桜花と紅太郎
怪人ブラックガードの拳が怪人の体を打ち抜く。
ドゴォォン
破砕音とともにビルの壁を貫通し、地面を転がる。
地面を二、三回バウンドし、その勢いは止まった。
かなり強力な攻撃であったため一撃で絶命した可能性もある。
しかし。今は桜花にとってはそんなことはどうでもよかった。
「……紅太郎」
桜花は小さな声でつぶやく。まるでその声を発してはならないかのように。
「……」
それに対し目の前の怪人は、何の反応も見せなかった。
「紅太郎なんだろう? 怪人ブラックガードの正体は紅太郎だったんだろう!!」
ブラックガードは何も答えない。
この反応はおかしい。もしも違うのであれば違うと笑えばいい。私の知っている怪人ブラックガードならばそういうはずだ。「紅太郎? そんな軟弱な貴様の仲間などではない」ぐらいはいいそうだ。
しかしそんな桜花の意に反して、怪人ブラックガードは一言も発さず微動だにしない。そのことが桜花の問いを肯定していた。
「私は知らないうちに紅太郎を傷つけていたのだな……」
桜花が涙声になりながら話す。
「紅太郎を守ること。それに反することを私はしてきたのだな」
「私は……わたしは……」
桜花がが近寄ろうと一歩踏み出すと、ブラックは明らかに動揺を見せた。
「っ」
短くうめき声をあげると、近くの建物へ跳躍する。そのまま音もなく姿を消した。
その姿はいつも戦闘を繰り広げていた怪人ブラックガードのではなかった。




