決戦
ビュッ
ヘカトンケイルの漆黒の剛腕が弓塚の体を掠める。それだけで弓塚は態勢を崩されよろめいた。ティターンズのNo.2の名に恥じないその相手は、弓塚に追撃をかけるため接近してくる。
(今だ!)
魔力を込めた六花の弾丸が、ヘカトンケイルの右肩に突き刺さる。意識していなかった方向からの衝撃に、その巨体が大きく揺らぐ。しかしただそれだけだった。
六花の魔力弾は波の怪人であれば一撃で倒せるものだったが、ヘカトンケイルにはまともにダメージを与えられなかった。
「ハアッ」
よろめいたヘカトンケイルに対し、弓塚は連続攻撃を仕掛ける。
ズガガガガッ
弓塚の攻撃にヘカトンケイルは大きく吹き飛ばされる。
ガクッ
そのダメージは浅くはなく、ヘカトンケイルはその場に膝をついた。
(いける!)
六花の攻撃はともかく弓塚の攻撃は効いている。このままいけば倒せる。そう思った瞬間、ヘカトンケイルの魔力が膨れ上がった。
今までは様子見だったのだろう。
スピードを上げたヘカトンケイルは、そのまま弓塚に襲いかかる。弓塚も肉体強化を最大限にして応戦する。両者のスピードは極端に上がり、六花に狙撃できる様な動きではなくなっていた。
「ぐっ」
ヘカトンケイルの攻撃がガード越しとはいえ、弓塚を捉え始める。両者のスピード、パワーは同程度とはいえ防御力は段違いだ。弓塚の攻撃は何度もクリーンヒットしていたが、そこまでのダメージを与えている様には見えない。それに対し弓塚は、今だ直撃を許してはいないがガード越しからでも着実なダメージを蓄積していた。このままではジリ貧になる。
「六花。聞こえる?」
戦闘中の弓塚から通信が入る。
「聞こえますわ。ごめんなさい。動きが早すぎて援護できません」
下手をすれば弾は弓塚に当たってしまう。
「わかってる。いまから全力で動きを止めるから、そこを狙撃して」
「そんなこと事ができるものか!」
通信はヘカトンケイルにも聞かれている。聞かれている以上、作戦は成功するはずがない。弓塚らしくないミスだった。
「本気で行きますわよ」
「わかった! 最大の攻撃で仕留めてね! ハアアアッ」
通信機の必要がないくらい弓塚は大声で叫ぶ。その瞬間、弓塚のスピードが極端に上がった。
「なにっ」
そのスピードは六花から見てもほぼ消えて見える。凄まじいスピードで360℃から攻撃を仕掛ける。おそらく間近で攻撃されているヘカトンケイルには、視認することはおろか、何が何だか分からないだろう。その攻撃を前にヘカトンケイルは守りを固めるしかなく、その場に足を止めてガードを固めていた。
「いきますわよ!」
弓塚の作り出したこの隙に最大の攻撃を打ち込むため、六花は自身の魔力を集中し練り上げる。その瞬間、六花の右手は巨大なレーザーライフルに変わっていた。そこに全ての魔力を注ぎ込む。
(魔力は全て注ぎ込みましたわ。これで倒せなければ……私には無理だ!)
この銃の全力使用は母の千花から禁止されていたが、仕方がない。ここで負けたらば終わりだ。
照準をヘカトンケイルに合わせる。弓塚の攻撃に晒されていて、まだこちらには気づいていない。
「くらいなさい!! フォトンレーザーッ!!」
六花の右手から閃光がほとばしる。銃身を遥かに超えた巨大なレーザービームが、ヘカトンケイルを包み込んだ。




