初詣の転校生
新しい年になった。
昨日降った雪はまだ少し残っている。
白い息を吐きながら、
俺と蓮、佐内さんは立花家へ向かっていた。
「寒ぃ。」
蓮が肩をすくめる。
「冬だからな。」
「当たり前のこと言うな。」
そんな他愛もない会話。
いつしか、こうして晴を迎えに行くことが当たり前になっていた。
ふと横を見る。
蓮が佐内さんを見ていた。
晴れ着姿の佐内さん。
淡い桃色。
冬の日差しに柔らかく映える。
俺は蓮の脇を肘で小突いた。
「なんだよ。」
「目がハートになってるぞ。」
「ば、そんなんじゃねーよ。」
「ただ。」
「ただ?」
少し照れくさそうに笑う。
「晴れ着っていいなって。」
「佐内さんに言えよ。」
蓮は佐内さんを見る。
佐内さんは気付いたように目を逸らした。
少しだけ耳が赤い。
寒さのせいじゃないと思う。
「おはようございます。」
インターホン越し。
凛さんの明るい声。
「はーい。」
扉が開く。
その瞬間、言葉を失った。
浅葱色にのせられた上品な花柄の晴れ着。
髪には小さな飾り。
ほんの少しだけ明るいリップ。
冬の光を受けて綺麗だった。
きれいだ。
気付けば口にしていた。
凛さんが笑う。
「ありがとう。」
晴も小さく微笑んだ。
凛さんが空を見上げる。
「今日は青空、透き通っとーね。」
晴も空を見上げる。
「うん。昨日よりも雲がなくて。」
「波長もよく届いてる。」
いつもの返事。
凛さんはすぐに笑顔へ戻る。
「さ、早く行かないと混むよ。」
「そうだぞ。」
「見惚れてる暇なんてねーぞ。」
蓮が俺を肘で小突く。
さっきの仕返しだ。
「うるさい。」
笑いながら歩き出す。
神社まではすぐだった。
参道は賑わっていた。
昨日の雪がまだ残っている。
歩くたび、
雪がきゅっと音を立てた。
夏祭り以来か。
あの時も晴と一緒に歩いた。
景色は違うけれど。
賽銭を入れる。
鈴を鳴らす。
目を閉じる。
こういう時、
晴は何を願うんだろう。
薄目で隣を見る。
晴は静かに手を合わせていた。
俺も目を閉じる。
今年も、
みんなが笑っていますように。
晴が、ゆっくりでいいから。
晴らしく笑えますように。
甘酒。
おみくじ。
笑い声。
見上げると、冬の空は高かった。
神社の朱。
雪の白。
空の淡縹色。
遠くの雪雲はわずかに檸檬色。
冬の空気の中で、
ゆっくり混ざり合っていた。
今年。
一番最初に、俺の心へ乗った色。
「淡縹。」
少し前を歩く晴が小さく呟いた。
風が吹く。
声がさらわれる。
「ところどころ桜色。」
「檸檬も少し。」
「え?」
聞き返す。
何か、色の名前が聞こえた。
そんな気がした。
晴が振り返る。
懐かしい笑顔だった。
「今日はね。」
少しだけ照れたように笑う。
「綺麗やねって言ったん。」
真っ白な雪。
真っ白なキャンバス。
晴が、その上に。
もう一度、
自分で色を置いた。
そんな気がした。




