表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
角だけ魔族の太郎さん〜人材育成から始める魔王軍マネジメント〜  作者: 山田太郎
第一章 「柔角族現る」
9/74

1-8 朝会

 広い会議室に入ると、

既に魔族たちの声が飛び交っていた。


 石造りの長机。

 壁一面に貼られた古い地図。

 中央には魔石が浮かび、淡い光で情報らしき文字が揺れている。


 しかし会議は、始まる前から混乱していた。





「北側の魔獣群、活動が活発になっているぞ!」

「活発というより、行動圏が広がっている。人類側に誘導された可能性は?」

「いや、あれは仲間だ。黒狼族の伝令が来ていただろう?」

「その伝令が本物かどうかが分からん!」


(なるほど……

 魔族と魔獣は味方でも、“完全に統率されているわけではない”ってことか)


 太郎は騒ぎを聞きながら静かに理解していった。


 魔獣は魔族と協力関係だが、

群れごとの“習性”や“主張”があるらしい。


 それが戦況に大きく影響するため、

朝会での共有が混乱の原因になっていた。



 



「皆さん、焦らず順番に発言しましょう。

 魔獣の行動分析は報告の精度が重要です」


 ミラが落ち着いた声で促すが、

騒ぎはすぐには収まらない。


「順番など悠長に待てるか!」

「北の魔獣群は人類側の砦に近づきすぎている!」

「いや、あれはただの巡回で……!」


(同じ味方でも“情報の出どころ”が曖昧なら混乱するよな……)


 太郎は現場改善の経験から、

何が問題か薄々理解し始めていた。






「おい! 全員黙れ!」


 警備隊長ラグナの一喝で空気が一瞬で固まった。


「まず昨日の報告を確認する!

 魔獣の行動記録、伝令の経路、人類側の動き。

 整理してから話せ!」


「だが、その報告が……」


「無いなら無いで、どこから抜けたのか確認だ!」


 ラグナの言葉は正しい。

 だが、言い方はやはり荒い。


(仕組みが追いついてないから、こうなるんだ……

 誰も悪気があるわけじゃないのに)






(魔獣の行動が“味方”なのか“人類への牽制”なのか……

 情報が整理されてないから、議論が全部ぶつかってる)


 太郎は静かに思考する。


 魔族も魔獣も同盟者。

 だからこそ、連絡手段や記録方法が整っていないと混乱を生む。


(現世でも、外部との連携って一番ミスが出るところだったよな……

 部署間連携、引き継ぎ……似てる)







「太郎さん。

 魔獣や魔物は私たちの仲間ですが、

 各群れごとに指揮体系が違うのです。

 伝令の伝わり方にも癖があります」


「癖……ですか」


「はい。黒狼族は走りながら情報を届けるので、

 内容が端折られることがありますし、

 大角鹿の群れは急ぎでなければ翌日しか動きません」


(そりゃ情報揺れるよ……)






「北側──黒狼族が巡回延長を希望している」

「黒狼族の隊長は、人類側の砦を牽制したいらしい」

「それなら南側の大角鹿の休息場をどうする」

「東は魔物の狩り場が狭まっている」

「どこもかしこも手が足りん!」


(味方の調整でここまで混乱してるんだな……

 戦争より内部調整のほうが大変じゃないか?)






「太郎さん」

ミラが横で小声で言う。


「柔角族は、こういった多種族間の調整を得意とすると言われています。

 いずれ、太郎さんにも……」


(いやいやいや……そんな伝統スキル俺知らないから……)


 太郎は表情を変えずに頷いて見せた。


 その瞬間、角がこてんと揺れた。


「今の揺れ……落ち着いた反応ですね」

「やはり柔角族だ」


(頼むから揺れないでくれ……!)






「北に振るべきだ!」

「いや南だ!」

「魔獣たちの動きが読めん!」

「なら読めるように報告しろ!」


 議論は収まらない。


(全体的に、みんな疲れてる……

 感情で動いてしまうのも無理ないよな)


 太郎は深く息を吸い、

落ち着いてその混乱を見続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ