3-1 第二小隊動き出す
翌朝。
第二小隊の詰所に入った太郎は、
昨日と同じはずの景色をどこか違って感じた。
魔石灯の青白い光。
紙束の山。
使い終わった工具が散らばる机。
変わっていない。
でも、自分がそれを問題として認識するようになったのだと気づいた。
少し先で、ウルダが大きな箱と格闘していた。
「うぅ……またぐちゃぐちゃだ……。
使った人が戻してくれればいいのに……」
ウルダの小さな嘆きが、今日の太郎には胸にひっかかる。
太郎は近づき、そっと声をかけた。
「ウルダさん、その箱……道具の種類ごとに分けてるんですか?」
「あ、太郎さん。
いちおう決まってるんですけど……
忙しくなると、誰も戻す場所を覚えてなくて……。」
太郎は箱の中を覗く。
大小の工具が混ざり合い、形も用途もバラバラだ。
(これじゃ、毎回探すだけで時間を食うよな……)
太郎は箱を机に置き、軽く笑った。
「ちょっと、並べてみてもいいですか?」
「えっ? 太郎さんが?
もちろんです……助かります!」
太郎は、種類ごとに工具を分けて並べ始めた。
ただ置くだけ。
ただ形を揃えるだけ。
仕組みというほどのものではない。
ほんの、ひと手間。
だが、それだけで箱は驚くほど分かりやすくなった。
ウルダは目を丸くする。
「す……すごい……!
見た目が全然違います……!」
「ちょっと整えるだけなんですよ。
ほんとにひと手間です。
最初の位置が決まってると、戻しやすくなるんです。」
ウルダは感心して頷いた。
「確かに……!
今までどうしようって思いながら放り込んでましたけど……
これなら迷わないです!」
そのやり取りを、少し離れた席でミラが静かに見ていた。
(こういうちょっとした工夫……
私たちには、気づけなかったのよね)
太郎は箱を整え終え、軽く手を払う。
特別な能力でもない。
異世界ならではの魔法でもない。
ただの、朝のひと仕事。
けれど、そのささやかな変化は、
第二小隊の空気にじんわりと広がっていった。




