44/55
悪しき者
ーー人気のない謁見の間。
闇がそこら中に漂っている。
血のような真っ赤なドレスに、きらびやかな装飾品を付けた女が、睨みつけるような視線を宙に向けていた。肘掛にもたれ、ワインの入ったグラスを気だるく持ち、
「おのれ……ユーリ ソフィアンスキーめ。わらわをだましおって」
いらだたしげな声で言い、手に持っていたグラスを床に投げつけた。
ガシャーン!
散らばった破片を眺め、女は不敵な笑みを浮かべて、
「まぁ、よい。あの者たちに、少し力を貸してやればよいのじゃ」
右手をすっと上げると、古びた二冊の本が、眼前に現れた。
「あとはこれを最期に送りつけてやればよい。嘆き悲しむがいい!」
手を前へ払うようにすると、本はすうっと消え、何処かへ飛んでいった。
満足げに微笑み、
「後悔するがよい。あははははっ……!」
狂ったような笑い声が、闇に包まれた空間にまとわりついた。




