、アタイらみたいな罪人を受け入れてくれるのかい? お嬢ちゃんとこの領主サマは……」


「そのことなら問題ないですよ。お話は通してありますから。ティーニヤさんも領民が増えると喜んでました」


「ティーニヤって……5年くらい前に、この町から追い出された、お姫さんのコトかい?」


 ティーニヤさんが、お姫様?

 エルフさんの領地を治める領主様の妹さんだからですかね??


 言葉の意味はよくわかりませんが……。


「そのティーニヤさんで間違いないです。ベリアさんはティーニヤさんのことをご存じなのですね」


「この町で生まれ育ってるからね。貴族サマの名前と顔くらい覚えてるよ。それに……あのお姫さんは貧民街にいたアタイらにも良くしてくれたからね。週に1度は炊き出しなんかしてくれて、美味いモノを食べさせてもらったものさ。あんなに良いお姫さんなのに、もうひとりのバカなお姫さんから嫌がらせとかされてたって言うじゃないか。頭のくる話さね」


「そんなことも、ご存じなのですか」


「情報は金になるからね。生きていくためなら、なんだってするさ。やりたくもない仕事もね……」


 やりたくないお仕事。

 それはハンターさんのことでしょうね。


 ベリアさんたちにとって、奴隷さんとしての生活は苦しいものだったと思います。


 だからこそ、わたしはこの言葉を伝えることにしたのです。


「そうですか。でもこれからは無理をせず、自(・)由(・)に生きてくださいね」


「自由? アタイらは、お嬢ちゃんの奴隷になるんじゃないのかい??」


「まあ、そうなんですけどね。だからと言って、わたしはベリアさんたちに命令とかするつもりはありません。今までたくさん苦労をしてきたわけですし……あ! でも、悪いことはダメですよ!! それだけは守ってくださいね」


「そんなコト、言われなくてもしないさね。しっかし、ホント変わったお嬢ちゃんだね。でも……心底尽くし甲斐のある主サマだよ」


 そう言うと、ベリアさんは安堵の表情を浮かべました。

 少しだけ目を潤ませながら。


 それから1時間ほど他愛もないお話をしたところで、牢獄のある敷地内に到着。

 レンガ造りの高い壁に囲まれた中心には、巨大な宿舎を思わせる建物がありました。


 そして至るところに、看守さんと思われるエルフさんたちが立っていたのです。


「あれが牢獄ですか。よく脱獄できましたね」


「アタイが脱獄した時は、ここまで厳重な警備はされてなかったわね~。アタイが逃げたコトで危機感を持ったってコトじゃな~い」


 いつもの口調に戻ってましたが、ベリアさんの顔は引きつっていました。

 次に脱獄するのは無理だと思ったんでしょうね。


 まあ、そんなことにはならないと思いますが……。


 このあと手続きを済ませ、ベリアさんのお仲間さんたちと再会。

 中にはわたしの顔を見て怯えだす人もいました。


 どうやらバブルドームがトラウマになっていたようです。


 えーっと……ごめんなさい。


 それでも魂浄化《ソウルパリフィケーション》をしたあとは、感謝の言葉を述べられます。

 周りのエルフさんたちは信じられないものを見ているような感じでしたけどね。


 ただ、その中でもひとりだけ、わたしの魔法をじっくり観察している男性のエルフさんがいました。


 名前はスレイメさんと言い、隷属の刻印を施す術士さんだそうです。

 スレイメさんは高度な技術を持っていて、ルーン文字にも精通しているのだとか。


 でも、ベリアさんのお仲間さんたちに刻まれた隷属の刻印は解けなかったようです。

 なので、わたしの魔法はとても参考になったと言ってました。


 そのスレイメさんが、ベリアさんたちの首に、わたしの名前を刻み込みます。

 ルーン文字で『ᚢᚾᛞᛁᚾᛖ(ウンディーネ)』と。


 そこにわたしが魔力を通して、新たな隷属の刻印が完了しました。


 正直、まだ複雑な気持ちはありますけどね。

 これがわたしにできる最善策だと思います。


 こうして、わたしはベリアさんたちの主さんになったのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。