お見舞い
六花がサイタマ支部に来てから2ヶ月が経過した。
各地で暴れているティターンズの残党も少なくなり、3ヶ月ぶりに、英雄機関にも久々に穏やかな日々がやってきていた。
しかしティターンズの幹部は未だ1人も捕まらず、なんとなく英雄機関全体に疲労感が漂いつつあった。
「桜花ちゃん…………」
弓塚と六花は桜花の見舞いに、英雄機関の病室を訪れていた。
桜花が倒れてから3ヶ月が経過していたが、未だその状態は回復していなかった。
医師の話では身体は完全に治っているという事だった。しかし今も桜花は、天井を見上げたままだ。精神の苦痛が限界を超えてしまい、生きる気力が無くなっているのではないかと、担当医師は言っていた。
「そんなに九条紅太郎という方の事が大事だったんですの?」
六花が話しかけるが返事はない。
最愛の人を亡くした悲しみというのは、六花には経験がないからわからない。しかし、未だに倒れている桜花をみていると、その絶望が少なからず伝わってくる気がした。
「私……色々噂を聞きましたのよ。在学中のあなた、ヒーローとしてのあなた。そして紅太郎さんと一緒にいる時のあなた……」
特に紅太郎と桜花の話は、かなりの頻度で話題にあがっていた。2人は仲が良くていつでも一緒にいた事。桜花は器量も良く明るい性格だったため、男女問わず人気があった事。紅太郎は頭が良く、桜花の次に強い生徒だった事。
そして……紅太郎が死んだ後の、桜花の怒りが凄まじかった事。
紅太郎が死ぬ前の桜花は、少なくともSランクの怪人を倒せる程の強さはなかったらしい。紅太郎の仇を取る。自分はどうなっても構わない。その気持ちが潜在能力を覚醒させる決め手になったのだろう。
「また来ますわ……」
「またね」
弓塚と六花は部屋を出て行く。もちろん桜花からの返事はなかった。




