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成人の罪  作者: AT
13/15

ー重罪ー世子の罪

 これは成人のテスト中、世子に起こった出来事だ。彼女のお題はネイルを買ってくる事だ。普段なら簡単だがこの町にそんな物を売ってあるとは思えない。だが合格できない事を鎖巫子が作ってるとは考えられない。世子は何故だか自分でもわからないが、彼女を信じている。


「あるならスーパーかデパートだけど、大きな店が見当たらない……どうしよう」


 焦る世子は周りを見回しながら走る。だが大きなスーパーやデパートなんて見えず、民家ばかりだ。人に聞けばいい話だが、残念ながら小さな子供達しか見当たらない。

 走っていると見えたのは公園だった。なぜか見覚えのある公園に足を止めた世子。そこには小学生ぐらいの子供達がいる。普通なら遊んでいると言えるだろうが、明らかに彼等は違う。二人の女の子が一人の女の子を捕まえている。もう一人、強そうな女の子が捕まった女の子のランドセルを奪って、ひっくり返して中身を出している。散らかってる教科書やノートを強そうな女の子が踏みつけている。捕まえている女の子と強そうな女の子は笑っている。世子は今まで何度も見てきた。いじめだ。

 止めるべきか世子は悩んだ。関わってる暇はない。そもそも大人が止めたところで変わるはずがない。きっとあの子達はいじめを続ける。今までと同じ、もしくは悪化させてしまう。公園から離れようとした。だが足は子供達の方へ向かっていく。


「……や、やめなさい!」


 女の子達は笑うのを止めて世子を睨みつけた。


「姉さんだれ?」


「誰じゃない。止めなさいと言ってるの」


「フフ、私達はこの子と遊んでるだけです〜。ね〜?」


 いじめられてる女の子は、下を向いたまま何も言わない。すると強そうな女の子がその子の髪を掴んで顔を上げさせた。


「返事してよ……ねえ」


「止めなさいと言ってるのがわからないの!?」


「ウザいよあんた。こっちは楽しんでるんだから」


「あなただけ楽しんで何になるの!? 後ろの子も、その子を離して!」


「……でも」


 捕まえている女の子達はお互い目を合わせた。どうやら彼女達は


「離すなよ! さっさと消えろよおばさん!」


「それで助かると思ってるの!? 無理矢理やらされてる。いじめられるのが怖いからこうしてる。でもそれは、いじめてる悪人と同じだよ!」


 世子に怯える女の子達。だが世子も自分で言った言葉に恐怖を感じた。昔の自分も同じことだ。


「う……ごめん、帰る!」


「あ! ちょっと待ってよ!!」


 捕まえていた女の子達は逃げ出した。いじめていた女の子も後を追っていき、捕まっていた女の子は解放された。女の子は何も言わず、動こうとしない。世子は踏まれて汚れてしまった教科書やノートを拾い、泥や砂を落とした。残念ながら綺麗には取れないが、ランドセルに入れてあげた。


「……はい」


 世子は大丈夫とは言わない。わかっているからだ。この子が大丈夫な訳がない。身体が傷だらけよりも辛い、心に傷があるはずだ。


「どうして……助けたの?」


 女の子が初めて喋った。世子は少し驚いたが、顔色を変えず答えた。


「昔…あなたと似た人を見ていた。私は……止めもせず、私に被害が来ないように見ていた」


「昔止めれなかったくせに、今更助けるの?」


 女の子の弱く吐くその言葉は、世子には刃物が心臓に刺された感じだ。思わず息が詰まる。


「……たしかに今更だけど、私には今になってやっと止められる様になったの」


「………」


 女の子は何も言わなかった。怒ってるのか理解してくれたのか世子にはわからなかった。すると女の子はランドセルに入っていた筆箱を取り出した。その中から出てきたのは三色のネイルだった。


「ママから貰った宝物。一個あげる」


「え? でも……」


「助けてくれた……お礼……ありがとう」


 ここで貰わないのはいけない。世子は三色の内、一つを貰った。女の子はネイルをランドセルに戻して、世子に手を振って走っていった。


「目的…達成でいいのかな?」


 ネイルを手に入れたからこれでいいのだろうか自分では判断しきれない。世子はとにかく戻ることにした。ダメだったらまた動くしかない。ここで考えるより動いた方がいい。戻っていると治代がいるのが見えた。何してるか世子にはわからなかったが、気にせず中に入った。

 息を切らしながらきた世子の所に、鎖巫子が近づいてきた。


「おかえり。早かったが、ちゃんと手に入れたのかい?」


 世子はネイルを鎖巫子に手渡すと、鎖巫子はネイルをじっと見つめた。


「紙には買ってこいと書いてあったぞ。貰ったものを持ってくるとは…」


「や、やっぱり……ダメ?」


 世子の顔は真っ青になった。それを見た鎖巫子は思わず笑ってしまった


「ハハハハ!! まあいいさ。お前は子供を助けたんだ。問題ないだろう。終わるまで休んでおけ」


 世子はホッとして歩いていった。鎖巫子は自分の人差し指の爪にネイルを塗った。一つだけ、彼女はそれだけを塗るとジッと見つめていた。


「青か……いい色だ」

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