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昔の夢2

「多分潜伏先はそこだよ」


 一時間後。取得した情報を整理した紅太郎は、地図を指差した。


「本当に? 機関の公表している予測潜伏ポイントとはずいぶん違うけど?」


 桜花の言うとおり、紅太郎が指差した場所は機関の予測した、いずれの候補にも当てはまらないエリアだった。


「うん。もちろん他にもいくつか怪しい場所があるんだけど、もう指名手配になって一週間でしょ? この怪人はこういうのに慣れてそうだし、多分ここだと思う」


 桜花は地図上に紅太郎が示した地点をまじまじとみつめる。

 そこは不況の煽りを受けて数年前に閉鎖した工場地帯だった。


 実際、紅太郎の予測は過去何度も当たったことがあるため、桜花は紅太郎の分析力を信じていた。正直考えるのが不得意な自分があれこれするより、紅太郎の言うとおり動いたほうがいい。


「わかった。そこにしましょう」


 直感でそう感じた桜花は、そのエリアを捜索することに決めた。



 

「まったく失礼しちゃうわよねー」


 紅太郎が指定したエリアへの移動中、桜花は今日何度目かの愚痴を漏らした


「仕方ないよ。今は事件が頻発していて戦力を避ける状態じゃないし。そもそもCランクになりたての十歳の子供の意見なんて誰も聞いてくれないよ」


 桜花は紅太郎が指定したエリアについて、作戦本部に通達した。


 しかし本部の回答は「子供の言うことにいちいち人員などさけない」の一点張りだった。


 それでもなお桜花が食い下がると、


「もしそこにいたとしてもあなた一人いれば事は足りるでしょう。最強のヒーローと名高い神前千花の娘なんだから」


 と訳のわからない嫌味まで言われた。



「大体何なの!! こないだの訓練で私にやられたからって目の敵にしちゃって!!」


 紅太郎は力なく「ははは」と苦笑いする。


 訓練とはいえ、現役のAランクのヒーローが十歳の子供にやられてしまったのだ


 相手が悪かったとはいえ、同情の意を禁じえない。


「大体私の紅た……わ、わたっ……私の意見をぞんざいに扱うなんてどうかしてるわ!!」


 桜花は2つの理由から顔を真っ赤にして怒っていた。


 桜花が自分のために怒ってくれている。

 そのことに温かい気持でいっぱいになるが、目的のエリアに近づいてきたため、紅太郎は気合いを入れ直した。


「もうすぐ探索エリアに入るよ。万が一のことがあるかもしれないから気を引き締めていこう」


 念のため桜花にも注意を促す。


「大丈夫!! いざとなったら私が紅太郎を守ってあげるから!! 後ろから付いてきてね」


 桜花は自信満々に歩を進める。

 いざとなっても対応できる自信があるのだろう。事実、前を歩く桜花には隙は全くなかった。


 しかしいくら桜花の方が紅太郎よりもはるかに強いとしても、女の子の後ろに隠れているのはかっこ悪い。


「わかったけど一応僕もヒーローなんだからね。Cランクとはいえ……」


「わかってるわよ。紅太郎が頼りになるってことくらい。でも今日の任務は必ず成功させたいの。怪我もしてほしくない。私なら多少の攻撃は大丈夫だから! 私は前衛、紅太郎は後衛ね。これは決定ねっ」


 相談する余地もなく、桜花は紅太郎に言い放つ。


「わ、わかったよ。でも桜花も気を付けてね」


 桜花は張り切りすぎると失敗が多い。そのことを知っている紅太郎は心配で仕方がなかった。


「任せなさい」


 胸をどんと叩いて答える。その自信満々な様子に紅太郎はますます不安を掻き立てられた。

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