拾伍
昂輔と急いで教室に向かった。
先に教室に入った昂輔に続いて俺も入ろうとした時、胸元に小さな衝撃があった。少し視線を下げると、紫に近い赤色の髪の毛に顔の半分程隠れている女子生徒がいた。
「あ、あの、ごめんなさぃ・・・・・・」
そう小さく言い残し女子生徒は俺の脇を通り過ぎて行った。その後ろ姿をぼんやりと見つめていると、
「神代、さっさと席に着け」
いつの間に来たのか教科担任に注意された。俺は思わず顔を顰めてしまった。
「何だその顔は。はぁ・・・とても優秀なお前の弟と出来損ないのお前、恥ずかしくはないのか?」
また始まった。この教師お得意の比較。まぁ朔良と比較されることなんてこの教師に限らないけどさ・・・。
しかも嫌味の内容なんていつもその時関係のない事ばかり。本当意味が分からない。
「・・・・・・」
「だんまりか。お前の口はお飾りか」
「先生」
教師の小言とは違う、少しだけ冷気を含んだかのような声が聞こえた。その声に、俺に標的を決めていた教師の視線が変わる。
「それは、態々”今”言わなくてはいけないことですか?」
「何だ高松、あいつを庇うのか」
「庇うも何も、紅葉は僕の親友です。何が悪いんですか?」
「俺はお前の将来を心配してやってるんだぞ」
「お言葉ですが先生。僕は教師という子供に教養を教える職に就いていながらも、貴方のような生徒の上辺しか見ず、一つでもその生徒を理解しようともしない人に、将来を心配される事なんて何一つありません」
「なっ!?」
生徒にそんな事を言われた教師は憤慨とした声を上げた。そんな教師を見もせず昂輔は自分の席から立ち上がり、俺のいるドア付近までやってきた。
「紅葉、行こう」
教師に向けていた声色とは違う、いつもの声色・・・・・・。
「こ、昂輔・・・」
腕を引かれてやって来たのは、俺が数分前までいた屋上だった。
「こうすけ・・・?」
俺に背を向けたままの昂輔。掴まれている腕からは昂輔の震えが伝わってくる。
「ごめん、紅葉」
「お前にしては珍しいな、急にどうした?」
「いや、つい数分前に僕が紅葉に言ったばかりなのに、僕の所為で授業を抜けさせてしまって」
俺の方を振り向きながら本当に申し訳なさ気に言われてしまった。
「いいって!いや、良くはないんだけど・・・・・・でも!!!昂輔は俺のためにしてくれたんでしょ?」
「まぁ・・・半分は、ね」
「ちなみに、もう半分は?」
「・・・あんな事言った手前、普通に授業なんて受けれるわけ無いでしょ」
ちょっと呆れたような、何とも言えない顔をして昂輔は言った。まぁ確かに教師にあんな事・・・俺は言えないけど、まぁ言ったとしたら気まずいだろうな・・・・・・。俺の場合、教師に何を言われても反論しないから授業中にバンバン当てられるという教師の嫌がらせがあるだけだ。
「でも、結局この時間の授業サボった事になるから、後で教えてね先~生~!」
「・・・はぁ。僕はいつまで君の先生をしなくちゃいけないんだろうね」
苦笑混じりではあったけど、申し訳なさそうだった昂輔の表情が変わった・・・・・・よかった。
「紅葉、今日の分はまた埋め合わせするから」
「いいよ、いいよ。元はといえば俺が原因なんだから」
「違うよ、紅葉。一番の原因はあの教師だ」
そう断言しながら言った昂輔と共に俺たちは笑いあった。




