昔の夢4
本日何話か更新します
雷鳴の轟くような爆砕音を伴う大爆発。
紅太郎は至近距離で起こった爆発に、なすすべもなく吹き飛ばされていた。
……体が熱い
紅太郎は必死に体を起こして桜花を探そうとするが、体はまるでいうことを聞かなかった。
仕方がないので首を回しあたりを確認しようとするが、周りがぼんやりとしか見えない。
誰かが何かを言っているようだったが、激しい爆発音で耳がおかしくなったのか、はっきりと聞こえなかった。
誰かが紅太郎のことを抱き起す。よく見えないけれどこの感じはきっと桜花だろうか?
「……お……ぐ……」
紅太郎は何かをしゃべろうとするが、血を吐き出すだけで言葉にならなかった。
自分はかなりの重傷なのだろうか?そう思い自分の体を確かめてみる。
……下半身がなかった。
全身の感覚がほとんどない。
生きているのが奇跡的な状況だ。
吹き飛んでいる位置からして、内臓器官も大分やられているだろう。
どうやっても助からない。
それが紅太郎の出した結論だった。
しかし自分はこのまま死ぬわけにはいかない。
桜花の無事を確かめない事には。
そう思い紅太郎は最後の気力を振り絞り、体に力を入れる。
紅太郎の、その最後の命の瞬きともいえる魔力が体内に充填される。本来ならば即死である状況ではあるが、その力はわずか数分ばかりの延命を可能にした。
急速に視界がクリアになる。
そこには負傷した自分を抱き起こしている桜花がいた。
その顔は煤汚れて涙と鼻水でくしゃくしゃになっていたが、どうやら五体満足で無事のようだ。せいぜい軽傷といったところだろう。
「お、桜花……」
「紅太郎!! 大丈夫? もうすぐ応援が来る。すぐに治療するから。紅太郎は大丈夫だからっ!!」
桜花は泣きながら止血を試みるが、それを止めるように紅太郎は手を添える。
紅太郎は自分の命が消えていくのを実感していた。
「……無事でよかった」
桜花は治療する手を止め、紅太郎の声に耳を傾ける。
「やっぱり桜花はすごいヒーローになるよ。あの爆発を食らっても大丈夫なんだから。僕なんかとは全然違う……」
桜花は大きくかぶりをふる。紅太郎も嫌味で言っているわけではない。あの爆発はAランクのヒーローでさえ、死に至らしめる威力があった。その直撃を受けて軽傷で済んでいる桜花は、既にSランク並の強さを兼ね備えている。
「桜花、君はヒーローを続けなくちゃならない……その力を世界のみんなの幸せを守るために……」
泣きながら桜花はうなずく。その眼から大粒の涙が零れ落ち、紅太郎の顔に落ちる。
「僕が死ぬのは桜花のせいじゃない。僕の力が足りないから死ぬんだ……」
桜花は唇を噛みしめてこらえている。少しでも紅太郎の話を聞いておきたい。その思いから声を出すのを我慢しているように見えた。
「だから桜花は僕が死んだ後も……みんなを守ってほしい……」
「嫌だ!! 紅太郎は私を守ってくれるんでしょっ!! こんなところで死ぬのを私は許さないっ!! 絶対に許さないんだからッ!」
桜花が堰を切ったように泣きじゃくる。紅太郎は最後の気力を振り絞り、右手を挙げて桜花の頬にその手を当てる。
「ごめん……その約束は……守れないや…………」
紅太郎の体から急激に力が失われつつある。もう残された時間はあまり長くない。
「もし生まれ変われたら…………必ず……桜花を見つけて……もっと強くなって……君を守る盾になるから……だから……それまで――」
紅太郎の目から光が消える。
「嫌だっ!! 紅太郎ッ!! こうたろぉぉ――あぁぁぁぁぁぁぁっ」
桜花は紅太郎の亡骸を抱きしめ、泣き続けていた。




