Chapter30-ep 白の献身(1)
先日、コミックガルドおよびガルドプラスにて、コミカライズの最新話が更新されました。
無料範囲では、ついにChapter1ラスボスのフェイベルンが登場。
先読みはその決着となります。
ぜひご覧ください!
オレがメタルヴァ星人を説得したことで、ひとまず、直近の危機は去った。
カナミラ王国の内政問題は残っているものの、そちらはバルヴァロ公爵に頑張ってもらう他ない。
今のところは、バルヴァロ公爵の作戦が上手くいくよう、適宜部下を貸していく感じで良いだろう。
カナミラ王の許可は得ているものの、深入りしすぎると、それはそれで厄介な事態に陥るかもしれないからね。
それに、築島の山も変質している。聖王国も、カナミラ王国と同様の対処を行わなくてはいけなかった。採掘される希少金属の調査や研究などを考慮すると、確実に忙しくなるだろう。
さらに、出発前にも触れたが、ミネルヴァの出産も控えている。決して、余裕のある状況とは言えなかった。
そんなわけで、急いで地球に戻る理由が山ほどあるオレだったが、メタルヴァ星人を説得した後、すぐには地球へ戻らなかった。この星でやらなくてはいけないことが、二つほど残っていたためだ。
一つ目は、メタルヴァ星に到着後に発見した、例の塔の調査。
結論から言ってしまうと、ダンジョンだった。それも、生命力を司る奴だ。
魔力のダンジョンがあるんだから、どこかに各力を司るそれが存在するとは考えていた。だが、実際に目の当たりにすると、驚きが勝った。本当に出会えるとは、と。
初の異星で引き当てたのも、驚愕を助長した一因だな。どんな確率だよ。
さくっと踏破してみたところ、生命力のダンジョンの造りは、魔力のダンジョンと大差なかった。
無論、前者は上に、後者は地下に伸びているという大きな違いはあるが、内部構造自体は変わらない。迷宮があり、最後にボスが待ち構え、最奥に世界の生命力事情を記録する端末がある。そんな感じだった。
端末も軽く調べたけど、興味を惹く情報はなかった。強いて言うなら、標破者の数に関する考察が当たっていたことと、この世界には知的生命体が結構いると判明したことくらいか?
まぁ、興味深い情報があったらあったで多忙に拍車がかかるので、この結果で良かったが。元々、興味本位だったのもあるし。
二つ目は、割と重要な実験だ。それは『聖剣を地球外に持ち出せるか』というもの。
聖剣は、“星の力”を源力にしている兵器だ。地球とは深い縁で繋がっており、地球上で行使することを前提とされている。
だから、メタルヴァ星人相手に持ち出さなかった。どんな反応を示すか判然としないものを、大事な局面では使えない。
ウリゥ戦では使う余地があったかもしれないが、そちらはオレの学習の糧にすることを優先した。
現在、聖剣は【位相隠し】に仕舞ってある。この実験のために、あらかじめカレトヴルッフに声を掛けておいたんだ。ものすごく渋られたけどね。
もちろん、メタルヴァ星での【位相隠し】の使用も、今ではできるようになっている。
ダンジョン踏破をするほど、メタルヴァ星に留まっていたんだ。そこに、ウリゥの【領域】の経験も加わってくる。ある程度の慣れが生まれるのも当たり前だった。
ただ、微に入り細を穿つ魔力操作が求められる上、失敗すると、取り出そうとしたものが粉微塵になってしまう。戦闘中の使用はまだ難があった。
ダンジョン最奥という外敵の心配がほとんどない場所なら、あまり関係のないデメリットだが。
というわけで、カレトヴルッフを取り出す。
いくつか予想は立てているが、はたして……。
『うへぇ。他の星ってこんな感じなの? めちゃくちゃダルい』
開口一番に、カレトヴルッフはそう溢した。心なしか、黄金の長剣の輝きが陰って見える。
「なるほど、そういう感じか」
彼女の反応を受け、オレは得心した。
おそらく、“星の力”の供給が絶たれたせいで、エネルギー不足に近い状態に陥っているんだろう。予想の範疇であり、その中では一番軽い症状だった。
最悪、カレトヴルッフが壊れる可能性もあったからね。その場合、壊れ始めた段階で【刻外】に避難させる予定だったんだ。
オレはカレトヴルッフに問う。
「調子はどうだ?」
『最悪、絶不調。私をこんな目に遭わせてるんだから、ちゃんと報酬は払いなさいよ』
「行動範囲の拡大だよな。大丈夫、約束は守るよ。そんなことより、その不調を具体的に知りたい。致命的な感じはするか?」
『そんなことって……。まぁ、いいわ。不調の詳細だっけ? 致命的ってほどじゃないわ。喩えるなら、暗闇の中に放り出された感じかしら。もしくは、何もないところに浮いてる感じ? 一言で表すなら、心許ない。あと、この状態も長く続くとマズイわね』
「どれくらい持ちそうだ?」
『うーん、判断が難しいわね。こうして喋るだけなら、一週間くらいは大丈夫そう』
思ったよりは長い。ただ、戦闘に使ったら、一気に猶予時間が減りそうな予感がする。やはり、いざという時まで使用は控えた方が良さそうだ。
『ねぇ』
オレが思案に暮れていると、カレトヴルッフが怪訝そうな声音で尋ねてきた。
「どうした?」
『どうして、こんな実験するのよ』
「どうしてもこうしても、必要だからさ」
『本当に必要なわけ? 聖剣の星外での利用なんて試さなくても、あんたなら独力でどんな敵でも倒せちゃうんじゃない? 今回のメタルヴァ星人? も、私の手を借りずに撃退したんだし』
考えなしに見えて、意外と鋭いんだよな、カレトヴルッフは。だからこそ、頼もしくあり、油断できなくもある。
今回は別段隠す内容でもなかったため、オレは軽く肩を竦めて答えた。
「正直言うと、この実験は前段階なんだ」
『前段階?』
「オレはね、『オレたち魔法大陸の人類は、この世界から離れても平気なのか?』って疑問を解消したいんだよ」
魔法大陸の人類は、世界と契約したことで魔力生成のシステムを得ている。契約自体は先祖が結んだものだが、それは今代まで……いや、今後生まれてくるだろう子孫にも引き継がれる。
つまり、オレたちは、聖剣と地球の関係に類似しているわけだ。ある意味で、世界に縛られている存在だった。
本来なら、それによって困ることはないんだが、最近になって事情が変わった。
「将来的に友里恵たちを受け入れると覚悟した以上、オレもあっちの世界に渡る必要が出てきた。だから、『そんなことしても大丈夫なのか』、『ダメならどう対策すべきなのか』を考えなくちゃいけなかったんだ」
『親への挨拶って奴?』
「それもある」
『それも?』
「受け入れて終わりじゃないってことさ。友里恵たちがこっちで生活するにしても、二度と元の世界に戻れないなんてことはしたくない。そうなると、異世界同士を頻繁に繋げることになる」
『交流が生まれるってことかしら?』
「どんな結果になるかは、フタを開けてみないと分からないけどね。それに、友里恵たちの身に起きた事象が、オレたちに降りかからないとも限らない」
世界同士の衝突によって、ヒトが別世界へ放り出される。あまりにも怖すぎる現象だ。
友里恵たちの場合は人為的な要素も少なくなかったようだが、アカツキたちの口振りからして、完全な自然現象として発生することもあり得る模様。対策を講じておいて損はないだろう。
一通り説明を終えると、カレトヴルッフは『ほぇぇ』と感心とも呆れとも取れる声を漏らした。
『色々考えてるのね。考えすぎの気もするけど』
「オレは慎重派なんだよ」
『事情は理解したわ。だから、その眼で不躾にジロジロ私を見てたと』
彼女の言うように、オレは先程から魔眼でカレトヴルッフを観察していた。視線に攻撃力が乗るなら、彼女が穴だらけになっているほど念入りに。
お陰で、様々な分析結果が手に入っていた。
カレトヴルッフは嘆息交じりに言う。
『まぁ、慎重を期したい気持ちも分かるし、許してあげましょう』
「助かるよ」
上から目線なのは謎だが、レディに対する態度としては不適当なのは確かなので、素直に受け入れる。
しばらくして、オレは十分な情報を手に入れた。
これをもう少し詰めれば、【異世界回廊】の完成とその後の対策は達成できるだろう。
ようやくメタルヴァ星での仕事は終わった。
地球に帰って一休み……と行かないのが残念だけど、一段落であるのは確か。オレはそっと肩の力を抜くのだった。
次回の投稿は4月28日12:00頃の予定です。




