拾肆
そんな想いも鳴り響く鐘の音で無情にも消え去った。
一つ溜め息をついた後、横にしていた上体を起こす。するとまた一つ音が鳴った。今度は俺のポケットからだ。
つい先ほど来たメールを確認し、重たい腰と軽い鞄を持ち上げて、俺は快適な屋上を後にした。
俺が学校に来た時よりも賑やかな廊下。急ぐ事もなく教室に向かえば、途中で優志と出会った。
「よう紅葉、1限には間に合ったのかぁ」
「わかってるくせに聞くなよな~。さっきまで屋上にいたよ」
「ずりぃな、紅葉がいるって知ってたら俺も一緒にサボったのに・・・・・・」
優志が話してる途中、俺は優志の肩ごしから、つまり優志の背後から近寄る笑顔の昂輔を発見する。俺は優志にそれを教えるために無言で後ろを指差した。
だがそれよりも先に優志の肩に手が置かれた。
あ?、と手の置かれている方を向くと優志の口から小さく悲鳴が漏れた。
「優ちゃん」
「は、はい・・・なんでございましょうか」
「さっきサボるって単語が聞こえたんだけど、気のせいだよね」
昂輔、めちゃくちゃ笑顔・・・・・・。
このあと説教コース確定かな、逃げようかな。
「き、きき気のせいじゃ、ないでしょうか。おお、俺はそそそそんなことしねぇし、なぁ紅葉!!」
その場を退避しようとした瞬間、優志が話を振ってきたためビクッとなってしまった。
「やぁ紅葉くん。日向ぼっこは気持ちよかったかい」
全身から冷や汗が出るのを感じた。錆びて動きの悪いロボットが動く時のようなギギギっとした音が聞こえそうな鈍い動きで振り返った。
ニコニコと、でも背後には燃え盛る炎が見える怖い笑み。正直になろう。
「ごめんなさい!!」
ここが廊下で、他の生徒がいるのも忘れ頭を勢い良く下げながら謝った。
すると頭上から小さな溜め息と同時に頭に手を置かれた。少しだけ頭を起こすと昂輔は優しい笑みを浮かべていた。
「分かればよろしい。もうサボっちゃダメだよ?紅葉はただでさえ勉強について行けてないんだから」
それを言われてしまっては押し黙るしかない。いつも昂輔には迷惑かけてる。昨日頑張ろうって決めたばかりなのに・・・・・・。
「ごめん、昂輔。俺、頑張るから!」
「うん。僕たちもちゃんと協力するから」
昂輔の撫で方が子供を褒めるような撫で方に変わった。照れくさいけど、俺はこの撫で方が一番好きだ。
「おーい、お二人さん。そろそろ次の授業始まるぜ」
優志の一言で俺たちは急いで教室に戻った。




