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ブラックガード

 バキィーン


 金属音と破砕音がこだまする。


 音の発生源には、ブリューナクを発動した桜花の右手と体の間に、漆黒の盾が出現していた。


「こ、これは!!」


 桜花が驚愕の声をあげる。おそらくはその盾が見知ったものだったからだろう。


 それは桜花にとって間違いなく必殺の攻撃だった。

 紅太郎は全力を持ってそれを阻止した。


 紅太郎は六年前の約束を守った。最愛の幼馴染を守りきった。


 だけどこれで終わりじゃない。


 紅太郎の体からさらに漆黒の瘴気が撒き散らされる。


「何だ。おいてめえ何やってやがる」


「うぉぉぉぉぉおっ」


 紅太郎の叫び声と共に、漆黒の火柱が体を包む。


 その場には凄まじい魔力量を誇る何かが生まれていた。




 ボマー



「な、なんだこれは」


 ボマーは驚愕のあまり立ちすくんでいた。

 神埼桜花のブリューナクが胸を貫いたかと思った瞬間、漆黒の盾が出現し、その攻撃を止めてしまった。


 その一瞬後、今度は人質のがガキがそこらじゅうに魔力を撒き散らして、火柱を上げている。

 鎖はバラバラに飛び散り、ボマーの仕掛けた爆弾はその火柱と一緒に消し飛ばされてしまった。


 いやそれが問題なんじゃない。


 この強大な魔力、周波パターンはこの都市で神埼桜花と毎度激戦を繰り広げている怪人。ナインライブズの……


 ボマーはまだ思考の途中だったが、その火柱の中から一歩歩み出る影がある。


 予想通り怪人ブラックガードがそこにいた。


 ズシャッ


 ブラックガードは殺意の波動を撒き散らしながらこちらに歩いてくる。


「くっくそっ」


 なんでガキがブラックガードになってるのかはわからないが、こいつは俺に敵意を持っている。

 そう思ったボマーは右腕の銃に弾を込め、発射した。


 チュイン。


 軽い音がしただけで弾は弾き返されていた。ダメージどころか、シールドすら貫通していない。


「う、嘘だろ!!」


 立て続けに弾丸を放つが、全てシールドに阻まれダメージを与えていない。

 

「いますぐ六花の爆弾と鎖をはずせ」


 こいつはなぜかヒーローの小娘を助けようとしている。


 ならば……


 瞬時に逃走方法を考え実行に移した。


 ドンッ


 鈍い音と共に六花の近くにあった爆弾が全て爆発する。


「りっ六花」


 桜花がよろよろと六花に駆け寄る。その足取りは不確かなもので、ボマーへの注意も逸らされていた。


 殺った。間違いない。あの桜花やブラックガードは無理だが、その威力は、並みのヒーローならば跡形も残らないはずだ。


 ボマーは六花の生死も確認せずに逃げ始める。


 逃げるならば絶好のチャンスだからだ。ボマーが生き残るには、相手を混乱させるしかない。

 しかしその願望はかなわなかった。


 爆風の中から急に出てきた黒い大きな手に、ボマーの左手はがっしり掴まれていた。


「ぐっ」


 掴まれた腕がみしみし音を上げる。


「このクズが」


 その巨体と共に砂埃の中から姿を現す。

 黒い仮面のためブラックガードの表情をうかがうことはできないが、その声色は怒りに染まっていた。


「六花ぁ」


 桜花が六花を抱きしめる。


「ば…ばかな」


 なぜだ。


 あの爆弾はあの小娘が耐えられるようなものではない。いやそもそも爆発の威力が低すぎる。

 よく見ると六花の周りに、いくつかのシールドが発生していた。


「まさか……」

「貴様の考えることはわかっているんだよ。俺も悪の組織の怪人だからな……」


 ガシッ


 両腕をブラックガードに掴まれる。そして万力のような力で締め付けられた。


「はっ、離せっ!!」


 とらえられた腕を支点にし全力で蹴りを放つ。


 ガン


 無機質な金属音が響くだけで、身じろぎひとつしない。

 当たり前だ。

 特殊弾を打ち込んでも傷一つ追わないのだ。ボマーの力では蹴り飛ばしてもダメージを与えられるわけがない。


 だがしかし、


「これならどうだっ」


 直後怪人の腕から光があふれ、大爆発を引き起こす。


「グァアアッ」


 ボマーは爆風の衝撃で二十メートルほど吹き飛ばされていた。体に裂傷ややけどで重傷と言ってもいいほどのけがを負っているが、爆破に指向性を持たせておいたためダメージは最小限で済んでいた。


 しかしまともに爆発を浴びたブラックガードはただでは済まないはずだ。倒せないまでも時間くらい稼げるはず。


 そう思い立ち上がろうとした直後。


 ガシッ


 再度漆黒の腕が目の前に出現し、今度は頭を掴まれ力任せに持ち上げられる。


「そうだった。お前にはこの手があったよな。必殺トカゲの尻尾切り。さすがに食らうの二回目だからな」


「ぐ……そんな馬鹿な……」


 ダメージを受けたどころか、かすり傷一つない。


「あ、頭も切り離して爆発するんかな? その場合は本体がどっちだか迷うけど」


「ふっふざっ」


 ふざけるな。そんなことができるわけない。


「まあ今度は吹き飛ばせないようにしたから、大丈夫だけどな」


 周囲を見渡すと怪人の全身を無数のシールドが囲んでいた。逃げるどころか、身じろぎするのも難しくなっていた。


「ま、待て。俺たちは同じ怪人同士だろ? なんでヒーローの味方をするんだっ」


 大体こいつはいつここに現れた?まさかあのガキが怪人ブラックガードの正体なのか?

 しかし目の前の怪人はかぶりを振って答えた。


「そうだな。俺は怪人でお前も怪人。そしてあいつらは正義の味方のヒーローだったな」


「そ、そうだろっ!! あんたが神前と戦っているのは知ってる。だからっ」


「だがお前の味方になった覚えはない」


 ブラックの腕に力が籠められる。掴まれている頭が、みミシミシと音を上げた。


「う、あ」


 ボマーは苦痛に顔を歪める。


「俺が目指しているのは史上最強の怪人。それだけだ。貴様らとなれあうつもりはない」


 ボマーの顔が絶望に染まる。


「じゃあな」


 空中に展開されたシールドが解かれ、頭からも手をはなされる。自由落下するボマーにその拳を避ける手段はない。仕方なく残された全魔力を防御に全て充てる。

 大きく振りかぶって放たれた拳は、ボマーの体に叩きつけられる。その漆黒の拳は、展開されたシールドもろともその体を破壊した。

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