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【Web版】死ぬ運命にある悪役令嬢の兄に転生したので、妹を育てて未来を変えたいと思います~世界最強はオレだけど、世界最カワは妹に違いない~  作者: 泉里侑希
第三部 After story

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Chapter30-ep 白の献身(2)

 地球への帰還後は、想定していたよりもすんなり(・・・・)問題が片づいていった。


 まず、カナミラ王国について。


 といっても、オレたちが直接何かしたわけではない。事前の取り決め通り、主導するのはバルヴァロ公爵で、フォラナーダはあくまで補佐だった。


 逸魔(いつま)を一掃したことで依頼も完了したため、カナミラ王国からもすぐに撤退した。派遣した諜報員以外は、定期報告を待つだけである。


 バルヴァロ公爵の気合の入りようを見た感じ、おそらく心配はいらないだろう。


 カナミラ王国といえば、もう一つ。第三王女ノリーンに関してだ。


 憧れのニナに『迷惑』だと切って捨てられた彼女。引きこもるだろうと予想していたんだが、それは大外れした。ノリーン王女は真逆の道を進んだんだ。


 つまり、出奔したのである。


 これには、オレたちフォラナーダのみならず、カナミラ王国の面々も大困惑していた。あまりにも突拍子もない行動だったためだ。


 無論、だいたいの予想はできる。二度とニナに迷惑をかけないよう武者修行の旅に出た。そんなところだと思う。


 逸魔(いつま)に特攻を仕掛けようとしたことから分かる通り、思慮が欠け、行動力がずば抜けた人物だったみたいだし、十二分にあり得る話だ。


 時期も悪かった。騎士団長が辞任して団内が混乱している最中だったから、警備に穴があったようだった。


 一応、捜索を手伝おうかと提案はしたが、丁重に断られた。遠回しに『これ以上の借りは作りたくない』と言われたよ。


 今さらな気もするけど、内政改革に関してはカナミラ王やバルヴァロ公爵、最初に陥落した財務部しか知らない。仕方のない反応だった。


 強引に手伝うほど、ノリーン王女と仲が良かったわけでもない。オレたちは大人しく引き下がった。もちろん、見かけることがあれば確保くらいしてあげるけども。


 次に、築島(つきしま)の変質した山について。


 こちらは、オレたちが聖王国の帰還後、制圧に繰り出した。


 担当したのは当然オレ。


 (くだん)の山は、ヒトの手が入っていなかったので、掘削を並行して行う必要がある。しかし、生命力と魔力が溢れている関係で、魔法での作業はオレを除いて行えない。


 ゆえに、オレが直接乗り出したわけだ。


 一方で、少数ながら山外に出ていた逸魔(いつま)の討伐は、部下たちに任せた。


 オレの解析を元に開発した技術のお陰で、火力が足りなかった部下たちでも逸魔(いつま)を倒せるようになったんだ。さすがに、高レベルの騎士でないと対応は難しいが。


 山中からは、カナミラ王国と同じ希少金属が多く採れた。溜池も地下深くに存在し、未知の金属が採掘できた。


 ただ、緋緋色金(ひひいろかね)ではない。そこにあったのは、ダイヤモンドと琥珀の性質を兼ね備えた、摩訶不思議な代物だった。


 不言剛琥珀(ふごんごうこはく)と、一応命名している。


 その一番の特徴は、異様に高い耐久力。十倍の【身体強化】で、ようやくヒビを入れられるほどの硬さだ。


 これが見つかったのが聖王国内で、本当に良かったと思う。これほどまでに硬いもの、フォラナーダ以外で採れるわけがない。


 ちなみに、今回の騒動で発見した未知の金属は三種。


 緋緋色金(ひひいろかね)不言剛琥珀(ふごんごうこはく)、さらに蒼浄天瑠璃(そうじょうてんるり)だ。


 蒼浄天瑠璃(そうじょうてんるり)は、蒼穹の如き澄み渡った色を有する瑠璃である。


 調査した結果、効果付与の効率が高いと判明していた。魔道具などの部品に使用するのが、今のところのベストだろう。


 聖王国内で採れるのは不言剛琥珀(ふごんごうこはく)のみだが、カナミラ王国との契約によって残り二種も少量ながら確保できる。


 今後は、それら金属の研究でも忙しくなりそうだ。どんな結果が出るか、実に楽しみである。








 以上の事後処理を滞りなく終えた某日。オレは神座(しんざ)に訪れていた。


 そう簡単に足を運べるのかと驚くかもしれないが、オレは特殊な事例である。


 一度訪れて座標を把握しており、【超越(イローダー)】という反則技を会得していたがゆえに、こうして再訪が叶ったんだ。


 まぁ、言うほど簡単でもなかったけど。


 枝から幹への移動は何らかの制限が掛かっているようで、前回の帰還時よりも膨大なエネルギーを消費した。このオレでさえ、即座に往復ができないほどの消耗である。


 そも、【超越(イローダー)】も使いこなせていないんだ。危機管理の面でも、あまり頻繁に訪れて良い場所ではないな。


 オレはそっと溜息を吐きつつ、周囲へ視線を巡らせる。藍色の宙に純白の立方体とA4サイズの透明な板が浮かぶ、どこか寒々とした光景が広がっていた。


 神座(しんざ)は今日も変わらず、か。変わられても困るが。


 立方体の一つに足を下ろしたオレは、腕を組んで待機する。


 “神”がいるだろう中枢には向かわない。そちらに用はないし、向かわない方が良いと感じているから。


 何せ、視線がしつこい。前回もそうだったけど、めちゃくちゃ見られている。嫌な気配はないので放っておくけど、直接相対するのはダメな気がした。


 若干の居心地の悪さを覚えつつも待つことしばらく。ようやく、待ち人が現れた。


「こんなところまで何の用だよ。今の俺、結構忙しいんだけど」


 呆れ交じりのセリフを漏らしながら目の前に降り立ったのは、白髪黒目の美人。現在、派遣で神の使徒を努めているアカツキだった。


 久しぶりの再会だが、これといって変わった様子はない。アカツキは相変わらずアカツキのようだった。


「そう邪険にするなよ。お前に少し用があっただけさ」


「用? こんな場所に足を運ぶほどの? ……面倒ごとじゃないだろうなぁ」


「ただの質問だよ」


 心底嫌そうな顔をする彼に、オレは苦笑を溢す。


 とはいえ、手短に済ませた方が良いのは確かか。冗談交じりのやり取りだが、アカツキが多忙なのは本当のようだし。残している仕事が気掛かりなのか、度々意識が別の方向に逸れている。


 だから、オレは端的に問うた。


「オレたちの世界の地球に、翻訳の白魔法を掛けたのは何者だ?」


 メタルヴァ星人との接触を経て、オレはとある事実に気がついた。


 オレやカロンたちの住んでいる星全体に、翻訳魔法およびそれ(・・)に違和感を覚えない認知操作の魔法が施されていること。


 でなければ、あり得ないんだ。意思疎通方法が根本的に異なるウリゥが、普通にオレと会話するなんて。 不自然な部分は他にもある。


 たとえば、リンデやエコル、サザンカといった他大陸出身の人物たち。


 かつての統一大陸が分裂したのは、今から一万年も前の話だ。それほどの年月が経っていれば、言語に変化が起こっていてもおかしくない。


 にもかかわらず、オレたちは何不自由なく意思疎通が取れていた。


 たとえば、この世界に日本語が採用されていること。


 転生直後は『元がゲームの世界だからなぁ』と流していたが、今はその理由では説明がつかないと理解している。


 この世界は数多の分岐世界の一つであり、決してゲームの中ではない。日本語が使われているなんて、ほぼあり得ないんだ。


 ――で、だ。そういった当然の疑問に、つい最近まで気づけなかったのが、後者の魔法である。


 翻訳魔法の影響下にあると認識できない、疑問にも思えない。そんな認知操作が、オレたちの住む星には働いているんだろう。


 たぶんウリゥも、自分の状態をまったく異常だと感じていなかったと思う。


 それは聖女セイラたち転生者や、友里恵(ゆりえ)たち転移者にも当てはまるか。


 オレと同じように、彼らは言語が多様だと知っている。だのに、それを全然不思議に感じていない。


 星上にいることごとくの言語と認識に介入する魔法。一種の洗脳魔法とも言えるそれは、あまりにも強大だ。


 かつて見えた、精神魔法を極めた平行世界のオレでも、そこまでの術は発動し得ない。『発動時点で星上にいる人類』と限定するならともかく、効果を永続させることは難しかった。


 だからこそ、知っておきたかった。ここまで大規模な精神魔法を扱う強者を。その先駆者を目標とするために。


 ……いや、違うな。この際、ハッキリ言ってしまおう。


 オレは怖いんだ。世界最強を自負するオレにさえ、認識させずに魔法を掛けてしまえる人物が。


 久方振りに出会った自分よりも強いかもしれない存在に、恐怖を覚えているんだ。その何者かは、おそらく敵ではないだろうと察していても。


 どんなに強くなっても、オレの性根は小市民なんだろうな。


 そう心のうちで自嘲しつつ、アカツキの反応を窺う。

 

次回の投稿は5月1日12:00頃の予定です。

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― 新着の感想 ―
多分ゼクスにあつぅい視線を向けてるその人(人じゃないけど)じゃね?w
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