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【三章完結】オノマトペ魔法師と堅物廷臣法官長の王宮事件録~わたしの魔法は、国家機密⁉~  作者: いとう縁凛
第二章 貴族令嬢誘拐事件

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閑話休題② アンネの移動方法

閑話休題、ということで。

文字数は少し少なめです。


 廷臣法官として働くようになって初めての騒動が解決した。

 そこで浮き彫りになったのは、急ぎたい時に急げない事。わたしの即時移動は、レオンハルトさんの魔法で成り立っている。

 そんなんじゃ、レオンハルトさんと肩を並べる相棒にはなれない。


 てな事で、休暇の今日はわたしの移動方法について考えてみる。

 レオンハルトさんから、職務中に魔法の効果を物に付与するのはどうかという案をもらった。その時から考えていたけど、付与するのは羽根。

 レオンハルトさんに羽根の準備をお願いしたら、色々な種類の羽根を用意してもらえた。数が多いなと思ったけど、星渡人には国から予算が出るんだって。

 初耳だ。


 で、レオンハルトさんが用意してくれた羽根なんだけど……。


「あれだね。羽根には二百種類あるってやつだ」


 冗談はさておき、本当にたくさんの羽根が机の上に置かれている。

 鳥の羽根、蝶の羽根(手作り)、羽ペン用の羽根、装飾された羽根、コウモリみたいな羽根。他にもあって大小様々なラインナップだ。

 手作りのやつが目に入った。

 手にとって見てみると、繊細な造りをしている。これなら普段は髪につけても可愛いと思う。でも、可愛すぎて乱雑に扱えない。移動を急ぐ時は緊急だと思うから、その一瞬の隙が不利に働くかもしれないよね。


 検討した結果。

 前世での、募金した後にもらえるぐらいの大きさの薄ピンクの羽根に決めた。残りの羽根は何かに使えるかもしれないから、鏡台の引き出しの中へ入れておく。

 そこには、ルリアーナ姫からもらった保湿クリームもある。鏡台の引き出しは、思い出ボックスになりそう。


「いかん。ニマニマしてた」


 黒髪黒目で、出身の村では寂しい生活をしていた。物理的にも、精神的にも。

 成人の儀を期に生活は一変したけど、充実している。この先をもっと充実させるためには、仕事は大事。

 そして、瞬間移動ができるわけじゃないから、移動手段は絶対に必要。


 薄ピンクの羽根を手に取る。小振りで、髪飾りとして使っても申し分ない。

 これに移動魔法を付与する。そうだな、起動方法はファンタジーっぽくしたいかも。

 とにもかくにも、ひとまずどんなオノマトペを使うかだよね。


「『だーっと』は、早く走れそうだけど止まるのが難しそう。『パッパカ』は……馬かな」


 移動を表すオノマトペって、意外とある。「ドドドド」は砂煙を上げて走っている感じだし、「ザザー」って音を使ったら水の上も走れそう。


「……」


 移動魔法を使う場面を想定する。

 街中や王宮内がほとんどかな。それなら、走る度に砂煙を出すのは迷惑だよね。「ドドドド」は、地響きもすごそうだし。

「ザザー」の波の音は、癒やしの効果はあると思う。でも、水の上を走るなんてそうそうないよね。水の上を走らないのにそのオノマトペは、何か違う気がする。


「よし、これに決めた!」


 使うオノマトペを考え、薄ピンクの羽根を両手で挟む。


「シュタッとタタッと全力前進。疲れ知らずの韋駄天に!」


 これで、羽根に移動魔法を付与できた。普段はこれを髪留めとして使うから、その効果もつけておく。

 そして。

 ファンタジー的移動魔法の展開方法!

 これは、ずっと考えてた! 両手で挟むように付与をしたのも、その起動のため。

 イメージは、手の平から体内を通って魔力が足まで行く感じ! 靴に羽根が浮かび上がったら尚良いよね!


「早速実験!」


 部屋の中で走ってみようと思ったけど、想像以上のスピードになっちゃったら困る。

 だから薄ピンクの羽根を頭につけて、外を走ってみようと部屋を出た。


「あ、レオンハルトさん! おはようございます」

「朝から元気だな。……それは?」

「たくさんの羽根をありがとうございました。この羽根に決めました」

「……そうか。これから試しに行くのか? それなら廷臣法官の体力作りのための場所へ案内しよう」

「ありがとうございます……?」


 心なしか、レオンハルトさんの元気がないような気がする。疲れているのかな。

 少し、レオンハルトさんの顔に陰りがあったような気がする。でも、些細すぎてわたしの見間違いだったかもしれない。


 レオンハルトさんに連れられて、天秤宮の近くにある運動場みたいな所へ着いた。ただ走るための空間、いくつか置かれた的がある。あの的は、魔法の精密さを測るものかな?


「兄上の研究成果により、寒ければ温かく、熱ければ涼しくなるように設定されている。防御膜も張られている状態だ。よっぽど強い力でなければ、外部へ被害が出る事はない」

「ありがとうございます」


 レオンハルトさんは、王太子様の事となると饒舌になるな。いや、説明の範囲内かな?

 思わず口元が緩んでしまったけど、レオンハルトさんが運動場を離れてどこかへ行ってしまった。今日は休日だし、そんな日まで一緒にいれないよね。


 レオンハルトさんが近くにいる事が当たり前になっていて、ちょっとでも離れると寂しいと思ってしまう。

 そんなわたしの元へ、コナー先輩がやってきた。


「アンネちゃん。どうしたの?」

「先輩! おはようございます」

「おはよう。可愛いね、その髪飾り」

「ありがとうございます。これはですね、普通の髪飾りじゃないんですよ」

「そうなんだ?」


 首を傾げている先輩にも見てもらおうと、羽根飾りを両手で挟む。すると想像した通り、手から足へ魔力が流れていく感覚があった。

 足下を確認すると、踵の所に羽根が見える。手の平には、羽根のマークが浮かんでた。


「わたし独自の移動方法です! とくとご覧あれ!」


 運動場内を走り回る。元々運動が得意な訳じゃないけど、軽快に走れていると思う。

 拳を握って走っていたけど、ちょっと興味本位で指を揃えてみた。


「おぉっ!?」

「いや、早くね?」

「さすが、星渡人ってところか」


 そうしたら、何と速度がアップした。自然と腕を振る動きも速くなっていく。何周も何周も、あっという間に駆けられる。

 運動場には、先輩以外にも何人も同僚がいた。不思議と速度が上がっていても耳は冴えていて、どよめく声も聞こえる。

 そんな声を聞きながら、止まる時はどうしようかと思った。

 拳を握り直して速度を落とし、爪先を上げるようにして急ブレーキをかける。うん、これで止まれるね。


「アンネちゃん、すごいね」

「ありがとうございます。今朝、作りました。先輩が褒めてくれるって事は、これでわたしも移動には困りませんね」


 両手を合わせると、浮かんでいた羽根が実体化する。それを羽根飾りとして髪につけた。

 移動魔法を付与し、使用もできて万々歳。これでレオンハルトさんに迷惑をかけないぞ。






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