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12/13

明日

翌朝、結局俺はそこにいた。この身体は俺のもののままだった。ベッドの横、さとみの寝顔を見つめながら呟く。


俺「俺は……彼女の好意を受け入れてもいいのか……?」



そのまま、何事も起こらず四日が過ぎた。何事も起こらず、と言いつつも俺たちの距離は縮まっていく。キスこそしなかったものの。


さとみ「ねぇ、これ味見してみて」


彼女が仕込んでいた豚の角煮を箸で掴んで、横にいた俺に向ける。


さとみ「私的にはめちゃめちゃ美味しいんだけど、どうかな?」


俺「…………うん、美味しい。めっちゃ美味しい」


さとみ「ホント? 久しぶりに作ったけど、成功して良かった~! もっと作っても良かったかな?」


俺「これだと今日の夜で全部食べちゃいそう」


さとみ「よし、完成と。マリカしよマリカ」


俺「今日もやるの?」


さとみ「だってもう少しで勝てそうなんだもん! 一日やらなかったらコツ忘れちゃいそうだし」


俺「仕方ないなぁ……」


テレビの方に向かい、ジョイコンを手に取る。電源を入れてマリカを起動する。


さとみ「あのさ」


俺「何?」


さとみ「旅行、行こっか。明日明後日」


俺「明日!?」


さとみ「ドラマで忙しくなる前にどこかにソウと行きたかったんだ。どう?」


俺「いや、俺は全然良いんだけどどこに行くの?」


さとみ「うーん……九州かな。ソウ実家でしょ? ソウのお気に入りの場所とか案内してほしいな」


俺「いや、確かに実家あるけど……でもせっかくなら俺も行ったことないところに行きたいなぁ」


さとみ「例えば?」


俺「うーん……関西……とかかなぁ」


さとみ「じゃあ、こうしよう」


キャラクター選択。彼女はいっつもデイジー。俺は重量級のドンキーだからぶつかって負けることはない。今まで全勝なのも彼女が操作に慣れていなくて俺の追突を避けきれていないのが大きな原因だ。


さとみ「このレースで私が勝ったら九州、あなたが勝ったら関西。これでどう?」


俺「よし」


レースが始まる。カウントダウン中のアクセルを踏むタイミングはお互いに完璧。


俺「簡単には負けないよ」


スタート。開幕デイジーの横っ腹に……


さとみ「おっと」


俺「あっ避けた!」


さとみ「へへーん」


初めてこれを避けられた。俺は驚いて、得意げに笑う彼女を見る。……と、よそ見してしまったせいで壁に激突。


俺「やっば!」


さとみ「何してんの~」


俺は二位で1週目を通過。当然一位は、さとみだ。


2週目半ばで一度追い越す。


俺「よーし」


さとみ「あっ、ちょっと!」


3週目へと入る直前、真後ろにいるデイジーに向かってバナナを投げる。が、デイジーはそれを避ける。


さとみ「そのタイミングで投げることくらい分かってたよ」


俺「でも俺が一位であることには変わりないからな!」


さとみ「さて、どうでしょう!」


真後ろから緑コウラ。


俺「あっ、くそ!」


まんまとドンキーは当たり、デイジーに追い越される。まずい。


そのまま、デイジーの後ろにつけた状態でゴールへと向かう。


俺「よし、このタイミングでキノコ!」


さとみ「嘘!?」


別に旅行先は九州でもいい。でも、彼女が今までで一番本気でマリカをしている。今までで一番俺が負けそうだ。だからこそ、俺も本気で勝ちたい。


ゴール直前、アイテムを使う。加速。


その瞬間、デイジーが横にずれた。目の前に……


俺「バナナ!?」


さとみ「引っかかった!」


スリップするドンキー。そして、デイジーがゴールイン。


さとみ「やったー!」


俺「負けた……あぁ、これ……俺が2週目で投げたバナナか……完全に忘れてた……」


さとみ「残念でしたーってことで、旅行は九州で決定ね!」


本当に悔しい。でも、さとみは本当に嬉しそうだ。やっぱり彼女の嬉しそうな顔を見ると俺も嬉しい。


でも、どうしてそこまで必死に九州を勝ち取ろうとしたんだろう……? 結局、俺には分からなかった。



夜。旅行の準備を終え、明日に向けて早めに寝ようとしていた。


さとみ「九州かー、やっぱり食べ物だよねぇ」


俺「まぁそうだねー」


さとみ「あ、今思ったけど……婚約してから初めて旅行に行くからこれって新婚旅行になるのかな?」


俺「し、新婚旅行!?」


心臓が飛び跳ねる。


俺「え、新婚旅行!? 右原さとみの新婚旅行九州で良いの!? 海外とかじゃないの!?」


さとみ「いいのいいの、あなたとだったらどこにいっても大切な思い出にできるから」


俺「そ、そう言ってもらえると嬉しいけど……まぁでも、忙しくなる前にさとみが1つ思い出を作れるなら俺はそれで十分だよ」


さとみ「ありがとう」


布団の中で彼女が手を握ってくる。


俺「いやぁ……で、でも、新婚旅行かぁ……緊張して眠れるか分からなくなってきた」


さとみ「眠れないのは別に良いけど、寝坊はしないでよ?」


俺「気を付けます……」


2人で笑う。


俺「楽しみだね」


さとみ「本当に楽しみ。私、旅行してあなたとやりたいこと沢山あるから……」


俺「俺もだよ。じゃあ……おやすみ」


さとみ「おやすみ、ソウ」

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