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17話 い、いや、私の実力じゃないわよ

 という事でまずは私が神器を使用して、スケルドラゴンの瘴気ブレスを受け止める事になった。


「いきなりドラゴンブレスを受け止めるのは流石に不安だから、徐々に強い攻撃を受けて平気か試してからでもいい?」

「そりゃそうよね。……ねぇレイナ、不安なら私もレイナの方に居てあげようか?」


 ファルは優しい子ね。


 彼女の気持ちはかなり嬉しかったけど、もし何かあっても困るから神器の側にいるのは私だけにして貰った。


 皆から私が離れるときにファルがこっそり耳打ちしてきた。


「それ、かなりやばいヤツでしょ。人間が作れるような代物とは思えないわ」


 やはり次元の違う存在なら『尾根ギア』の価値を見破れるのかもしれない。


 ファルが気付くならルビカンテも気付いたかもしれないけど、彼との戦闘中は抱えてあまり見せずに魔力を溜めてたし、発動してからすぐ下僕にしたからね。


「まずは俺がさ、この短い状態の槍でかるく突いてみようか」


 一番軽い攻撃という事で正面にプレシオが立った。

 その後ろにはファルが立っていて、最後にルートリアが並ぶ。


 やだなあ。

 並んだ皆が私へ攻撃するのを楽しそうに待っているじゃないのよ……。


 たぶん、ファルの『ウインドカッター』くらいなら問題ないように思うけど、ルートリアの魔法剣は平気かしら?

 あの魔法剣で切れなかったのって、ルビカンテが自ら無敵だと言った彼のあの黒い脚くらいだわね。

 まあ、神器の本体じゃなくて魔法で具現化する黄金色の外枠と透明な歯車なら、万が一壊されても本体には影響ないと思うからいいか。


 あまり気が進まないけど、皆が今か今かと待ち構えているので仕方ない……。




 私は神器の力を開放した。




 両手で持った赤茶色に錆びた歯車から、虹色のまばゆい光が周囲に放たれた。


 皆が眩しそうに光を腕で遮っている。


 赤茶色の歯車は私の胸の前で宙に浮くと、その周りに沢山の透明な歯車が出現した。

 透明な歯車の外側に、直径2メートルで内側に歯を備える黄金色の細い円形枠が出現する。

 

 歯車のどれかが動けば互いに動きが伝わる状態ですべての歯がかみ合っている。




 本来であればこの後、<送信>するために外側にある黄金色の円形枠を掴んで少し回してから、口に出して『宛先』に力を使う相手、『件名』に要求事項を宣言するのだけど、今回はそれをしないで待機状態にする。


 この状態で放置した事が無いから、このままにするとどうなるかは私も知らない。


「それじゃあさ、さっそく攻撃してみるぞ」


 プレシオがいつも持っている2メートルの槍で、具現した歯車を軽く突く姿が歯車の隙間から見える。


 カンッ! と高い金属音がして槍を弾いた。


 いろんな場所を突くが歯車の隙間にも槍先が入らないようで物理攻撃は一通り防げる事が分かった。


 プレシオに代わったファルが『ウインドカッター』を当てるけど、こちらも具現した歯車たちが壁の様に立ちはだかり、一切の影響をこちら側に通さなかった。


「これならどうかしら」


 試しにとファルが『ウインドカノン』という魔法で空気のエネルギー弾を放ったのだけど、神器で具現された歯車たちは大岩の様にどっしりと受け止め、動くどころか震えすらしなかった。


 あまりの堅牢さにみんながどよめく。


「全力でいくぞ」


 完全に本気モードのルートリアが、魔力を伝導する青白い刀身のショートソードを抜き放つ。


 え? ぜ、全力なの?

 もうっ、そんなに本気出さないでよぅ。


 彼の魔法剣の威力を知るプレシオが食い入るように見つめるなか、ルートリアが切り掛かった。


 結論から言えば、今までにないくらい青く光り輝いた彼の剣ですらまったく歯が立たず、具現した歯車を破壊するどころか、傷すら付けられなかった。


 ちなみに神器を開放し<起動>状態のまま放置しているけど、別に時間制限も無い様だし私の魔力も必要としなかった。


 どうやら<起動>で一度具現してしまえば、そこにある物体として存在し続けるようで、<送信>動作により『宛先』へ『件名』で要求して、具現した歯車たちを消費しなければそのままその場にあり続けるようだった。


「レイナの魔道具ならきっと平気なんだろうけどさ、それでもドラゴンブレスを受けられたら凄いよな」

「いよいよ本番だ。まあ、私の魔法剣をものともしないのだから多分平気だろう」


「ねぇ! きっとだとか、多分だとか不安になるからやめてよ」

「安心してレイナ。私の見立てだと、きっと平気よ、多分ね」


 皆、ヒドイ! 後でお返ししてやる!


 スケルドラゴンの横に立つベクタードレインが私に向かって手を振る。


「じゃあいきますよ~。ああ、ちなみに瘴気耐性の無い生物でスケルドラゴンのブレスに耐えた例は歴史上聞いた事無いんですが、まあ大丈夫でしょう」


「え!? ちょ、ちょっとやっぱ止め……」


 真正面に立つスケルドラゴンは巨大な大顎をあんぐりと開けると、まるで周囲の光を吸い込むように口の中に黒い空間を作り出してから、一瞬の間を置いて極太の黒い光線が放たれた。


 周囲の光が全て失われて、黄金色に輝く外枠とその光に照らされた沢山の歯車以外に何も見えない。


 具現した歯車たちよりも外側は、幅広の黒い光線が周囲の光を奪って、まるで暗闇に閉じ込められたような錯覚に陥る。


 私は歯車で出来た安全領域から体が出ないように注意を払って、じっと瘴気地獄が収まるのを待った。


 時間でいえば10秒程度なんだろうけど、体感では恐ろしく長い恐怖体験がようやく終わりを告げて、やっと周囲の視界が元に戻った。


「レ、レイナ! 大丈夫かっ!? ……大丈夫そうだな」


 こらルートリア!

 心配するならこんな事させないでよ!


「うわぁ……、あれだけのドラゴンブレスを受けても見た目が何も変化してないよっ! 後ろはあんなに酷い事になっているのに……」


 プレシオのあまりの驚き様に急いで後ろを振り返ると、神器で防いだ部分だけ丸く草木が残ってその周囲の草木がドーナッツ状に真っ黒く変色して呪われた土地の様になっていた。


「凄いわね……。ちょっとレイナの実力を甘く見てたわ」

「い、いや、私の実力じゃないわよ。魔道具が凄いだけだから」


「あのねぇ、それだけの物体を具現するのにどれだけ魔力を必要とするか、私に分からないとでも思うの?」


 呆れたように腰に手を当てたファルにルートリアが食い付く。


「ファル、あの魔道具の現象が一体どれほど魔力を消費しているのか教えて欲しい」


 子供のような眼で質問するルートリアに、ファルがしょうが無いわねぇと姉が妹に教えるような表情をした。


「あの硬さだと、少なく見積もって私の全魔力量の10倍くらいを必要とするわ。しかもあの状態は本来の効果を発動する前よね。発動で得られる効果を見て無いから分からないけど、本来は効果の大きさに比例するだけ魔力を必要とするわよ」


「あ、いや、ファルの魔力量が多いのは知っているが、君の魔力量が一体どれくらいか想像がつかないんだ」


「そうねぇ、鬼ツムリで対決したときにルートリアの魔力量は大体分かったけど、その10倍くらいが私の魔力量かしら」


 流石、悪魔のファルだ!

 あの実力者ルートリアの10倍もの魔力量を誇るのか。


 私がファルに感心していると、全員の視線が私に集まっている事に気付いた。


「な、何?」


 プレシオがいつものような軽い口調だけど、少し丁寧にゆっくりと質問してくる。




「レイナはさ、その魔道具が再度使えるように魔力を溜めるのに、何日くらい掛かるの?」


「結構掛かるわよ、大体3日くらいかなあ?」




 私が返事をすると全員黙ってしまった。


 一人だけ、ベクタードレインはにこにこの笑顔でとても機嫌がよさそうだ。


「なるほど。レイナさんの魔力量は少なく見積もってもファルファレルロ様の3倍はある訳ですね。女神様にお願い事を聞いて貰えると言うレイナさんのお話、非常に期待感が増しました」


 彼のつぶやきに続けてファルが口を開く。




「レイナの魔力量は、邪神ゲヘナ様に匹敵するかもしれないわ」


※誤字脱字がありましたら、ご指摘いただけますと大変助かります。

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