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18話 私って魔法が使えるようになるのかしら

 ファルが何だか可笑しな冗談を言い出したわ。


「ねぇファル、冗談を言うならあんまり誇張し過ぎてもダメよ。皆、笑いどころが分からないからポカンとしてるでしょ?」


 せっかく笑いの指南をしてあげたのに当のファルは怪訝な顔をした。


「一番の問題はレイナ本人がよく分かってないところなのよね。魔法が使えれば、自分の魔力量が如何に規格外なのか気付くのだけど……」


 ファルの言葉に皆が頷いている。


 それはその通りで、自分の魔力量がどのくらいなのかなんて比較対象が無いから分からないのよね。


 だって仕様がないじゃない。


 身近に神器を持っている人なんていなかったんだもの。


 でもファルの言葉通りなら、魔法を覚えれば自分の魔力量の事が分かるかもしれない。




「私って魔法が使えるようになるのかしら……」




 ぼそりと呟いた私の独り言に、プレシオとルートリアが顔を見合わせた。


「今から急いでエルベの町に戻ればさ、俺たちが出席するパーティの前に、エルベの教会でレイナの魔力を確認する時間が取れるんじゃないかな」

「……うむ。少し勿体ないがスケルドラゴンとの戦闘は次の機会にしよう」


 あんなに楽しみにしていたスケルドラゴンとの戦闘を断念すると言い出した。


「え!? もう帰るの? スケルドラゴンと戦うんじゃないの?」


「いやね、戦いたいのはやまやまなんだけどさ、スケルドラゴンみたいに状態異常耐性があって硬い敵に2人で挑むとなると、半日以上の時間を掛けてじっくり倒す事になりそうなんだ」

「レイナの魔力量が膨大だと分かった今、少しでも早くその特性を掴んで自分の身を守れるように魔法を身に付けて欲しい」


 言い終わるや帰り支度を始めてしまった。


 まあ、2人がいいなら私は構わないんだけど、戦闘を諦める理由が私なのでなんだか申し訳が無い気がする。


「あんなに戦うのを楽しみにしてたのに、なんだか申し訳ないわ……」


「気にしなくて大丈夫だよ。レイナの事が優先なだけだからさ。それにその潜在能力にもかなり興味があるし」

「正直、レイナの魔力診断にとても興味がある。悪魔であるファルが示したレイナの対比対象は驚く事に邪神だ。邪神は女神と双璧をなす存在で、魔王すら庇護を求める魔族の神だ。そんな相手がレイナの対比対象だなんて、君のあまりの規格外ぶりに気持ちも高揚するというものだ」


 プレシオもルートリアも、別に嫌々戦闘を諦めている訳でもなさそうだしいいかな。


「あの、この子はどうしましょうか?」


 スケルドラゴンの前足を叩きながらベクタードレインが尋ねてきた。


「反撃しないように立たせておいてさ、冒険者ギルドの討伐依頼で破壊してもらおう」


 プレシオの意見に私も賛成だわ。


「そうね。ベクタードレインには悪いけどそれがいいわ。それに、私たちの依頼は調査だからちゃんと依頼達成になるしね」


 という事で、大急ぎでエルベの町に戻る事になった。




 エルベの町へ戻る道中でベクタードレインが不安そうに聞いてくる。


「私は人族の町に一緒に入って平気でしょうか? 変装とか要りますか?」


 その質問にルートリアが首を横に振る。


「それだと変装がバレたときに言い訳ができず、死を覚悟する事になる。それなら最初から魔族である事を隠さずに、我々の仲間であると公言した方が良い」

「幸いというかさ、冒険者ギルドじゃ既に規格外扱いだから、ね?」


 プレシオが私に同意を求めてきた。


 べ、別にそれは私の所為じゃないんだからね!


「私の方はどうかしら? 変装なんて要らないわよね?」


 珍しくファルが自分からルートリアに話し掛けている。


「ファルは誰から見ても可愛い少女だから平気だ。むしろ言い寄って来る男が居ても腹を立てないで欲しい」

「うふふ……。可愛い少女だなんてルートリアは上手ね。まあ、女性への対応は悪くないようだから、あっちの攻略も上手くいくかもね!」



 それを聞いたプレシオが慌ててファルに寄ると小声で話す。

「待ってくれよファル。俺だってまだ諦めてないんだからさ!」

「うーん、プレシオはちょっと焦った方がいいわよ。ああ見えて鈍感なりにルートリアを意識しているから少しリードされているわ」


 それを聞いたプレシオが手を強く握りしめて気合を入れていた。


 一体何を吹き込んだのだろう。


 でも、ファルが彼らと少しずつ打ち解けてきて良かった。


 機嫌よさそうに笑顔で歩くファルは、ワンピースの裾から黒い尻尾の先を出してふわふわの青い毛先を揺らしている。


 相変わらず可愛らしい尻尾だけど、町に入るなら隠しておいた方がいいかもね。







 途中のソド村で1泊してから、翌日の昼前にはエルベの町に帰還した。


 まだ、時間も早いのでさっそく冒険者ギルドへ依頼の報告に寄る。


「おい、あれレイナさんじゃねぇか?」

「プレシオとルートリアもいるわね」


「あの女の子もレイナさんの仲間だろうか? げ、黒い翼が生えてんだけど……」

「あっ、あいつ! あの男は魔族じゃねぇか!?」


 前回のフォルカスとの件があって、私が入っただけで視線を集めてしまったが、その所為で早速ニューフェイスのファルとベクタードレインの存在も知れ渡ってしまった。


 ギルド内をざわつかせながらも、皆と一緒に受付嬢のところへ依頼達成の報告をしに行く。


 プレシオがトマスのサインが入った紙を提出すると、受付嬢がサインを確認して微笑んだ。

「はい、確かに鬼ツムリ討伐の依頼達成について、ソド村責任者が現認されていますね」


「それともう一つ、スケルドラゴンの調査依頼なんだけどさ……」


 ソド村から半日程森を進んだ山の麓で1体だけスケルドラゴンを発見したと伝えた。


 討伐するには肉弾戦を主軸とした戦闘スタイルが良さそうだという事で、デュクシたちのパーティ『とにかく荒稼ぎ』を推薦しておいた。


 前回、冒険者ギルドで助けて貰ったのでせめてもの恩返しである。

 あのスケルドラゴンはベクタードレインの命令で反撃しないように待機させてあるので、デュクシたちにとっていい稼ぎになるはずだ。


「それでは鬼ツムリ討伐の報酬とスケルドラゴン調査の報酬をお渡しします。それと鉱山の調査部隊が戻りまして、オーガ7体の討伐を確認しましたのでその報酬もお渡しします」


 例によってルートリアは報酬なんて興味を無さそうにしているし、プレシオも受付嬢から報酬を受け取ったものの財布に入れずに全部私に渡してきた。


「ごめんレイナ。悪いんだけどさ、預かっといてもらえるかな」

「それは構わないけど、ほんとにお金に興味が無いのね?」


「いや、まあ、そんな事無いんだけどさ、俺たちが使っている金と混ざると、後で収支報告がややこしくなると言うかさ……」


 ああ、お貴族様の家から支給されているお金はちゃんと用途を報告しているのね。


 でも、それだと私の為に使ったドレスや靴、貴金属なんかの代金は平気なのかしら。

 今度のお貴族様パーティで彼らの思惑通りに事が運ばなかったら、無駄遣いだって追求されちゃうんじゃないかしら。


 そんな心配をしながら、鬼ツムリの討伐報酬金貨1枚、スケルドラゴンの調査報酬銀貨50枚、オーガ7体の討伐報酬金貨7枚の折半分金貨3枚銀貨50枚を預かって、神器を入れている背負い袋に入れた。


「よし、次は教会でレイナの魔力診断をして貰う」


 ルートリアの言葉を切っ掛けに、ギルドの受付から皆が動き始めた矢先だった。


「レイナ! 今度こそ一緒に来てもらうぞ!」

「覚悟しなさいよレイナ! そ、それとプレシオさんお久しぶりですぅ」


 威勢よく私たちの前に登場したのは、青髪の草食系男子スモークと、赤髪ロングでプレシオにデレデレの肉食系女子サラミだった。


 そういえばこんな作業服コンビがいたっけか……。


※誤字脱字などがありましたら、ご連絡いただけますと大変助かります。

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