酔い止め《ロゼリィア・エミリア》
更新の間隔が長くなってしまいました。
少しでも間隔が短くなるように努力します。
「すっげええ!こんなデカイ船が海を渡るんだな!」
子供のように船のデッキから乗り出しはしゃぐリュート
乗船を済ませ、先ほど船は港を経ったばかりだった。
船は一等室から五等室まで分かれていて、かなりの大型船だ。
ちなみに私達は一番下のランクの五等室だ。
んー確かに潮風が気持ち良いな。
良い、船旅になりそうだ。
「リュート、あんまりはしゃぐなよ?船酔いになっても知らないからな?」
「大丈夫、大丈夫。そんなすぐにはなら……」
ぉぼろろろロロ
………えぇぇ。
リュートが海に向かって盛大にリバースした。
「…大丈夫かリュート?横になった方が楽なんじゃないか?」
「い、いや、大丈夫…気、気に」
おボロホロロロロロ
……。
私は近づいて、リュートの背中をさすってやった。
「…酔い止め…貰ってきてやるから、休んでろ。」
「う…面目ない…。」
「リュートは一体どうやって、この大陸に来たんだ…?そんな酔いやすくては船など、乗れないだろう。」
「ま、まえは、飛行船だったから…あの時は大丈夫…だったんだ…。」
ヘヘッと具合悪そうなリュートが笑う。
目の下は黒く窪んでいた。
「はぁ…先が思いやられるな…。」
「お、おま、えが…言うな…。」
リュートが3回目のリバースをしそうなので、私は船の医務室に行って、酔い止めを取りに行ってやることにした。
私が去った後、リュートは他の乗客に心配されたのか、その場所は人溜りになっていた。
たしか、医務室は…
船のデッキに置いてある地図を見て確認する。
本当に広い船だな…。
私はデッキを後にし、船の内部に入る。
中は木製の床に白塗りの壁が広がっている一本道だった。
船は中流階級向けなので、家族連れやカップルなどが目だっている。
さて、医務室はこっちの方だったかな…
「すいませーん、誰かいらっしゃいますか?」
木製のドアをノックして中に入る…
…反応は無い。
だれも居ないのか?
中に入ると薬品の匂いが鼻腔を刺激した。
ここが医務室で間違いなさそうだ。
医者が居ない以上、酔い止めは自分で探すしかない。
私はデスク近くの棚やら引き出しを片っ端から開けて調べていった。
なかなか見つからないな…
船なのに、酔い止めが無いというのは考えづらい…むしろ、酔い止めを欲しがる人は多いはずだ。
なら…多分…
ハンガーにかかっている白衣に近づき、ポケットを探してみる。
ガラスの感触が感じられたので取り出してみると、それは錠剤の入ったガラス瓶だった。
マジックで〈酔い止め〉と書いてあるのでこれが酔い止めで間違い無いだろう。
ガラス瓶の蓋を開けて二、三粒ほど錠剤を手にする。
さて、リュートのところに戻るか…
戻ろうと、振り返ったところ医務室のドアがガチャリと開かれた。
医者が戻ってきたのだろうか…?
ドアから出てきたのは、筋肉質で太い眉毛の若い男だった。額には赤色の鉢巻を巻いている。
『医者…?』
医者というよりは操舵手といった見た目だが…彼も医務室に用があるのだろうか?
「ここで…何をしている?」
「あ、いや、すまない。友人が船に酔ってしまって…酔い止めをもらいに来たんだ。」
「なるほど……では」
スッと男は腰から短銃を抜き私に向けて構えた。
「今、この船の現状も知らないと…そういうことだな。」
「な、なんのつもりだ…!」
「この船は我々〈紅巾団〉が乗っ取った。乗客は皆、第一ホールに集めている…お前も大人しく付いてくるだな…。」
…急な話だな
紅巾団か…聞いたことのないグループだな…。
テロリストのように見えるが…
「なぜ、この船を…?」
「応える義理はない。」
男は私の眉間に向けて短銃を構え直した。
「質問は一切受け付けない…お前はただ、付いて来ればいいんだ。」
「そうか…分かった。」
手を挙げて、男に近づく。
「なら……倒すしかないみたいだな。」
次の瞬間身を沈ませ男の懐に潜り込んだ。
男は驚いた様に仰け反った。
『撃ってこない…』
私は男が怯んだ隙を見て、手にしていた、ガラス瓶をおもいっきりこめかみに向けて叩きつけた。
ゴツっと後味の悪い感触が手に伝わる。
男はうめき声を挙げつつそのまま、もんどり打って倒れた
『…強気な態度の割に、撃ってはこなかったな。』
男には反撃の姿勢が見られなかった。
案外、銃は扱い慣れていなかったのかもしれない。
男は殴られた箇所から血を流していたが、まだ息があった。
私はその男を医務室の椅子に縛り付けて、部屋を後にする。
「さて…なにやら大変なことになっているみたいだな。」
紅巾団と名乗っていたな…
おそらく、敵は複数だろう。
目印はあの男もしていた、赤い布。
リュートに接触するにしてもまずは情報を集めなくてはならない。
それに、乗客達をホールに集めていると言っていたから、リュートも捕まっているかもしれない。
敵に能力者がいないとも限らないしな。
私は単独で行動する事を決意した。
さすがに今回は皇国は関係ないと願いたいが…
…いきなりのトラブルで不安を感じられずにはいられなかった。
「やれやれ…だな。」
そんな不満が思わず口から零れてしまう。
読んでいただきありがとうございました。
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