緊急事態
病室を出て自室に戻ろうと歩き始めたところで、突然、英雄機関内に緊急事態をを知らせるサイレンが鳴り響いた。
「これは……一体?」
六花が呟くが、弓塚も自体を把握していないようで、返事がない。ただ六花がサイタマ支部に来て以来、初めての事なのは間違いなかった。
「Cランク以上のヒーローはブリーフィングルームに集まってください。繰り返します……」
「とりあえず行ってみましょう。話がわからないとどうしようもないわ」
六花は弓塚の意見に同意し頷いた。弓塚の表情からもただ事でない事が伺えた。
ブリーフィングルームに着くと、基地に待機していたヒーローは概ね集まっていた。
「おお。弓塚君……と六花君も待っていたよ。空いている席に座ってくたまえ」
部屋に入るなり司令代理に着席を促される。司令代理は、常時不在にしている司令の指示などを伝える、いわゆる伝言係の様な役割を担っていた。
司令代理は弓塚の到着を待っていたようで、着席するなり話を始めた。
「実は先ほどサイタマで同時多発テロが発生した。現在わかっているだけでも、行政機関、主な警察署は占拠されてしまった。犯行組織はティターンズの残党とみられます。複数のティターンズ元幹部の様子が目撃されている」
その言葉にあたりは騒然となる。「被害は、ティターンズの目的は」と意見が飛び交う。その中で弓塚は冷静だった。
「敵の目的は恐らくクロノスの奪還。それと英雄機関への報復ではないかと推測されます」
その言葉に逆に辺りは水を打った様に静かになる。
「その根拠は何ですの?」
六花も弓塚と同じ考えだったが、敢えて弓塚に質問をした。
「根拠って程でも無いですけど……敵の武闘派の幹部はまだ目撃されていません。恐らく英雄機関への侵攻のために温存しているはずです」
弓塚が言うなり緊急の伝令が入る。
「伝令です! ティターンズの怪人が英雄機関への信仰を開始しました。怪人の数はおおよそ50。幹部の姿も確認されています。怪人ヘカトンケイルを先頭にこちらに向かってきています!」
「なに!」
ヘカトンケイルは組織内でクロノスに次ぐ強さを持つ怪人だ。ランクはSランク。恐らく今の英雄機関でまともに戦えるのは弓塚しかいない。その考えは部屋にいる全員が思っている様で、一斉に弓塚の方をみる。
「司令代理。ヘカトンケイルは私と六花の2人で当たらせてください。私達が責任を持って倒します。他の怪人には英雄機関の総力を持って迎撃するしかありません。ここで英雄機関が敗北すれば、それは秩序の崩壊を意味しています」
弓塚の言う通り、英雄機関の敗北はあってはならない。その威信は地に堕ち、各地で怪人達は一斉に英雄機関を襲うだろう。六花は寄り一層気を引き締める。
「わかった。私の方で司令に報告しておく。各自迎撃プログラムCであたってくれ。追加の作戦があれば随時指示する」
「了解!」
全員が返事をすると勢い良く部屋を出て行く。六花もまたそれに続いた。




