終わり良ければ
「い、いやっ。お前の正体は紅太郎で、変身するとその姿になるんじゃ……えっ?」
対峙する怪人ブラックガードは鼻を鳴らしめんどくさそうに答える。
「フン!! 貴様があんな爆竹の雑魚に負けそうになっているのが気に食わなくてな。気まぐれに助けてやっただけだ。そこの小僧は戦いの邪魔だからな。先に退避させていただけのことだ」
こいつは怪人ブラックガードではない。紅太郎は間違いなくそう断言できる。だかそこにいる偽者は姿形だけではなく。声色、存在感、また魔力パターンに至るまで寸分の狂いもなく怪人ブラックガードと同じだった。
このレベルの変装ができるやつとなると……そう考える紅太郎の頭に一人の総帥の姿が浮かぶ。まさに完全に相手をコピーする能力。姿かたちだけでなく、その存在全てをコピーする能力をあいつは持っている。
必然的に隣にいるスノーホワイトは、雪乃本人ということになる。
「っていうことは紅太郎は……怪人じゃない?」
「当たり前だ。そのような弱小ヒーローと一緒にするんじゃない。不愉快だ」
桜花がきょろきょろと紅太郎とブラックとの間に、視線を泳がせている。
「貴様との決着をつけようと思っていたが興ざめだ。ヒーローを辞めてさっさと隠居をするがいい」
いうなり偽ブラックガードは屋上から飛び降り、その巨体を宙に舞わせる。続くようにスノーホワイトも飛び立つが、その瞬間紅太郎の方を見た気がした。
つまりこれはあれだな。任務続行ってことだ。
ヒーロー神前桜花と恋愛関係になる。
つい桜花の方を見ると、桜花もこちらを見ていたので目が合ってしまう。
桜花がこちらに歩いてくる。紅太郎の目の前に来ると、ペタペタと掌で紅太郎の顔を触ってきた。
「本当に、本当に紅太郎は怪人ブラックじゃないんだね?」
「あ、ああ。俺はお前の幼馴染の九条紅だろーー」
話の途中で桜花に抱きしめられる。
「よかった。本当に良かったぁ」
抱きしめられているため顔が見えないが、その声は涙ぐんでいた。
「紅太郎が怪人じゃなくてほんとによかった」
ピシッ
紅太郎の表情が目に見えて固まるが、幸いにも桜花からこちらの顔は見えなかった。
「だからさっきからいってるだろ。俺は見ての通り人間でヒーローなんだ。昔と何も変わってないさ」
「そうか。そうだな。私の勘違いだった。許してくれ紅太郎」
紅太郎はああとうなずく。目の前で変身したんだ。そう思うのが普通だろう。
急に桜花がガバッと体を離し手を握り締める。
「これからは大変だぞ。紅太郎は初めて見たかもしれないけど、今の2人ががナインライブズの怪人、ブラックガードとスノーホワイト。2人ともかなり強力な怪人で、私一人では勝てそうもなんだ」
紅太郎の手を握り、桜花は鼻息も荒く目を輝かせている。
「今から作戦会議をしよう。次の標的はナインライブズだ!!」
「おいこらやめろ。手をあんまり強く引くなっ。お前の走るスピードは速すぎるんだよっておい人の話をきけ」
桜花に引きずられるようにして紅太郎は走り出す。
しかし自分を殲滅する作戦を立てるのってゆーのはどうなんだよ?
そんなことを考え紅太郎は手を引きずられる。
しかし紅太郎に後悔の念はなかった。
昔、桜花の幼馴染の九条紅太郎は確かに死んだ。そして今度はライバルの怪人として生まれ変わった。そして今。九条紅太郎としての記憶は戻ったいま、紅太郎の中には二つの記憶が混在している。
ライバルとしての自分と、幼馴染としての自分。どちらも紅太郎自身なのだから。
これからも桜花に寄り添って生きていければいい。その立場が敵であっても、味方であっても構わなかった。
「桜花……」
「なに。紅太郎?」
桜花が足を止め振り返る。
「これからもすーっとよろしくな!!」
桜花は一瞬きょとんとしたが、すぐに満面の笑顔で答える。
「うん。これからもずーっと一緒だ。紅太郎!!」
桜花を守れる強さを手に入れ、寄り添っていく。
幼いころの紅太郎の夢は確かにかなった。
再度、桜花に手を引かれ、紅太郎は歩き始めた。




