船が嫌い?《カンナギ・リュート》
久々の更新となってしまい申し訳ございません。
今の所、第2話は第1話ほどは長くならない予定です。
オボロロロロ
本日、二度目のリバース…
まさかここまで船に弱いとは…
せ、せっかくの船旅なのに…
「…酔い止め貰ってきてやるから…休んでろ…。」
ロゼが背中をさすりながら哀れむように呟いた。
「う…面目ない…。」
「リュートは一体どうやって、この大陸に来たんだ…?そんな酔いやすくては船など、乗れないだろう。」
「ま、まえは、飛行船だったから…あの時は大丈夫…だったんだ…。」
あ、あの時はカナンと一緒に飛行船乗って来たんだよな…
な、懐かしい…。
「はぁ…先が思いやられるな…。」
「お、おま、えが…言うな…。」
お前、さっき港でバカ食いしてた…だろ…。
う
オボロロロロロロ
三回目のリバースだ…
うう、もう胃の中に何も残ってない気がする…。
「おいおい、にいちゃん大丈夫か?」
気が付くと俺の周りには人が集まっているみたいだった。
ロゼがいないのは…多分、酔い止めを取りに行ってくれているのだろう。
「あ、その……。」
答えようとしたその時、ザパァンと大きな波が船を襲った。
船はグラリと揺れ、乗客たちの驚いた声があがる。
そして、散々いたぶられていた三半規管に更に追い討ちがかかった。
胃の中はもう、何も残っていない。
しかし…無情にも腹の底から胃液が逆流してくるのが分かった。
「グォオオ……!」
なんとか喉の部分で胃液を押し留める。
酸っぱいような臭いが口一杯に広がった。
「にいちゃん…そこのベンチで横になりな…。」
「は…はい。あ…ありがとうございます…。」
俺は勧められるがまま、船のデッキに置いてあるベンチで横になった。
日差しが照りつけてきて、気持ちいい…訳もなく、今はその光すら鬱陶しく感じてしまう。
まさか…こんなになるなんて…
船に苦手な意識でもあったかな…?
なんだか、船酔いとかいうレベルじゃ無い気がしてならなかった。
とりあえず…ロゼが戻るのを待つしかない…か。
はぁ、と大きく息を吐き、目を閉じて、心を落ち着かせようとする。
………なんだか、騒がしいな?
目を閉じていると、遠くの方からだろうか?
喧嘩のような怒気の籠った声が飛び交っている様に感じた。
おい…今度はケンカかよ…。
…本当、申し訳ないけど、今回は無視させてくれ…。
正直、今そんな血圧が上がりそうなことをできる気がしない。
まぁすぐ終わるだろうし大丈夫だろう
そう思っていた。
しかし…
『…人を殴る音だろこれ。』
明らかに人を殴る音が聞こえる。
そして甲高い女性の悲鳴もあとから聞こえてきた。
『ただことじゃないな…』
そう思い、飛び起きる様に上体を起こすと、そこには先ほどの、のどかさからは想像できない様な凄惨な景色が広がっていた。
なぜなら、紅い布を腕に巻いている5、6人の男女が、船の甲板を蹂躙していたのだ。
先ほど俺に声をかけてくれた、中年の男性も顔中殴られたのか、血だらけになっていた。
「な!…何してんだ、お前ら!!!」
紅い布を巻いている男たちは驚いた様にこっちを見る。
俺は構わず、その集団に飛び込んでいった。
敵の装備はまばらだったが、短銃を持っている者もいた。
俺は一番近くにいた、男の顔面に向かって強く握りしめた右の拳を叩き込んだ。
メキメキと鼻の骨が折れる感触が拳に伝わる。
「うぎゃああ!!」
男は大きな悲鳴を上げその場に倒れ込みジタバタと足をバタつかせる。
「な、なんだてめぇ!」
他の奴らもこちらに気づいたようだ。
サーベルを持った敵が2人、正面から一気に距離を詰めてくる。
『上と…下か!』
1人は上段から振り下ろす様に、もう1人は下から蹴り上げる様にサーベルをこちらに放ってくる。
俺はそのサーベルが放たれるまえに、上段にサーベルを構える男の脇に回り込む。
そしてそいつの後頭部に向かって上段蹴りを放った。
男は驚いた様にこちらに目を向けたが、その反応では遅すぎた。
パァンと小気味良い音が響くと、男は下段に剣を構える男を巻き込む様に勢いよく吹っ飛ばされた。
「な、こいつ…!かなり疾いぞ!気をつけろ!」
別の紅い布を巻いた男が狼狽える、するとその声に呼応したか、俺の周りを囲むようにその連中が集まってきた。
「あんたら、一体何のつもりだ…!」
俺は正面に立つ筋肉質で目と口だけが空いているマスクを被った、男に話しかける。
「…悪いが、俺たちの目的のためだ。大人しくさえしていれば、危害は加えない…その男も反抗してきてから見せしめに殴っただけだ。」
こいつがリーダー…か?
マスクを付けているのはこいつだけだしな…
「へぇ…奇遇だな、俺もあんたを見せしめにぶん殴って、おまえら全員を追い返してやろうと思ってたところだよ。」
「な!おまえ、どの口でほざいて…」
「まぁ…まて…落ち着け。」
マスクの男は俺の挑発に乗る様子は全くなく、苛立つ部下たちを押さえ込んでいる。
「悪いな…おまえの気持ちも分かるがこちらも仲間をやられて、内心穏やかじゃないんだ…そこで…」
スッ、とそいつは隅に集められている乗客達を指差した。
「我々も強行手段を取らせてもらおう…もし、これ以上暴れるなら…そこにいる乗客共の安全は保証しないぞ。」
乗客達に向けて何人かの紅い布を纏った奴らが銃を向けている。
乗客達の、怯え震える音がここまで聞こえるようだった。
「アンタ…それ、マジで言ってるのかよ…。」
「……悪いな、こちらも命がけなもんでな…。」
く…こいつ…
覚悟してるって
そういう目をしてる…。
本当に、いざって時は皆を殺すつもりなのかもしれない…。
チラッと人質方に目を向けると、震えてお母さんに泣きすがる子供が目に入った。
…くそ。
「…分かった。その代わり、あの人達には絶対手を出すなよ。」
俺は両手を挙げて交戦の意思がないことを示した。
すると、ニヤっとマスクの男が笑うのが分かった。
「あぁ…もちろんだ。」
ガンッと大きな衝撃が頭の後ろから全身に響き、そのまま地面に叩きつけられる。
「…がっ!!」
「あの人質には手は出さないさ…お前は例外だかな…。」
耳鳴りがする…
頭を殴られたせいなのか、辺りがボヤァっと白くなっていった。
ジワリと後頭部が熱い液体で濡れていくのが後から分かった。
薄れゆく意識の中で、目の前の男は被っていたマスクを自ら剥ぎ取ったのを確認した。
顔はよく見えなかった…
ただ、その右目には大きな刀傷のような痕が残っているのだけ分かった。
…ロゼ
…無事で…いてくれよ…。
「大人しくしろ!」
俺はもう一度後頭部を殴られ、そこで意識は完全に無くなった。
読んでいただきありがとうございました




