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Legend of kiss1 〜雪の王子編〜  作者: 明智 倫礼
21/55

雪降る夜に

 ーー夕食後。

 シャワーを浴びたリエラは、部屋へ戻るため、ジュレイテ城の廊下を走っていた。


(寒いなぁ〜。やっぱり湯船に浸からないと、温まらないね。早く部屋に帰って、暖炉で温まろう)


 肩を震わせ、さらに走るスピードを上げようとすると、


【呪い解きし者】

 

 ふと、かすかなピアノの音が、冷たい風に運ばれてきた。立ち止まって、リエラはキョロキョロする。


「あれ? さっきまで聞こえなかったのに、不思議だね。どこかな?」


 自分の部屋へ戻ることを止め、出所を探し始めた。


「こっちかな?」


 ピアノの音だけを頼りに、寒い廊下を歩いてゆく。

 しばらくすると、近づいてきたのか、メロディーがはっきり聞き取れるようになった。


「綺麗な曲だね」


 微笑んだリエラは、窓の外へ顔を向けた。風もなく、雪が穏やかに舞い散る風景を眺めて、


「今の景色にぴったりだね。誰が弾いてるのかな? もしかしてーー」


 ちょうどそこで、探していた部屋の前へたどりついた。


「あっ、ここだ」


 ドアノブに手をかけ、


(少しだけ開けよう、誰が弾いてるのか確かめるだけだから。そーっとね……)


 慎重に音を立てず開けたが、隙間から廊下の冷たい空気が中へ入ってしまい、それにさらされた中の人が、超不機嫌な声で、


「誰?」

(開けるなよ、寒いだろう)


 リエラはびっくりして、ドアノブから慌てて手を離した。


「……!!」

(えっ! な、なんで見つかっちゃったのかな?)


 ドアの隙間から中の人をのぞき込み、彼女はぱっと顔を輝かせた。


(あ、わかった! テレパシーだね。ユーリって、本当にすごいね)


 いつまでも返事を返さない人に、ユーリは盛大なため息で抗議。


「…………」

(返事ぐらいしろ)


 それを感じ取ったリエラは、戸惑い気味に、


「……リ、リエラ」


 その名を耳にしたユーリは、あきれた顔をする。 


「また、お前か……」

(誰の陰謀だよ? 今日は、入れないからな)


 彼は体を寒さに震わせ、リエラに一言文句。


「寒い、閉めろ」


 珍しく、大暴投しなかった彼女は、


「あぁ、そうか」

(寒い空気が中に入ってたんだね。急いで閉めないと……)


 慌てて彼女はドアを閉めた。しかも、自分はしっかりと中に入って。それを見たユーリはピアノを弾いたまま、鋭い視線を投げつける。


「お前、また……」

(どういうつもりだよ? 夜、同じ部屋に一緒に入るなよ。何かあったら大変ーー!?)


 自分の想像ーー大人の妄想に、彼の手は鍵盤の上から外れそうになった。


(ーーって、そんなことはどうでもいいんだよ。何もしないんだから)


 少しもつれたメロディーを弾く銀髪の少年に、リエラは不思議そうな顔をした。


「……?」

(どうしたのかな? 顔が赤いみたいだけど……)


 ペースを取り戻し、ユーリは再び彼女に抗議の眼差し。


「…………」

(少しは学習しろよ)


 その視線を受け止めたリエラは、一生懸命考える。


「…………」

(えっと……何か間違ってるのかな? んー……あっ、わかった!)


 表情をぱっと明るくさせた彼女は、


「あぁ、そうか。外に出ないとね」

(この間、同じ部屋に入って、恋人同士に間違われたんだったね。どうしてだか、わからないけど……)


 未だにお子様なリエラは回れ右をして、ドアノブに手をかけた。そこへ、


「待てよ」


 ユーリの引き止める声がして、少し驚いたリエラは、すうっと振り返った。


「え……?」


 自分へ再び向き直った姫を前にして、ユーリはピアノを弾いたまま、自身の発言をリプレイ。


「…………」

(今、『待て』って言ったよな? 俺、どうして引き止めたんだ?)


 リエラは目をぱちぱちさせて、


「…………?」

(どうしたのかな? ユーリ。何か考えてるみたいだけど……)


 その視線を無視したまま、ユーリは、


「…………」

(俺、自分でもよくわからないうちに、行動してる時があるんだ。どうするかだな?)


 いつまでも答える気のない銀髪の少年から、リエラは天井へ視線を上げた。


「……?」

(『待てよ』って、聞こえた気がするんだよね?

 引き止めたんだから……ユーリは自分に用があるってことだよね?

 それとも……また聞き間違えたのかな?

 えっと……じゃあ、何て言ったのかな?)


 ほのかな紫色が広がる窓へ、ユーリは視線だけ向け、


「…………」

(言ったこと、今さら取り消すの面倒だしな。そうだな……あれがこうで、それがああだから……)


 窓ガラスに映った、あるものを見つけ、リエラに声をかけた。


「廊下、寒いだろう? それ、飲んでけ」

(ありがたく受け取れ)


 ユーリがあごで指したのはーー暖炉の側にあるテーブルだった。それを見たリエラは、上に置かれているものを発見。


(ティーポット……? あぁ、寒いから、飲み物を勧めようとしてたんだね。ユーリは優しいね)


 大暴投せず、意味をきちんと理解した姫は、


「うん、ありがとう!」


 素直に従い、彼女は暖炉の前へ歩いていった。


 ユーリの奏でるメロディーを聞きながら、ソファーに腰掛け、空いているカップをひとつ取り、飲み物を注いだ。すると、どこかでかいだことのある香りが、冷たくなったリエラの鼻をくすぐった。カチカチだった肩の力は抜け、彼女は自然と笑顔に。


「これ、お菓子屋さんで飲んだやつだね」


 ピアノの弦を見つめながら、ユーリは気のない返事。


「そうだ」

(食べ物の記憶力は正常……と)


 幼なじみを分析した彼。それを知ることなく、ほっとひと息ついたリエラは、何気なく、


「素敵な曲だね。ユーリが作ったの?」


 彼は視線だけを上げて、


「何で?」

(俺が作ったって、わかったんだよ?)


 聞き返されるとは思っていなかったので、リエラはびっくりして、ピアノへ振り返った。


「えっ? 何でって……」


 ピカピカに磨かれたピアノのボディに映った奏者を見つけ、優しい顔で続ける。


「ユーリに似てると思ったから」

(暖かいところとか、綺麗なメロディーが)


「ふーん」


 そこにどんな意味があるのかわからない返事を返してきたユーリを、リエラはまじまじと見つめる。


「え……?」

(あれ、間違ったこと言ったかな?)


 ユーリはぼそっと、


「鋭いのか、鈍いのか、微妙」

(感覚で、何でも判断してるんだな。だから、八神先生の罠に簡単に引っかかるのか)


 また、幼なじみの情報を入手した彼の前で、


「あぁ、そうなんだね」


 決して褒められていないというか、けなされているのにも関わらず、うんうんうなずいているリエラに、ユーリは珍しく笑った。


「ぷぷぷっ……」

(誉めてないのに、喜んでる。バカだな、本当に)


「え……?」


 リエラはきょとんとした。ユーリは優しい顔になり、彼の弾くメロディーはぴたっと止んだ。


「手、冷たくなった」


 部屋の中に聞こえるのは、暖炉の炎が燃える音だけになり、静かな空間が広がり始めた。ユーリは手をこすりながら、リエラの隣りにある一人がけのソファーへ座る。


「う〜、寒っ!」


 リエラはもうひとつのカップに飲み物を注ぎ、暖炉に手をかざしている彼へ。


「はい」

「サンキュ」


 すっかり慣れてしまったやり取りを気にかけつつ、ユーリはリエラの横顔をちらり。


(三週間、ずっとダンスの練習。

 毎日、顔合わせて……練習付き合って……。

 小さい頃から、時々遊んだりしたけど……こんなに一緒に過ごしたの初めてだな。

 話もたくさんした。

 学校じゃ、ふたりだけで話すことなんてないし……。

 いちいち、放置するの面倒だけど、勘違いしてるの見てるだけなら面白いな)


 カップから上がる白い湯気にピントを合わせ、彼は少しため息をついた。


(あっちに戻ったら……こうやって、ふたりで話すこともなくなーー!?)


 静まり返った部屋に、ユーリの息をつまらせた音が響き渡った。


「っ!」

(俺、何で残念がってるんだろう?)


 暖炉を見つめていたリエラは、不思議そうな顔で、


「どうしたの?」

(何だか、びっくりしてるみたいだけど……)


 彼女と目を合わせず、ユーリは慌ててカップに口をつけ、思いっきり誤魔化した。


「……あ、温まるな」

(別にいいだろう、こいつと話せなくても。

 話しても話さなくても、一緒だろう。

 いつも違うこと返してくるんだから)


 心の中でブツブツつぶやいている幼なじみに気づかず、リエラは屈託のない顔で、


「うん、そうだね。温まるね」


 再び暖炉へ顔を向け、彼女はぱちぱちと燃える炎を眺めた。


(おいしいなぁ。作り方教えてもらって、あっちの寒い日に作ってみようかな? そういえば……)


 カップをひざの上に置き、リエラはぼんやりする。


(今度、いつ戻るのかな?

 文化祭まで一週間だったから、もしかすると、年が明けてるかも知れないね。

 ……あぁ、そうか。

 もう少しで、三年生になっちゃうんだ)


 ひじ掛けにもたれ、ユーリもぼんやり暖炉を見つめていた。


(誠矢と春日は、どうして関係してるんだろうな?

 他にも関係してるやつがいるのか?

 そういえば……)


 そこで、彼の思考は急に別のところへ飛んだ。


(まだ、教えてもらってなかったな。

 今度のクリスマスまでに、マスターしないと大変なことになる。

 今度、帰ったらすぐに行かないとな。

 いつ、またこっちに戻ってくるかわからないんだから)


 ユーリーー祐はあっちの世界で、何かを誰かに学びたいようだ。カップの中に映る自分を、リエラは見つめながら、


(みんなとこうやって過ごすのも、少なくなるんだね。卒業したらーー)


【訪れる時】


 リエラの胸に、『卒業』という別れ以上の切なさが、不意に広がった。


(みんなと会えなくなる……。誰とも会えなくなる……。二度と、誰とも……)


 自分の中で膨らんでいく感情に、違和感を覚え、


(なんで、そんなふうに思うのかな?

 確かに、お姉ちゃんは櫻井さんと結婚して、一緒に住めなくなるけど……。

 卒業しても、みんなにずっと会えなくなるわけじゃないよね? ……変だね)


 首を傾げたリエラの視界の端に、銀髪少年が映り、


(卒業か……。

 祐はもう、やることが決まってるんだよね。

 バンド続けてくんだよね。

 自分は……まだやりたいこと決まってないからなぁ。

 だから、お父さんとお母さーー)


 両親のことを思い浮かべようとすると、何かが引っ掛かり、リエラは我に返った。


(そういえば……)


 揺れる炎が映る、グランドピアノへ振り返り、


「このピアノって、ユーリの?」

「違う」


 真っ直ぐ前を見つめたまま、彼は短く否定した。リエラは目を細め、ピアノに彫ってある字を、


「……ク……ララ?」


 それを背中で聞いたユーリは、少しため息をついた。


(そう……なんだ。この世界はーー)


「誰?」

(他にも、誰かいるのかな?)


 リエラに顔を向けられたユーリは、暖炉の火を見つめたまま、


「母親」

「あぁ、そうか」


 リエラはのんきに相づちを打ち、


(自分にも両親がいたもんね。だから、ユーリにいるのは当たり前だよね。あれ?)


 何かに気づいて、彼女は再びユーリに聞く。


「そういえば、こっちのユーリのお父さんとお母さんに会ったことないね」

(パーティでも見かけなかったし……。お城でも会ったことないね。どうしてだろう?)


 ユーリはきっぱりと、


「会えない」

(この世界は現実なんだ。だから、こういうことも起きるんだ)


「え……?」


 ひとつ嘆息し、ユーリはセレニティス姫の知らない事実を語り始めた。


「死んだらしい、俺たちが小さい頃に」

(人が死ぬこともあるんだ)


「もう、いない……ってこと?」


 小さく聞き返したリエラを、ユーリはちらっと見やり、


「そうでなきゃ、兄さんが国王なわけないだろう」

(国王が死んだり、退位しない限り、王子が国王になることはないんだ)


 リエラは珍しく神妙な顔つきで、


「あぁ……そうか」

(夢みたいな世界だと思ってたけど、夢じゃないんだ。

 みんな、この世界で生きてて……。

 だから、死ぬこともあるんだね。

 あっちの世界と変わらないんだ)


 冷めてしまったお茶を一口飲んだユーリの横顔に、リエラは、


「どうして、死んじゃったのかな?」


「事故だったらしい」

(どうして、そうなるんだろうな? 俺には理解出来ない)


 暖炉の炎が揺らめくユーリの瞳に、ふと淋しさが広がった。リエラはそれに気づき、言葉を失くした。


「…………」

(どうしたのかな? ユーリ、すごく淋しそうな目してるけど……)


 焦点の合わない瞳で、ユーリは話し続ける。


「雪崩に巻き込まれたんだ、ふたりとも」

(王族でさえ、そうなんだ。他の人たちは、もっと……)


 ある資料を思い出し、彼の悲しみは一層濃くなった。


(調べたんだ。

 ジュレイテでは、雪の事故が多発してて……たくさんの人が死んでるんだ。

 たくさんの人が家族を亡くしてる……)

 ちらついている雪を見て、リエラは、


「どこで?」

(雪たくさん降ってるから……そうだよね)


「輝水山」


 ユーリの答えに、リエラはびっくりした!


「えぇっっ!? き、輝水山って……。毎日、カータさんが行ってるところだよね? だ、大丈夫なのーー!!」


 そこで、セレニティス姫の脳裏に、あることが蘇った。


(……あぁ、そうか。

 だから、最初に来た時、従者さん、あまり輝水山の話したがらなかったんだね。

 カータさんが持ってきた機械の話した時も……そういうことだったんだ)


 前国王が亡くなった場所。そこへ、子供である王子たちを行かせるわけにはいかなかった。部下たちの必死の抵抗ーー思いやりからだった、情報を決して話さないことも。相変わらず視点の合わない瞳で、ユーリは、


「先代の国王も兄さんと同じで、発掘するのが大好きだったんだ。だから、あの山を調べてたらしいんだ。そして、何かを発見した。それを母親に見せたくて、ふたりで中に入ろうとした時、雪崩が起きたんだ。だから、兄さんが持ってきた機械は、前国王が使ってたものなんだ」


「そうだったんだ……」

(だから、聞けないんだね)


 リエラが相づちを打つと、ユーリは三週間前の出来事を思い浮かべた。


「兄さんが輝水山へ行くことを、あまりにもみんなが必死で止めるから聞いたんだ」

(すごい抵抗だった。ぼけてる兄さんも、さすがに驚いてた)


 それは必死に止めるだろう。危険な場所とわかっているところなのだから。ユーリは城の人たちから聞いた、今までのジュレイテの情勢を語った。


「俺がまだ三歳の時で、兄さんは九歳。結婚してないと、この国では王位は継げないらしいんだ。城のやつらは、まだふたりとも小さいから、結婚させるのはどうかって悩んだらしいんだ。それで、兄さんが大きくなって結婚して、王位が継げるようになるまで、城のみんなで協力して治めようということになったらしい」

(十四年間、国王不在……普通、有り得ない。おかしな国だな、ジュレイテって)


 あきれ顔をしたユーリに、リエラは笑顔で、


「みんな、仲良いんだね。協力してたんだね、すごいね」


 ユーリは盛大にため息をついて、


「不思議なくらい、平和」

(これも、この世界の七不思議のひとつかもな)


「えっ?」


 きょとんとしたリエラへ、ユーリは初めて顔を向けた。


「だって、そうだろう? 普通、国王がいなくなれば、権力の座を奪い合って内乱が起きる。それか、その間に他の国に侵略されて……どの道、俺たち兄弟は殺される」


 やけに現実離れした、最後の言葉に、セレニティス姫は口をパクパクさせただけだった。


「え、えぇ……!!」

(こ、殺される!? な、何で!?)


 ユーリは優しい瞳で彼女を見つめ、しみじみと、


「世の中、お前やこの国の人たちのような人間ばっかりだったら、生きやすいのにな」

(誰も悪意を持ってなかったら、悲しいことは起こらないだろうな。

 みんなが相手のことをちゃんと考えてたら……起こらない)


 残っていたお茶を一気に飲み干し、


「だから、出来るんだ。兄さんが発掘して、俺が国王の仕事をすることが」

(平和だからなんだ。普通は、権力争いが起きて、大変なことになる)


 開いていた口をぱちっと閉じ、リエラは、


「国王の仕事……? あれ、国王って、カータさんじゃなかったっけ? 交代したの?」


 ユーリはきっぱりと断言。


「あの人に出来るわけないだろう」

(誰が見ても、明らかだ。ジュレイテ、あっという間に崩壊するだろう)


 珍しく彼の言っていることを理解し、リエラは妙に納得。


「あぁ、確かにそうだね」

(地質学のことになると、お姉ちゃんのことも忘れちゃうもんね。王様はちょっと無理そうだよね)


 ユーリは珍しく嬉しそうな顔をして、


(お前、よくわかってる)


 そうして、安心感という感情を手に入れた彼は、ぼんやり考えごとを始める。


(この国が豊かになれば、誰かが雪の事故に巻き込まれて死ぬことも少なくなるんだ。

 掘削くっさく機やライト……。

 あれだけの技術が、十四年前から存在してる。

 それなのに……。

 どうして、それを世の中に広めないんだ?

 俺だったら、絶対、他の国に広める。みんなのために。

 だから、俺がすべきことは……)


 政治戦略を考え始めたユーリは、目標を明確にする。


(国境をなくすこと。

 いらないと思うんだ。

 国境がなければ、新しい技術がたくさんの人に簡単に広まって。

 この世界に住むみんなが、安全で豊かな暮らしが出来る。

 そのために、必要なら……)


 ユーリの瞳が珍しく少しずつ色づいてゆく。


(他国を侵略することもある。

 俺が国王の座についたらーーそうだな……?)


 何か大きなこと、とんでもないことをしでかしそうだが、不思議と生き生きし始めた銀髪少年に、隣にいたリエラは、


「ユーリはそれでいいの?」

(国王の仕事好きなの? 何だか、嬉しそうだけど……)


【月と雪】


「何が?」


 セレニティス姫の声で我に返ったユーリは、体の異変を感じた。


(ん……おかしい……? 何だか……)


 なぜか、勝手にまぶたが閉じ始め、リエラは目をこすりながら、


(どうしたんだろう……?)


 それでも、問いかけられた質問に彼女は応えようとし、


「……国王の……仕事することになって……」


「……あぁ……俺はいいんだ……」

(意識が遠のいて……)


 ユーリが途切れ途切れに言うと、ふたりはどちらともなく、大きなあくびをし、同じ感覚にたどり着いた。


(ーーものすごく眠い……)


 まるで、誰かに魔法をかけられたようだった。まどろんだ瞳で、ユーリはリエラに、


「お前……そろそろ部屋に戻れ……」

(俺、眠いから動きたくない。お前、出てけよ)


「う……うん、そうだね……」

(ここで寝たら、布団がないから風邪引いちゃーー)



 誰の陰謀か、翌朝、とんでもない大事件に発展するのであった。

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